『我が儘ドラゴン』『我が儘ドラゴン』それは、まだ生王が鬼ヶ島に囚われの身であった頃の話。 いつものように生王が道場の床を雑巾掛けしていると、いつものように漢達が集い、いつものように鬼の稽古が始まろうとしていた。 しかし、一つだけいつもと違う事が有った。 それは・・・・・・・・・、 「ドラゴン先輩!いい加減に稽古始めましょうよ!!塾長に怒られますよ!」 「なに言うてんねん、沖田!塾長は用事が有って、今日は来られへんて連絡有ったやないか!」 「だから、『ドラゴン君に稽古を頼むよう伝えてくれ』、って塾長が仰っていたと、さっき伝えたじゃないですか?!先輩にちゃんとやって貰わないと、塾長から伝言を受けた僕の信用が・・・!」 「ダルイから、今日は稽古やめ!」 「塾長に言い付けますよ。」 「さあ、稽古始めよか!沖田!なにボケ~っとしとんねん!さっさと並ばんか!」 「ホンマに、このオッサンだけは、付き合いきれんわ………。」 「なんか、言うたか?」 「押忍!稽古始めましょう!」 「しかし、今日は道場生少ないのお!ワシ等の他は、少年部だけか?」 「押忍!皆さん、社会人として活躍されている方ばかりですから、なかなか全員は集まれないですね。」 「まあ、仕事もせんで一日中、ブログしとるような窓際部長は、おらんからのお!」 「アレは完璧に背任罪ですからね!」 「まあええわ、人数合わせに、そこの掃除夫に稽古させよか。」 いきなり話を振られて、狼狽する生王。 「わ、わ、わ、私ですか?いや、あの、その、え~と、ご遠慮しときま・・・、ぐげっ!!」 「なに、ごちゃごちゃ言うてんねん!やれっちゅうたらやらんかい!!」 「先輩、なにもいきなり、中立ち一本拳で人中を突かなくても良いんじゃないですか?死にますよ、普通。」 「シャレや、シャレ!シャレで死ぬヤツなんかおらんわ。」 「アンタはシャレでも、こっちはたまらんわ・・・・、ブツブツブツブツ、例のブツ。」 「なに訳のわからん事呟いてるんや?とっとと、着替えて並べ!」 道場に置いてあった予備の道着を着て青帯を締める生王。 顔には、どうして俺が?という不満が浮き彫りにされていた。 その時、道場の入口から、二人の男が現れた。 「押忍!遅くなりました!」 「押忍!失礼します。」 一日の仕事をバリバリこなしてきた企業戦士達が、拳士としての腕を磨くべく、羅漢塾に馳せ参じたのである。 「お!今日は珍しいヤツが稽古に参加しとるのお。」 「これは、しごいてやらんといかんな。」 これを聞いていた生王、顔面蒼白になりました。 「あ、あ、あ、あのう、皆さん来られたようですので、ボクはもう良いですよね?」 そのまま、出て行こうとする生王の両脇を、早くも着替え終わった塾生達が正面からガッシと捕まえた。 「おいおい、なにも取って食おうっていう訳とちゃうやろ?」 「お前を稽古に参加させると言うことは一人前の拳士として認めたっちゅうことや。」 「お前の中に眠る才能は俺らを凌ぐかもしれんと龍和尚、いやドラゴン先輩も言うてたぞ。」 「男なら強くなって、見返してみせんかい!」 流石は百戦錬磨の企業戦士達! 有ること無いこと、吹き込んで、生王をその気にさせてしまいました! 「そうか!俺にそんな才能が!!うわはははは!!見てろよドラゴンめ!!!」 この様子を呆れたように眺めていた沖田は、とりあえず、稽古を始めるべく先輩達に声を掛けた。 「押忍!先輩、そろそろ始めますので、ソレはほっといて準備をお願いします。」 「沖田、お前は真面目やのお。」 「まあええわ、ちゃっちゃと並らぼか。」 2匹の鬼が立ち去った後、生王は救い主に向かって礼を言った。 「有り難うございます、沖田さん。あなたは命の恩人です!!」 「そんな、大層なことは無いですよ。そろそろ稽古が始まるので行きましょう。」 「へ?私も行くんですか?」 「当然です!あなたに秘められた才能を見せて貰いますよ!!」 沖田総司、優秀なビジネスマンでも有る彼だったが、人の言うことを素直に信じすぎると言う欠点があった。 「そうや!俺には秘められた才能が有るんやった!良いでしょう沖田さん。私のパンチを受けてみなさい!かっかっかっか!」 生王・・・・・・・・・・・・・・・・、掛ける言葉が見当たらないぞ。 作者の心配を余所に稽古が始まった。 小説『沖田総司 見参!!』 に続く ジャンル別一覧
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