テーマ:学力とはなにか。(17)
カテゴリ:学力について
地方公立中学校の理科の教師のお話。
この理科教師の定期テストの平均点はいつも30~40点台にあり、一番出来るグループでも70~80点で数名しかいない。昨年など中1年生なのに多くの生徒は20点代しか点が取れていない。これで義務教育のしかも公立の中学生の点なのである。中学の入り口でこの状態で理科の学ぶ面白さや理科好きの子を作ることができるだろうか。 進学校などで全員がハイレベルの生徒なので、問題を難解にして全員が満点になるのを避ける学校なら平均点30点台ということはままあることである。 しかし、これはごく普通の地方の公立中学において起きている事である。 子供たちは、この教師の授業は分からない。質問してもそんな事は自分で考えろと言う。自分ひとりで、もそもそと小声で喋るので何を言っているか分からない。すぐきれて勝手に自分だけで授業をしている、と言う。 私が「分からないなら、もっと大きい声で分かるに授業をしてください」と頼んだら、と言うと何時も返ってくる言葉は 「あの先生は東大出なんだって」 ある時なんか保護者が担任に「理科の先生の授業が分からないと子どもが言っていますので、もう少し分かる授業をしてもらえませんか」といったら、何とその担任教師は 「あの先生は東大出身で、実験には色々工夫されています」 と言う回答なのである。 保護者もその東大という言葉に驚き、納得してそれ以上何も言わなかった。 私、その親に、 「こんな田舎の中学に東大出で中学教師になっているような人は、よほど教育に情熱を傾け、現状の困難を何とかしようと頑張る金八先生タイプの人か、東大で落ちこぼれ、就職先がないから、その名前に後光を感じる田舎に都落ちしてきた来た人のどちらかですよ」と反論しておいた。 子供たちが今どのような状態にあり、その子供たちに学力を付けさせるにはどうすべきか、とても困難な問題が山積している。その教育の真っ只中で、ただ自分の世界に閉じこもり、出身大学のブランド名にすがって知識を切り売りしているとは情けない。そのブランド名の権威にすがって子供を抑えこんでいるだけなのだ。 そして、それを認め許している親たちがいる、学校がある。 東大だからということだけで、どんな事でも許す事大主義がある。 その風土に甘えて生きている尊大な利己的な似非エリートがいる。 俗にいうエリート・ブランドの大学で学び、そのように世間に評価されている人間の活動は、少なくともその大学の学びで得たものを社会へ、その知識を現代的問題と鋭く対峙して自らの力で社会へ創造的に返していく責任がある。それが真の生きた学力ではないか。 其れができない東大出身って何者? 自分の学んだ専門性や教養が、自己の生きる力となってはいない。ただ切り売りして、ブランド名にすがって辛うじて息しているだけの生活だ。 ブランド名のない庶民は皆、自分の能力を磨く事でしか生きる事はできない。実力がなければ忽ちに飢えが降りかかる。 しかし、現代の若者たちの中にも、自己のエリートとしての存在をごく自分だけの個人的な問題としてしか見られない者たちが多い。選ばれている恵まれた条件の自分を社会の中に位置づけ、普遍化して見ることが必要ではないか。そうでなければその若者たちの発展性はとても閉ざされたものになるであろう。自分が生かされているのはあくまで社会なのである。それを考える事のできる知性をもてることがエリートの特権だ。 社会が学校が憂慮すべき困難に陥っているのに、それとは全く無関係に子供たちとさえ真正面から向き合えないで、目をそらしている東大出身の中学教師とは何者? このようなエリート校出身者を現代は多く輩出している。幼い時からの子供の育ち方とこれは大きく関っているのではなかろうか。学んできた知識が生きていく学力、知性となっていないのだ。 さらに現代の若者たちは、出身学校いかんに関らず、自分が世界の中心であり、それを否定するものにひどく傷つき、益々自己の世界のだけに生きている自意識過剰のひ弱な者が多い。このような若者は自分に対する評価が低く、自信がないのに自分だけは特別というエリート意識だけは人一倍強いのである。 子供の尻をたたいて早く早くとせかして、成長を急がせても子供は人として成長できないのである。人として成熟していくには、紆余曲折や挫折や失意や絶望の体験がいる。効率よく人とはなれないのである。 人としての成長、成熟と知力は相関関係にある。ただ暗記だけの知識は生きる力とはなりえない。ある知識を血肉化して知性にまで高めるには、その知識を獲得する子供の豊かな生活体験や、人としての成長が必要だ。 小学生のように幼い精神で大学の学びを、自らの生きていく力には出来ないのだ。こんな大学生が今日、日本に蔓延しており大学は機能不全に陥っている。この現実を親たちは知っているか。 若いママたちよ、あなたの子供がこのような大人になる事を予測しているか?本当に生きがいのある人生を送るにはどんな能力を備えた子供を育てるべきか考えた事あるか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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