テーマ:ワイン大好き!(30229)
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さて、昨日の続きだが、この調子で書いているとモーゼルのVDP加盟醸造所について、けっこうな量を書くことになりそうなので、少々肩の力を抜いて、思いつくことを気ままに書き連ねることにする。
えーと、そう、いくつかの醸造所は2013年産、つまり新酒の辛口からファインヘルブを2種類前後しか出していなかったのはありがたかった、というか助かった。グローセス・ゲヴェクスとエアステ・ラーゲの新酒はリリースが収穫翌年の9月以降なので、このカテゴリーは2012年産しか出ていない。従ってすっ飛ばした。もう、長丁場がじわじわと見えてくると、試飲対象を絞り込めるのはすなわち負担軽減である。普段は試飲したくてたまらないくせに、いざこういう場になると、どうやって的を絞るか、言い換えれば試飲しないですませるかを考えるというのは、皮肉というか残念というか。しかし体力にも時間にも限界がある以上やむを得ない。 ファン・フォルクセン醸造所は見事だった。私にとって特に思い入れのある醸造所というのもあるけれど、どのワインもストラクチャーがしっかりとして、形が整っていた。2013年の弱さというか、いくつかの醸造所では、「難しい年だったから、仕方ないよね」という暖かい目で見なければ、という気持ちになったものだが、ファン・フォルクセンの仕上がりは、そんな目で見られてたまるか、という、気合いが伝わってきた。2012年産にも勝るとも劣らない完成度の高さ。確かに酸のキレ味は若干堅い感じはするけれど、ミネラリティの充実感と相まって飲み応え十分。「収穫量?平年の4割くらいかな」と、テーブルにいた醸造責任者のドミニク・フェルクは、遠視用眼鏡のせいで大きく見える目で私を凝視しながら、こともなげに言った。というと、さっきのツィリケン醸造所と大体同じくらいだったわけか。 ファン・フォルクセン醸造所の醸造責任者ドミニク・フェルクに話をきく参加者。下に出てくるワイン商ではない。 ファン・フォルクセン醸造所は確か、2012年も収穫量が少なく、例年は8月下旬に開催する新酒試飲会を中止せざるを得なかった。注文があったぶんを出荷するには、やむを得なかったんだ、と、一昨年秋に日本に来た時、オーナーのローマン・ニエヴォドニツァンスキーは言っていた。2013年産も平年よりずっと少ないのでは、2014年の新酒試飲会も中止せざるを得なかっただろう。42haとモーゼルでは規模の大きい部類に属し、自家所有する畑の他にも委託栽培する畑もあるので、生産量は28万本と、60haを所有するマルクス・モリトールの25万本よりも多い。 2013年に続いて、2014年も生産量が少なくなることは明らかだった。というのは、マインツのVDP試飲会の丁度前の週の月曜日にザールで激しい雹が降ったからだ。最も深刻な被害を被ったのはファン・フォルクセンが所有するヴァヴェルン村のゴルトベルクの畑で、損害の程度は約90%というからほぼ全滅。その近くのカンツェムでも50~60%の芽が損傷を受けたという。 「雹が降っていた時、丁度エゴン・ミュラーと飲んでいたんだ」と、ザール下流にあるピエモント醸造所のオーナー、クラウス・ピエモントは言った。「なんだか外が騒々しいと思ったら、みるみるうちに白い雹が積もってね。それでもエゴンは『このくらいなら大したことはないよ』と、平然としてDRCを開けたんだ。1994のグラン・ゼシェゾーだった」という。シャルツホーフベルクの畑は実際、若干の損害はあったものの、葡萄樹は持ち前の生命力を発揮して、損傷を受けた芽のそばから新しい芽が出てきたという。 生産量減少が続いていても、ファン・フォルクセンの引き合いは強いらしく、マインツの試飲会ではワイン商らしき男がフェルク氏を相手に、なんとか顧客リストに加えて欲しいと、10分あまり滔々と自分の商売のことを話し続けていた。オーナーのニエヴォドニツァンスキー氏はどこかで挨拶まわりでもしているのか、姿が見えなかった。フェルク氏は忍耐強く、その男の話に耳を傾け、私はワインを注いでもらうためにフェルク氏の目線を捕まえようと目に力をこめた。 ここ数年生産量が少ないにもかかわらず、というか、需要を満たす必要に迫られてかもしれないが、ファン・フォルクセン醸造所はザール河の対岸の斜面の上に、新しい醸造施設を建築中だ。ステンレスタンクの並ぶセラーは2014年の収穫から稼働している。いずれは醸造を全て移転し、現在の醸造所がある、かつてイエズス会修道院だった建物の地下では一部のグラン・クリュだけ醸造する他は、顧客を迎えての試飲にもっぱら利用するつもりだそうだ。 ファン・フォルクセン醸造所が新設した醸造施設の一部。右の大男がオーナーのローマン・ニエヴォドニツァンスキー氏。 ファン・フォルクセンの成功の理由の一つはもちろん、優れた葡萄畑にある。もう一つの理由は、オーナーの完璧主義にある。一切の妥協を廃して理想を追求するだけの意志の強さと、幸運なことにそれを支えるだけの財力が彼にはあった。ドイツ最大のビール醸造会社のひとつビットブルガーの経営者一族の出身で、アイフェルの山中に約4000haの山林を持っている。そして近年、新しいセラーに使う樽をつくるために、オーストリアの名工シュトッキンガーを連れてきて、これは、という樫の木を伐採させて、新たに樽を造らせたという。こういう贅沢が出来る醸造所は、恐らくあまりないのではないだろうか。 それにしても、生産量がままならないのに、多額の投資を続けているのは、部外者ながらほんの少しばかり心配になる。もっとも、天候ばかりは神のみぞ知るで、今年こそは恵まれた天候が訪れ十分な収穫の得られることを祈るより他はない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
私の印象では2013年からは上の設備を上手に使ったのが、2012年までの濁酒が無くなって、可成りクリアーになったと感じました。アルテレーベン以上での比較ですが。
葡萄の熟成に妥協がないことで辛口醸造を一部断念したことも評価できます。 (2015/03/15 02:13:21 AM)
pfaelzerweinさん
>私の印象では2013年からは上の設備を上手に使ったのが、2012年までの濁酒が無くなって、可成りクリアーになったと感じました。アルテレーベン以上での比較ですが。 おそらく、酸の個性によるところが大きいのではと思います。そういえば、圧搾機も大型の最新型を二台購入したそうです。 >葡萄の熟成に妥協がないことで辛口醸造を一部断念したことも評価できます。 ----- (2015/03/16 12:21:09 AM) |
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