先日、おねだり苦手、甘え下手な性格のことを書いた。
7月11日の日記
今の私は、物欲は強くない人間だと思う。
だが、幼い頃は、物に対する執着心の強さを
持ち合わせていた、と思われるエピソードがある。
小学校、1~2年の頃の話。
養母の実家の母親(母も養女だったので、継母だが)、
つまり私の義理の祖母が、息子夫婦と喧嘩して、
我が家にしばらく居留した事があった。
この祖母の家には、私と同じ年頃の姉妹がいたので、
夏休みには、必ず泊りがけで遊びに行っていた。
祖母は、昔、小料理屋(一杯飲み屋)を営んでいたことがあり、
その道の人らしい雰囲気の人だった。
気性が強く、物言いにもそれが出ていたので、
私は、怖くて近づけなかった。
その祖母が、私に、欲しい物を買ってあげると言った。
それまで、飴玉の1個すら、買ってもらったことが
なかったから、とても驚いた。
近所の駄菓子屋さんへ、祖母と母と連れ立って行った。
そして、着せ替え人形と塗り絵を買ってもらった。
着せ替え人形と言っても、厚紙に描かれたカラフルな絵の人形や
洋服などを、切り取り、いろいろな服を着せ替えて遊ぶのである。
私は、買ってもらったものを大事に抱え、
これから訪れるだろう素敵な時間に
胸をわくわくさせていた。
そうして、帰り着くなり、袋から取り出して、
かわいい人形や、きれいな服の絵に、しばらく見惚れていた。
「ちょっと、見せてごらん」・・・祖母の言葉に、どきりとした。
大切なものを胸に抱き寄せて、
わたしは、瞬時に固まってしまった。
そばにいた母が、「ばあちゃんが見たいってよ。」
「・・・・・・・・・・・」
「ちょっとぐらい、いいじゃないの。ほら、貸してごらん。」
いま、渡してしまったら、きっと、もう戻ってこない。
・・・・・そう、強く思った。
「いや、 いやだ」
思わず、激しい声で叫んでいた。
見る見るうちに涙が溢れ、すぐに嗚咽となり、
私の泣き声は止まらなくなってしまった。
そんな私の姿を、母も祖母も、呆然とみていた。
結局、何ひとつして、さわらせなかった。
これが、義祖母との唯一の思い出である。
こんな依怙地な子供だったから、
私は、まわりの大人に可愛がられることはなかった。