テーマ:映画館で観た映画(8349)
カテゴリ:映画鑑賞記録
"VIER MINUTEN""FOUR MINUTES" 監督、脚本・・・クリス・クラウス 出演・・・モニカ・ブライブトロイ トラウデ・クリューガー ハンナー・ヘルツシュプルング ジェニー・フォン・レーベン スヴェン・ピッピッヒ ミュッツェ リッキー・ミューラー コワルスキー ヤスミン・タバタバイ アイゼ シュテファン・クルト ヴァディム・グロウナ ナディヤ・ウール ・物語序盤・ 殺人犯として刑務所に収監されたばかりのジェニー・フォン・レーベン。 ある朝、目覚めると、枕元で同室の囚人が縊死していた。 ジェニーはぶら下がっている死体のポケットを探り、煙草をくすねて一服。 死んだ囚人とつるんでいた女は、ジェニーに喧嘩を売る。 一方、刑務所で長年ピアノ教師として働いているトラウデ・クリューガー。 だが、生徒は看守を含めてたったの4人で、その中の一人は自殺。 刑務所長はピアノレッスンの続行に難色を示しており、トラウデも長く無償で働き続けているのが現状だった。 縊死した囚人の葬儀の際、教会のパイプオルガンを演奏するトラウデは、机の上で演奏に合わせて鍵盤を弾く仕種をしている若い娘を見付ける。 トラウデは彼女に素質を感じ、ピアノレッスンに参加させようとする。 しかし彼女の手は傷だらけ、風呂にも入らず不潔極まりない。 潔癖なトラウデは、レッスンを中止して、看守に彼女を追い返すよう命ずる。 これにキレたジェニーは、看守に暴行を働き、瀕死の重傷を負わせる。 ジェニーはかつて、天才ピアニストとして、将来を嘱望されていた少女だった。 しかしコンクール出場を強要する義父に反抗した途端、彼は12歳だったジェニーをレイプするように…。 自暴自棄になり、転落の人生を歩んだジェニーは、全てに心を閉ざし、内なる怒りを抑え切れずに、衝動的に暴力を振るう札付きのワルに変貌したのだった。 トラウデは良き人間には出来ないが、良きピアニストには出来ると、所長らを説得して、ジェニーの特別レッスンを提案。 トラウマはあれど、ピアノを愛するジェニーも、トラウデの指導を受ける事を承諾する。 音楽に対する考え方は異なっていたが、ジェニーとトラウデは、徐々に打ち解けてゆく。 しかし敵の多いジェニーの前には、多くの困難が立ち塞がっていた…。 ★このレビューは完全にネタバレです。未見の方はご注意下さい。 上映終了日に、漸く鑑賞。とても観たい作品だったので、ノルマを果たせて、ほっとしました。 主演は新人ハンナー・ヘルツシュプルング。 決して美人でない所が、リアリティーがあって良いです。 対する老教師には、ベテラン女優モニカ・ブライブトロイ。 この人、オジサンに見えるんですけど…。汗。 帰りに思わず、サントラCDを買いそうになりましたわ。 魂を揺さぶるような、物凄い演奏。 全身にガンガン響いて来て、興奮しましたね。 とても痛々しく救われないエピソードが満載なのですが、それでも最後には孤高なる栄光を感じました。 無理を押して、観に行った甲斐がありました。 評判通りの秀作、見応え十分な一本でした。 一番最初に思った事。ごっついフィルム痛んでるなぁー。 どんだけ使い回されて、日本にやってきたのやら。 冒頭から、ちょっとショッキング。 枕元でぶら下がってます。首吊り死体が。 そんな事など、全く意に介さない少女は、何か死体が使える物を持っていないか物色し、くすねた煙草で一服。 このシーンのみで、この少女ジェニー・フォン・レーベンの心が、どれだけ退廃し荒んでいるかが判ります。 誰が死のうが、孤立しようが一切関心も無ければ関係も無い。 彼女が興味を示すのはピアノのみ。 だが頑なに心を閉ざすジェニーは、彼女に音楽の素養を見た教師トラウデ・クリューガーにも反抗し、刑務官を半殺しの目に遭わせる。 ジェニーの抱える闇は、他人が容易に踏み込める程、浅くはない。 常しえに続く漆黒の闇…。 家柄の良い裕福な家庭に、養女として引き取られ、ピアノの練習とコンクール出場に明け暮れていた思春期。 しかし義父は幼い彼女に性的虐待を繰り返し、逃れるように付き合いだした恋人は殺人を犯す。 彼への愛故に、無実の罪を被り、殺人犯の汚名を着るジェニー。 男は彼女を捨て、身籠っていた胎児は刑務所の杜撰な対応で死産してしまった。 それ以来、彼女には何の希望も無い。 あるのは出口の無い暗闇だけ。 一方、彼女のピアノの才能を惜しむ老教師クリューガーもまた、他人には口外できぬ重い過去を背負う人物。 ジェニーの自由奔放な演奏を低俗だと一蹴し、古典音楽の美にのみ固執する厳格な彼女。 だが、その異様な厳格さは、彼女の臆病さの裏返しでもあった。 第二次世界大戦中のドイツで、若いながらも既に優秀な演奏者として認められていたクリューガー。 彼女には誰より親しい女友達が居た。それは恋と呼べる感情を抱く相手。 しかし彼女は、反ナチズムの思想を持つ女性だった。 ナチに捕らえられ、処刑の日を待つ彼女。 クリューガーは彼女との関係を詰問され、ただピアノを教えていただけだと答えてしまった。 互いに心の暗闇を抱えるジェニーとトラウデだが、打ち解け合う事は困難だった。 少し近付いたと思えば反発。 何度も衝突を繰り返しながらも、ピアノという共通項が二人の絆となる。 トラウデの手配で、刑務所から脱走し、ピアノコンクールに出場するジェニー。 全ての蟠りを捨て、許された四分間の演奏に全ての魂を注ぎ込む。 既に警察はホールを取り囲んでいる。 型破りな演奏に度肝を抜かれ、茫然としていた観客も、割れんばかりの拍手と歓声を送る。 取り押さえられ、囚われの身となりつつも、ジェニーの顔には誇りが満ち溢れていた。 誰も傷付ける事の出来ない威厳を湛えた、神々しいまでに輝かしい結末である。 ↑ランキング参加中。ぷちっとクリックして下さると嬉しいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Jan 14, 2008 10:27:57 PM
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