カテゴリ:高速路線バス
新宿高速バスターミナル(通称:西口)でのアルバイト時代の記憶として、一番印象に残っているのが、出発するバスを見送る際の、われわれスタッフの挨拶だ。
当時、私は主に「立合」業務を行なっていた。次々と入線を繰り返す高速バスを適切なバースへ誘導し、座席表を乗務員に渡し乗客を誘導して乗車改札をする。出発時刻が来ると無線や放送で出発指示を確認して、乗務員には「発車お願いします。お気をつけて」と声をかける。ドアが閉まってバスが出発する。 その出発するバスに向かって、というよりは乗務員に向かって「挙手の礼」をするのがわれわれアルバイトの習慣だった。電車の駅でも、動き出した電車の車掌とホーム上の駅員が挙手を交わす、あのイメージである。 だが、私はそれに違和感を感じていた。これから乗客の命を預かり長距離を走る乗務員に「お気をつけて」という意味を籠めて挨拶をすること自体は悪いことだとは思わない。しかしその乗務員の後ろには40人からのお客様が乗っていて、少なくとも進行方向左側「A席」におかけのお客様は、みな私達を見ているのである。しかし、先輩達は乗務員に挨拶してもお客様には知らんふりである。 ある日、私はバスに向かって頭を下げるようにした。乗務員に向かっては「お気をつけて」、お客様に対しては「ご利用いただきありがとうございます。行ってらっしゃいませ」心のなかでそう言いながら、全長12Mのバス車体が自分の前を完全に通り過ぎるまで頭を下げ続けるようにしたのだ。 そのとき、私は確信したのを覚えている。高速バスという輸送モードは、価格の安さや快適性など、商品力では十分な競争力がある。あとはきっちりと、事業者側が「お客様の方を向いて」仕事をすればもっともっと成長できる。 「お客様の方を向く」とは、ターミナルや予約センターのスタッフ、それに乗務員が一人ひとりのお客様にきっちりとした接客をするというのが一点。それから、事業者(バス会社)が、消費者に対してそのニーズを把握したり自らの商品の魅力を消費者に伝えたり…すなわち、ちゃんとした「マーケティング」を行なうことである。 いま私は「インターネット」というマーケティング史上最強の武器を預かる立場である。この武器をうまく使えば、高速バス※はまだまだ成長する。その確信は、学生時代に西口でバスに頭を下げ始めたときに感じた確信よりも、何倍も強固であることは言うまでもない。 ※ここで言う「高速バス」に、高速路線バスや高速ツアーバスといった業態の差は関係ない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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