『クロスファイア(上)』
『クロスファイア(下)』 著:宮部みゆき
念力放火能力(パイロキネシス)を持つ淳子。
彼女が、女子高生拉致殺人事件の容疑者を、
屠ってから二年後、廃工場で凶悪な若者たちと遭遇し、
またしても、闘いの火ぶたは切られる。
命を落とした男性に、恋人の救出を頼まれた彼女は、
力を全開させ、奔走する。
アジトに乗り込み、犯人たちを燃やし尽くし、
監禁されていた奈津子を救出する寸前、
奈津子は何者かに射殺されてしまった。
激しい自責の念に苛まれる彼女。
そこに、彼女の能力を知る、
「ガーディアン」を名乗る組織が近づいてくる。
やっぱり、宮部みゆきは面白い。
と、『誰か』を読んだ時も、思ったけれど。
上下巻合わせてかなりのボリュームなのに、
一気に読んでしまった。
主人公の淳子は、感情の昂りとともに、
超高温で物を燃やしてしまう、超能力の持ち主。
それが引き金となり、思いも寄らないところで、
事件が複雑に何重にも絡んでいくのだけれど、
ただの超能力話、SF話にならないところが、
さすが宮部みゆき。
彼女の手にかかると、超能力もガーディアンの存在も、
有り得なくないかも…と思えてくるのだから、不思議。
誰もを恐れさす、大きなパワーを持ってはいるが、
その能力を誇示するでもなく疎むでもなく、
力をコントロールしつつ、淡々と生活している淳子。
ただその力は、法では裁ききれなかった者、
法の網の目から逃れた者を裁くために、
この力で消すことを、自分自身に許している。
しかし、正義の味方であるわけではなく、
常に、自分のしていることが正しいのか、
との葛藤の中にあり。
志を同じくするはずのガーディアンに、
一時は同意を表しつつも、最終的には、
彼らのやり方には迎合せず。
その力をまだコントロールできなかった頃、
幼い少年を焼き殺したことがあるという、
悲しい過去。
同じく、超能力を持つ男と淳子は知り合い、
異能者だけが通じ合える、と思ったのもつかの間。
自らを装填された銃、と言いつつも、
やはり殺人マシンとなり切れなかった淳子に、涙。
物語の根底に大きく流れているのは、
法では裁ききれない者への、裁きのあり方。
法に守られのうのうと生きている犯罪者を、
私刑に処すことの是非。
淳子のしたことは、正しかったのか。
ガーディアンの存在は、正しいのか。
もし自分が、この物語の中の人物のような目に、
合わされていたら、淳子やガーディアンの助けを、
願ってしまいそうな気がする。
映画化されているそうだけど、どうでしょう…。
ランキングも
よろしくお願いします♪
【参考】
◆その他、宮部みゆきの著書は→
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