超世界《ハイパーランド》は、暗くなったのも突然なら、明るくなるのも、それに劣らず突然であった。しだいに明るくなっていくとか、夜明け前の微光とかいうものではない。超空虚のプラチナ的暗黒のなかに、かすかな可視光線をもとめて盲《めし》いてしまいそうになっていたに、突然、一瞬に爆発したように光線が溢れてきたのであった。田園風景の全体が、突如として鮮烈な輝燿《かがやき》のなかへ跳りだしたのである。
イ・サン DVD光がくるとともに、シートンは大声で叫んで立ち上がった。
「わあーッ! 光をみてこんなに嬉しかったことは生まれて以来なかった、たとえ青っぽい妙な光だとしても! ペッグ、君だって眠れなかったんだろう?」
「眠れなかったですって! 二度と眠れるとは信じられないわ。まるで何週間も何週間も眠っていたみたい!」
「長い感じだったろうが、時間はこの世界にいるぼくたちには無意味なんだよ」
二人は水流に沿った狭い水ぎわを足早に歩きだした。長いあいだ、二人は口もきかなかった。と、突然マーガレットが、狂ったように叫んだ。
「ディック、わたし気が狂いそうだわ! もう狂っているんだと思うわ。わたしたち歩いているようだけど、ほんとは、歩いているんじゃないわ! 行けども行けども、どんなに早く歩いても、どこへも着かないじゃないの。永久に、永久にどこへも……」
「しっかり、ペッグ! じっと歯を食いしばるんだ! もちろん、ぼくたち、三次元の意味では、歩いているんじゃない。でもやっぱり、進んでいるんだ。一歩一歩近づいているんだ。ぼくたち、あの飛行船の半分ぐらいのスピードで移動しているんだよ。そう思えば心が明るくなるじゃないか! あんまり細かいことは考えないほうがいい。どうせぼくたちには何も理解できないんだから。ここじゃ、一切難しいことは考えないことにしよう、いくら考えたって一塁へは着けない。しかし、肉体的にはちゃんと着けるんだ! さあ、それでいこう!
時間のことは、ただもうすっぽりと頭から抜くんだ。ぼくたちにとっては、今のこの災難は、たとえ千年も続いたように見えても、本当はぼくたち自身の時間にしたら、数千分の一秒にも当たらない刹那の出来事なんだ。この信念を帽子に貼りつけて、絶対忘れないようにしたまえ。数千分の一秒! 数千分の一秒! と叫んで、ぴちんと指を鳴らして元気づける。わかったね? それに、おかしいのは君じゃない。君のまわりのあらゆるものがおかしいんだ。ほら、ユースタス卿とか言ったアタマのおかしな御仁《ごじん》がぼくに変なことを言ったね、覚えているかい? あれと同じだよ。『ねえ、シートン兄貴、このあたりの連中はわしを外国人と思っているようだが、とんでもないことだよ。外国人ばかりの国のなかで、わし一人が本国人だということ、彼らはわからんのだ』って」