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カテゴリ:映画
2001年9月11日。
世界の何かが変わった日です。 当然のことながら、最も衝撃を受けたのはアメリカそのものでした。 「何故」という理不尽さ。 国を象徴する建物が失われたショック。 何より、そこで失われた多くの罪なき魂の重さ。 本来、哀しみ悼むべきこの情況を、その年辛うじて当選したものの、正当性を疑わていた大統領は、政治的に利用しました。 テロを未然に防げなかった自分の無能を棚に上げ、死者の上に死者を積み上げる戦争を勇ましく叫ぶことによって。 死者を悼む言論は、いつしかヒステリックな報復の声に翻訳され、平和を望む言論は封殺されました。 9.11から3ヵ月後、アメリカ合衆国大統領が、この年を振り返って言ったセリフは、衝撃的であると同時に、示唆的でもありました。彼は笑顔でこう言ったのです。 「今年は最高の一年だったよ」と。 人の命の重さも、地球の尊さも、権力の怖さも知らない男が、神の代理人を名乗って、二期目も大統領を務めている「冒涜的」な現状。 マイケル・ムーアは叫びました。「恥を知れ!」と。 -------------- Plentyは豊かさを意味します。 この映画は豊かな国の貧しさを突きつけます。 1つは物質的な貧しさ。 もうlつは心の貧しさ。 優しく、強くあろうとすること。 自分の信念に基づいて生きること。 それ自身は立派な行為、尊い行為です。 しかし…。 -------------- 映画のストーリーをご紹介しましょう。 宣教師の子としてアフリカに生まれ、イスラエルに育った少女が、母からの手紙を叔父に届けにアメリカに戻ってきます。 「アメリカで最もホームレスが多い」ロサンジェルスの現実を目の当たりにし、ボランティア活動に協力する彼女。 一方、その叔父は、ベトナム戦争の後遺症を抱えつつも、孤独に、誇り高く「アメリカ」を守ろうとしています。 すれ違う2人ですが、あるアラブ系のホームレスが巻き込まれた事件をきっかけに、再会を果たします。 叔父の「調査」に協力を申し出る彼女。しかし、2人の思惑は違うところにありました。 ホームレスの身寄りを探そうとする少女と、ホームレスは犯罪に関係していると踏んで、その真実を暴こうとする叔父。 2人の探索行は、意外な結末を迎えます。 そして開かれる「母」の手紙。 妹からの言葉を胸に、叔父は姪を連れて、アメリカ横断の旅に出ます。「あの場所」を目指して。 -------------- それぞれが、それぞれの「正義」を掲げて、殺し殺される現実。 テロは許せない行為です。正直「神」がそれを認めているとは思えない。 ただ、知らなければならないのは、実行犯達も「正当で崇高な目的」を持っている、ということ。 目的を持たず、人を殺せる人間なんて、基本的にはいません。 自分を正当化する何らかの論理を、自分の中に抱えているはず。 これは、恐ろしいことですが、でも、だからこそ、逆に解決の道はあると私は信じます。 War is over if you want it. 私が何度も引用しているジョン・レノン&オノ・ヨーコの言葉。 私は欲しいのです。 声なき声を聞く耳が。 見えないものを見る目が。 それらを伝える声が。 そして、ガンジーの勇気が。 -------------- 難しい役どころを丁寧にこなした主役達の演技。 それを引き立たせる映像演出と素晴らしい音楽。 静かな感動が、じわりと胸を満たす、祈りと鎮魂に満ちた映画でした。 -------------- ------- 『ランド・オブ・プレンティ』 2004年 アスミック・エース 124分 http://landofplenty.jp/ 監督:ヴィム・ヴェンダース 出演:ミシェル・ウィリアムズ/ジョン・ディール/リチャード・エドソン ★★★★★ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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