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ももも。のおスイス暮らし

憧れのネルソン・レイクス2

あこがれのネルソン・レイクス2



ネルソンからネルソン・レイクス国立公園の拠点である
セント・アーナウドに行くまでは楽しかった。
宿に泊まっていた日本人3人と一緒だったから。
彼女らは今日一日だけ歩く予定で、車に同乗させてもらった。

拠点に着くと、ハットに泊まる私はDOCに行って、
自分の計画を登録しなければならなかった。
周りは本格的はトレッカー(NZではトランパー)ばかりで緊張した。
その日は風がとても強く、湖は荒れまくっていた。
今日の目的地のハットがとても高い所に、とても小さく見える。


湖沿いにしばらく歩き出すと、登りが始まった。
エイベル・タズマンでできたマメの痛みとバックパックが重く、
ほかの3人より、さっそく遅れをとった。

登れば登るほど、木がなくなり、景色はよいのだが、猛烈な風。
口が開いていられないほど。ただただ自分を信じるしかなかった。
あまりにも風が強く、ふらつくので、ちょっと待とうと座り込んだ。
それでも風は止まらず、リタイヤするべきか?と考えた。
ここに留まっていても仕方がない。
ハットにはとりあえず向かうことにした。


みんなに遅れること30分、ハットに着いた。
遅いランチを取る。
とりあえず明日のことはわからないが、風がない室内は安心する。
3人は下山をして、ネルソンに帰らなければいけなかったので、
ここでお別れをした。


私は今晩このハットで泊まる。かといっても外はすごい風。
少し外に出てみるが、ちょっと引き返して、戻った。
外のトイレに行くのも、大変だった。

しばらくして、女子高生のグループがやってきて、小さなハットを占拠。
本当にうるさく、でも外に行きたくても行けず、最悪な夜だった。



翌朝、サルのようだった女子高生達が出て行き、静寂が戻った。
まだ風が強く、今日は歩くべきか悩んでいた。
女子高生達が多すぎて全然気付かなかったのだが、他にもトランパーがいて、
一人が「そのうち風が治まるよ。」と教えてくれた。
彼女達の目的地も、私と同じ「アンジェラス・ハット」であった。

とりあえず、行けるとこまで行こう、ダメなら引き返してこよう。
そう思ってハットを後にした。


ここからの登りもきつかった。砂利道をひたすら登る。
風も本当にきつくて、前途多難、そう思った。
ゆっくりゆっくり登るしかない。


ひとつの峠にやってきた。ここにはシェルターがあって、
自分がどこにいるかを見ると、もう1/3以上来ていた。
行けるかも。そう思った。


ここからは尾根の西側に入り、そのおかげで風を諸に受けずにすんだ。
ルートはガレ場で難しくなる一方だったが、急な登りではないし、
風がないだけましであった。

知らないうちに、風が治まっていた。
尾根の上を歩くルートが増える。一歩滑り落ちたら、死ぬかもしれない。
ボスがそう言っていた場所だ。慎重に慎重に確実に歩く。


目的地はまだまだと思っていたとき、私の前に登りが待ち受けていて、
ジグザグ道が誘っていた。


そして、そこを登り終えると、私の眼下には、
あこがれ続けていた「レイク・アンジェラス」があったのだ。





lakeangelus



うわー。


思わずそう言った。



今晩泊まるハットも湖の横に見えた。

ハットに行くには、70度近い斜面を降りなければいけない。
もったいない。
私はバックパックを下ろし、この夢にまで見た景色を眺め続けた。




ハットはサンルームのようにポカポカだった。
目の前で見る湖もほんとーに澄んでいて美しかった。
朝、情報をくれたアメリカ人二人組みも到着していて、
明日の予定を聞くと、ネルソンに行くということだったので、
ライドをお願いした。

その晩は早く寝た。


早朝目が覚めた。
トイレに行くため、外に出ると、まだ風が出ていない水面の上に、
周りの山々が鏡のように映っていた。



出発準備を整え、ハットを発った。
まず待ち受けているのは、急斜面。四つん這いで登った。
そして登り終わると、また腰を下ろし、湖をしばし見下ろした。
もう二度と見れないかもしれない、でも行かなくちゃ。
そう思うと、何度も何度も後ろを振り返りながら、進んだ。
一生この景色を忘れないよう、目の奥に焼け付けながら。



帰りは行き来たルートを戻るだけだったので、余裕があった。
ある地点に着いた時、あーここで難しいルートはもうない。
そう思うと同時に、何かをやりきった自分に感動していた。

そこに座り込み、パノラマに近い景色を楽しんだ。
目の前に広がる国立公園の山々のグラデーション、
遠く向こうに見えるエイベル・タズマンの海を見ながら、
地球のすばらしさを感じていた。

そして、今までのNZ生活が走馬灯のように、浮かんできた。
楽しかったこと、うれしかったこと、英語でくやしい思いをしたこと…。



「やればできる。できないことはない。」そう自分に言った。


そう思いながら、涙が流れた。





ライドをお願いしていたアメリカ人二人組みとは駐車場で合流した。
セント・アーナウドで下山届けを提出し、ボスに電話をして言った。



「I made it! I made it!」



一番にボスに報告したかった。

彼が私に旅のすばらしさ・地球の美しさを教えてくれた人だったから。




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