これはとある田舎の高校サッカー部の話。
俺は幼なじみと小さな高校に入学した。入学式の日、あいつと俺は高校に行った。式が終わると、決して多くないいくつかの部が、勧誘を行っていた。あいつは小さい時からサッカーをやっていて、当然のようにサッカー部の方へ向かった。俺は特に何かをやろうという気もなかったし、今日は入部届を出すだけだと言うので、あいつに付いて行った。すべてはそこから始まった。あいつと部の前に行くと、先輩達がいた。あいつが入部届を書いていると、当然のように勧誘が始まった。「きみは入らないの?部員も多くないし、入ってみない?」俺はサッカーなどした事がなかったので、当然断った。俺は昔、野球をしていて、肩を壊して辞めていた。それを話すと、「サッカーは足を使うスポーツだから大丈夫!」などとさらに勧誘が続いた。もうあんな想いはしたくないと思う気持ちがあったが、最近は体力的に鈍った感もあったし、サッカーなら出来る気がして、俺は入部してしまった。あいつは、俺に「本当に大丈夫なのか?」と心配をしていた。しかし、やるだけやってみようと俺は内心自信があった。
そして、俺のサッカー人生が始まった。しかし現実は甘くなかった。全部で20人ほどの部員しかいなかったのだが、同じ学年に未経験者はいなかった。3年に2人、2年に1人だけだった。基礎的な練習が終わると、俺は横で基礎の続きか、壁役や雑用だった。対照的にあいつはいきなりフォワードでレギュラーだった。一年ではズバ抜けていて、あいつは別世界に居た。
そんなある日の出来事だった。俺に転機が訪れる。3年が引退して、ゴールキーパーが二年生1人だけになったため、監督が俺にキーパーをやらないか?と言うのだ。サッカーは当たりが激しく、タックルの際に俺の肩に激痛が走ることも少なくなかった。そんなこともあり、肩にはゴールキーパーの方がいいという安易な考えで俺はゴールキーパーに転向した。そして、俺は1、2年だけの大会では初のベンチ入りを果たした。しかし、出場することは当然なかった。そして俺とあいつが二年になると、当然のように一つ下の新入部員が顔を揃えた。そこにはゴールキーパーの一年生もいた。小学校からの経験者で、また当然のように俺はその一年と入れ替わりベンチからも外れた。俺は悔しくてあいつに頼んで居残り練習をやり続けた。しかし、成果がすぐに現れるはずもない。もちろん、一つ下のゴールキーパーが得てきたものを、たかが居残りで挽回できるはずもないのだ。しかし、俺は練習し続けた。あいつのサッカーバカにも助けられ、あいつとの居残りをしない日などなかった。
それから、時は過ぎ続けた。俺達は3年になった。上の代が引退し、同時に繰り越しで俺はベンチに入った。しかし、一つ下のゴールキーパーへの信頼は厚かった。当然のように俺の公式戦出場はない。そして、最後の大会は訪れた。負ければ引退。一回戦、もちろん、俺はベンチスタート。あいつはキャプテンでエースストライカーだった。そして試合が始まった。あいつが前半始まってすぐ、先制のゴールを上げた。しかし、前半終了間際に同点にされてしまう。後半あいつがまた点を取る。後半中盤、まさかの同点ゴールを上げられてしまう。2対2。そして、まさかのことが後半終了間近に起きる。うちのゴールキーパーが、接触プレーで倒れた。こんな緊迫した展開でキーパーが一旦ピッチの外に出るなど出来ない。しばらくゲームは止まったが、とうとう監督が俺に声をかける。「おもいっきり行って来い!」俺はとうとう初めてピッチに立った。うれしくてたまらなかった。しかし、緊張もあり、俺は動きが硬かった。何とか後半が終わり、延長戦へ。Vゴール方式だったため、俺が点を取られれば負け。あいつが俺に言う。「俺が点取れば勝ちだからもう少しだけ立ってろ。」あいつはすでに2点も取っていたし、後一点取りたいという気持ちが俺にも伝わり、俺はリラックスできた。幼なじみのあいつを、ここまで信頼できる時は今までなかった。試合は延長後半の終盤だった、カウンターを食らってしまい、俺と相手フォワードの1対1になった。歓声は一気に沸き上がった。観客のほとんどは俺達の負けを確信しただろう。しかし、正直俺は恐くはなかった。相手はいくら巧いとはいえ、あいつのシュートを受け続けてきた俺には、妙な自信があったのだ。ボールは止まって見えた。俺はしっかりとキャッチした。観客からは残念そうな歓声。俺はすぐにあいつを見た。あいつにお前のおかげだと伝えるために。その瞬間、あいつが何か訴えてることがわかったのだ。幼なじみだからなのかはわからないが、あいつが今すぐボールを欲しい事、どんな軌道がいいか、どこに欲しいか、いろんなことがわかった。俺は肩を壊しているのも忘れ、おもいっきり前線のあいつにボールを投げた。俺とあいつ以外の全員が、俺に止められてしまった残念さの余韻に浸っていた為、あまりに簡単にあいつにボールが渡った。あいつはディフェンダーを交わしゴールをわった。あっという間だった。俺達は勝ったのだった。当然ハットトリックを決めたあいつはヒーローだった。そして、俺達は3回戦で姿を消す。俺は公式戦出場25分、アシスト1という記録でサッカー人生を終えた。記録から見ればつまらない3年間に見えるだろう。しかし、俺には最高のサッカー人生だったことは言うまでもない・・・・