『庭の桜、隣の犬』　角田光代

2006.08.06

カテゴリ：本

『庭の桜、隣の犬』　著：角田光代

幸せな家族のシンボル、庭の桜と、
責任を負いたくないという象徴の、隣の犬。
らしい。

愛し合っていないわけでもなく、
信じあっていないわけでもないけれど、
微妙な距離感のある、夫婦。

急に自分だけのアパートを借りたいと言い出した夫。
それじゃぁ結婚してる意味なくない？と言いつつ、
それを認める妻。

妻は、夫の新しい部屋がどこにあるかも知らず、
夫は、妻が日中一人で何をしているかも、知らない。

全く現実感のない夫婦で、
2人は一体なぜ夫婦になったのか？

2人が出会ったいきさつは出てくるけれども、
そこからどうやって、夫婦になったのか。
恋愛感情は、あったのか。

全てが「なんとなく」と言う言葉で済ませてしまえそうな、
希薄な夫婦。

夫婦って、難しい関係だよな、と思う。
元々他人なのに、恋愛感情で一緒になり、
その感情が醒めた後は、情で一緒にいるのか。
子供がいるから、一緒にいるのか。

他人同士が一緒に暮らすパターンは色々あるけれど、
それでも「夫婦」という特殊で不可侵な関係は、
「夫婦だから分かるはず」なんていう思い込みで、
ないがしろにされがちなのか。

角田氏の、リアルっぽい口調で語られる、
リアルっぽくない夫婦生活に、
夫婦になるって、どういうことなんだろう？と、
なる予定は全くないけれど、ふと考えてしまった、
一冊でした。