千葉・木更津社会館保育園の実践
昨日(10・27)の夜10時からNHK教育テレビ・ETV特集で、里山保育を実践している保育園を1時間半のドキュメンタリーで紹介している番組を見た。
これは、千葉県木更津市にある木更津社会館保育園の実践記録である。
この保育園に登園している子供たちは、ほとんどが都会っ子たちである。0歳児から年長組みの6歳児までで、里山のなかに園舎がある。5歳児と6歳児は年間60日の里山での保育活動がある。
(コトちゃんの森のようちえん:十三夜のおだんごつくり。
まず、子供たちはおだんごを焼く「炉」作りから始める)
汚れることを嫌う子供たちと親たち。
泥んこになることの出来ない子供たち。
虫を気持ち悪がり恐がる子供たち。
いつも「あぶないからダメ」といわれ続け、
何も自分の力でする必要のない子供たち。
こんな現代の子どもたちが、
文字通り自然の中に投げ込まれ、
自然と格闘しながら、自らの五感を育てていく。
皮膚感覚として自然を受け入れ、感性を豊かに育てていく。
保育者はそれを遠くから優しいが厳しい眼差しで見守り、
子供たちと格闘している。
子どもが人として成長して行く時、
これは必ず通過しなくてはならない成長過程。
こころを身体を成長させていく時、通過しなくてはならない道筋。
現代はこの過程をすっぽり省いて、
英語やら文字やらとやたらと、むやみに知識を子どもに強要している。
(コトちゃんの森のようちえん:十三夜のお団子つくり・
森の中にある葉っぱや木の実を使って、素敵な森のどうぶつのお団子ができたよ。)
この保育園のすばらしいところは、里山の自然を背景に繰り広げられる子供たちどうしの集団の成長のさせ方にある。子どもたちが自らの力で、そのこども集団に次々に起きる人間関係の葛藤を、傷つき泣きながら克服していく。
大人の制裁や注意は、ぎりぎりの所でしか発揮されない。
幼い子供たちの喧嘩や争いは、ある意味で容赦なく、徹底している。残酷である。
その喧嘩を保育者が「その子どもの成長を長いスパンのなかに位置づけて、子どもどうしに納得のいくまでやらせて見守る」。その忍耐強さには、感心する。その保育者としての専門性、力量には感心する。
そして、子供たちもぎりぎりのところまでやりあって、実態を打開しようとあがく。そして、一歩一歩、解決へと階段をのぼっていく。
改めてこどものその成長する力の凄さを感じる。
その子供たちの力を、引き出し伸ばす、この保育園を運営する、スタッフの力量には敬服する。親だけでは出来ないこと。
この私でさえ「ここまで、子供たちにやらせて、怪我でもしたら大変だ。大人の仲裁の出番では?」とはらはらした。
今時の幼児は、大人の監視のもとに、ともだちと遊んでおり、オモチャの取り合いで喧嘩を始めようものなら、たちどころにママたちの仲裁が入る。喧嘩などを子どもたち自身で、徹底的にやらせるなどもっての外。他人とは、深く関らないようにして、子育てするというのが、一般なのである。
この里山保育園の子供たちは、自然のなかで獲得した感性を、人との関りのなかでも発揮して、鍛えられていく。
危ない事、危険なことも、子どもは痛さや恐さを体験してしか知ることはできないことを、この子供たちの成長記録は物語っている。
ケガをして痛さを覚える。血を流しながら、包丁や鎌や鋏を使う技能を身につけていく。
この子供たちの巧みな包丁さばき、鎌を使いこなす手には感心する。
巧みに危険を回避する術を体で覚えている。
これらは、何百回、口で教えても身につくものではない。言葉だけでは身につかない人間の技能だ。
大人たちが与えた自然環境で、この保育は展開されているが、昔の子供たちは、人としてごく自然に、子どもの集団のなかで身につけたこれらは能力だ。
現代の若いママたちは、このような保育に否定的だ。
「危ない、汚い、泥を食べさせる、ケガをさせる」などという理由で。
さらには「お勉強を教えない」などというのもある。
学ぶとは何か。人が人として成長していくとは何かの原点が、この里山保育のなかに私たちは見る事が出来る。
しかも、働くお母さんも利用できる保育園。こんな保育園が日本の何処にでもあれば、日本の子供たちは、もっと健やかに伸びていけるのではという思いを強くした。
このような保育観で保育できる指導者の出現がもっと増えること願わずにはおれない。
我が孫娘のコトちゃん、「森のようちえん」に通い始めて2ヶ月になろうとしている。
(明るい笑顔で、木登りも出来るようになったよ)
泣き虫で恥ずかしがり屋のコトちゃんも、今は、すかり森の生活に馴染んできましたよ。元気よく「もっと遊びたい」というようになってきました。
しかし、ママが産休中しか利用できないのは返す返すも残念至極。
(笹の葉っぱをハサミでかりとっているお友達から、
笹の葉っぱをもらっているコトちゃん。)
(牧場の馬に笹の葉っぱをあげているコトちゃん。
初めは、恐くて馬にも近づけないコトちゃんでしたが、
今は平気で、自分の手から直接、
馬さんの口に草を差し出して食べさせていますよ。)
このテレビで紹介された保育園のように、制度化され、
恒常的に、どんな環境にある子供でも希望すれば保育が受けられる。
そのように幼い子供たちの保育環境を整えて欲しい。
このようなところに税金を使って欲しい。
国は、
少子化対策をあれこれ議論しているが、
こどもが健やかに伸びる環境作りなしに、子どもなど育たない。
そして、今、、子供たちが育つには、
劣悪な環境であることを先ず政権与党は知るべきだ。
(掲載写真は、すべてコトちゃんの参加している、保育の自主グループ
「森のようちえん」のHPのDiaryから転載しています。)