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「本音を言えば、大抵のドイツワインは常に退屈な代物であった」 と、ヒュー・ジョンソンは8月19日付けのWelt-onlineのインタビューに語っている。 「スペイン、フランスあるいはオーストラリアにも違った意味で退屈なワインがある」と続けているが、大家ジョンソンのこの発言はドイツワイン界にいくらか衝撃を与えたようだ。 「私は長年彼を個人的に知っているが、こんなことを言うとは理解できない」「彼の著作を見てもドイツワインの良き理解者だと思っていた」と、インタビューを紹介しているワインジャーナリスト、マリオ・ショイアーマンのブログに当惑気味のコメントが寄せられている。 ジョンソンはさらに衝撃的な発言を続ける。 「ドイツワイン生産地域の大半は、実際には真に高品質なワインの栽培には向いていないし、良質なワインを生産するためには収穫量の制限が緩すぎる」これに対しショイアーマンは「間違い以外の何物でもなく、ほとんど中傷だ」とコメントしている。 ジョンソンの思い切った発言は続く。 「1971年の惨事(ワイン法改正を指す)以来、我々英国人はドイツワインを響きの良い名前をつけた一種の砂糖水と見なしてきた」確かに輸出向け量産ワインにはそうしたワインが多かったし、それがドイツワインのイメージとして日本を始めとする海外では今でも定着し、高品質なドイツワインの普及を難しくしていることは周知の通りだろう。「酸度の低い南ドイツのワインはなんとなく興味が持てなかったが、モーゼル・ザール・ルーヴァーが今日唯一国際的に認められたドイツのワイン生産地域であることは興味深い」と続ける。 何故突然モーゼルに話題を引っ張ったのか?それには訳がある。 ユルツィガー・ヴュルツガルテンの近くに予定されているB50neu高速道路高架橋建設計画だ。1970年代の冷戦時代に立案された高架橋はヴュルツガルテンの急斜面付近から始まり、高さ160mで1.7kmあまり続く巨大なコンクリートの支柱に支えられた壮大な陸橋だ。この橋でアイフェルとフンスリュック間の交通は約15分短縮されるという。しかし一方で葡萄畑の一部は支柱につぶされ橋の影に入り、工事用道路の敷設に伴う環境破壊とともに、河岸の斜面を覆う葡萄畑が一面に続く景観が損なわれること、さらに高速道路の敷設により、橋の先にあるヴェーレナー・ゾンネンウアー、ツェルティンガー・ゾンネンウアー、グラーハー・ヒンメルライヒからベルンカステルにかけての土壌の保水環境に影響を及ぼすことが懸念されている。「本来世界遺産に指定されるべき地域を、ラインラント・ファルツ州政府は高速道路橋で破壊しようとは」とジョンソンは嘆く。 おそらくジョンソンの今回の発言は、ドイツワインの現状を踏まえた上での意図的かつ政治的なものだろう。先日ここでも伝えたように、EU指令に基づく原産地呼称導入に際して、ラインラント・ファルツ州は収穫量上限の引き上げを決めた。「大抵のドイツワインは退屈な代物」「ドイツワインは響きの良い名前をつけた砂糖水」という表現は、現状を維持した上で大規模生産者の側に立つ州政府の方針への批判と見ることが出来る。「ドイツワイン生産地域の大半は、実際には真に高品質なワインの栽培には向いていない」という発言からは、原産地呼称制度導入に際しても厳格な収穫量制限ができない現状への、表現を選んだ批判であるように思われる。 インタビューの終わり近くで、コカコーラ的ないつも同じ味の工業的に生産されるワインと、少量の高級ワインに二極化しつつあるように見えるが、という質問に対しジョンソンは「大量生産される工業的ワインと個性的な手作りのワインを両極端に二分化して捉えるのは危険だ」と言う。「小規模な無名生産者には、(大規模生産者の)有名な名前なくして生計が成り立たない人たちもいる。それでも、出来る限り最高のワインを造る人々は大勢いる。すぐわかることだが、彼らは仕事を愛しているからだ」 ジョンソンの過激な発言の裏には、つまるところ、ドイツの生産者達への愛情があるように思われる。 │<< 前日へ │翌日へ >> │一覧 │ 一番上に戻る │ |
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