『危険な童話』 著：阿刀田高
子供の頃、楽しく聞いていた童話が、
実はとても残酷なお話だと気づいたのは、
いつだろう。
おばあさんに化けた狼に食べられる、
赤ずきんちゃん。
そもそも、狼の出る森に、
幼い少女一人でお使いに行かせることが、
残酷この上ないかと。
幸せでのどかな風景が、一瞬で暗転する物語。
教訓も含まれているだろうが、
そういう得体の知れない恐怖を、
人は欲する生き物なのかも。
この短編集も、なにげない日常を装いながら、
最後の数行で、読む人を恐怖に陥れる。
怠け者で、家事一切しないくせに、見栄っ張りの妻。
夫は、見るに見かねてゴミ出しをするようになる。
しかし妻は、それに感謝するどころか、
「そんなみっともないこと止めて」と言われ、ついに爆発。
浴室に積み上げられた、たくさんのゴミ袋。
これを運び出すのは、妻ではなく、
自分の仕事だろうと思う、「女に向かない仕事」。
旅先で出会った、訳ありげな女性。
なぜか意気投合し、彼女は大きな壷、
自分は小さめの壷を土産に買って帰るが、数日後。
その女性の部屋から、壷に入った、
セメント漬けの死体が見つかったとのニュース。
ふと、最近不仲な自分の妻は小柄だったな、と思う、
「越前みやげ」。
ホラーのような、オカルトのような、
でも、ごく普通の生活の中で、ゾっとする瞬間、
それが一番恐ろしい…。
最後の数行で暗転するその快感？にゾクゾクした、
一冊でした。
ランキングも
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【参考】
◆その他、阿刀田高の著書は→ 
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