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昔、宗教がまだ生きていた時代には「人間とは何か」、「生命とは何か」ということは宗教によって定義されていました。
でも、今、(少なくとも日本では)その「宗教」は死にました。その代わり、「科学」や「経済」が人々の価値基準になってきました。でも、「科学」や「経済」は「生命」の仕組みを明らかにしたり、労働の価値を与えることはできても、「生命」や「人間」の意味自体を与えてはくれません。 でも、その意味が分からなければ「何のために子どもを育てるのか」「何のために教育をするのか」、そして「何のために生きるのか」という目的が決まってきません。その結果、現代ではすぐ結果が見える「しつけ」と「能力開発」ばかりが、子育てと教育の目的になってしまいました。 でも、どんなに行儀正しい子に育っても、また高度な能力が育っても、そのことで子どもが幸せになるわけではありません。自立して生きることが出来るわけでも、人間らしい人間になるわけでもありません。ただ、大人たちの自己満足を満たすだけです。 確かに礼儀正しいことは素敵なことだと思います。でも、礼儀正しいだけで自分で判断して、自分の意志と責任で行動することが出来なければ、幸せに生きることは困難になるでしょう。幸せは、礼儀正しく待っていてもやってこないものだからです。 どんなにすごい能力を持っていても所詮「能力」はただの「道具」に過ぎません。 その道具をどのように使うのかはその人の「人間性」の問題なのですが、人間性が育たないまま高度な能力を持ってしまった人は、自分の能力に振り回されるだけで、「自分の人生」「自分の生き方」を見失ってしまいます。 だからといって、その能力を育てることが出来ない人もまた、「自分の価値」を見いだすことが出来ず、自己肯定感を育てることが出来なくなってしまいます。本来、「能力の有無」と「人間としての価値」は別のものなのですが、「能力」ばかりが大切にされている社会では、その両者が混同されてしまっているのです。 その結果、能力において劣る「幼児」や、「障害者」や、「老人」が大切にされなくなっています。 また、社会的な成果を生み出さない「母親という価値」も大切にされなくなり、多くのお母さんたちが「社会で働いている女性」に引け目を感じ、子育てから逃げ出したいと考えています。 もちろん女性が社会で働くことは素敵なことです。実際、近代的な「会社」というシステムが出来る以前は女性も男性と同じように働いていました。でも、「会社」というシステムは家庭や子育てと両立できないシステムになっているので、原則としてどちらかを選択しなければならないのです。 それでも以前は「家庭」を選ぶ女性が多かったのに、最近では「会社」を選ぶ女性が増えてきたと言うことです。会社の仕事の方が成果が見えるので「やりがい」があるからなのでしょう。 でも、その「成果を求める価値観」が子どもの能力開発に向かう時、子どもは苦しくなります。そして、思い通りにならない子育てにお母さんも苦しむことになります。だって子どもは「能力開発」なんかに興味などないからです。 仕事をしながらでも一生懸命に子育てをしているお母さんもいっぱいいますが、でも、その多くの人がその両立に悩んでいます。もともと「会社」というシステム自体が男性対応の仕組みになっているので、「お母さん」が会社と家庭を両立させるのは非常に困難なんです。それは肉体的にも、精神的にも、そして価値観的にもです。 「会社」というシステムにおける価値観と、「家庭」や「子育て」における価値観はある意味で正反対のものだからです。 会社では目に見える結果が全てです。営業における優しさも、思いやりも、笑顔も、その結果を出すための手段であって、結果よりそちらの方を優先することはありません。 よく、「お客様のことを一番に考えています」などと謳っている会社がありますが、あれは嘘です。会社が赤字を出してまで、お客様に奉仕するなどと言うことはありません。あったとしてもそれは一時的な「戦略」です。 ただ、私は会社で働いている「お母さんたち」を否定、非難しているのではありません。「そういうことをしっかりと自覚した上で子どもと向き合ってください」ということを言いたいのです。会社の価値観で子育てをしないで下さい、ということです。 これは、現在は会社勤めをしていない人でも同じです。 宗教を失ってしまった私たちは、今ここで「人間とは何か」「生命とは何か」ということを考えることから始めなければならないのではないかと思うのです。 そうでないと「製品や商品を作ること」や「営業成績を上げること」と、子どもを育てることの違いが分からなくなってしまいます。 ただし、この問いに正解があるわけではありません。また、正解が大事なのでもありません。そういうことをいつも考えていることが大事なのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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