第14話 病院にて第14話 病院にて「誰もいませんね。」 「ここはネルフ本部内の医療施設だからね~、一般の人は入院してないのよ。」 シンジはミサトに付き添われて病院の中を散歩していた。 あれから1週間、すっかり元気になった、というよりも、始めから怪我一つ無いシンジは、いまだにこの病院に留まっていた。 何故、まだここにいるのかと言うと、 「気にしないでね。ただの検査入院だから。いきなり、あんな目にあったんだから、体にどんな影響が出るか予想もできないでしょ?今、充分に検査しておかないと後で困ることになるかもしれないから念のためにしていることなのよ。」 と、ミサトから紹介された女性、赤木リツコに言われて、それもそうかと思いつつ、1週間経ってしまったというわけである。 「葛城さんに案内してもらわなくても、もう一人で部屋まで戻れますよ。」 「そんなつれないこと言っちゃって~! あ、わかった、またレイの所に行くんでしょ? もう、シンジ君ったら、レイに一目惚れしちゃったのよね~。 あ~あ、こんな美人のお姉さんが近くにいるって言うのに! やっぱり若い娘の方が良いのかなあ。」 最初の頃こそ、顔を真っ赤にさせてしどろもどろに弁解しては、ミサトを喜ばせていたシンジも、こう毎日毎日同じネタでからかわれては、もはや、相手にする気も起きない。 「シンジ君、ほんっとにレイのことが好きなのね!毎日毎日、お見舞いに行くんだもんね!」 それに、毎日毎日ついてきてるのはいったい誰だ?と胸の奥で突っ込みながらも黙って歩くシンジ。 実際シンジは、この綾波レイという少女に強い関心を持っていた。 2度目に目覚めた後、ミサトに連れられて見舞いに行った病室で、初めてはっきりと目にした少女の姿は、第3新東京市に着いたその日に幻のように現れて、そして消えていった少女そのものだった。 新世紀エヴァンゲリオン オリジナルサウンドトラック II 「あのときはエヴァに乗った途端に、気を失っちゃったからなあ。」 この少女を一度は腕に抱いたのだ。 あの時はまったくと言って良いほど、ゆとりが無かったため、記憶を辿っても現実感に欠ける。 「やあ、綾波さん。具合はどう?」 病室に入りながら声をかけても、相変わらずなんの返事もない。 ミサトは、「ちょっち、変わってる娘なのよ」の一言で済ませていたが、シンジには納得できない。 人がどんな目にあえば、こんな風に心を閉ざしてしまうのか、自分になら分かる。 でも、どうしてあげれば良いのかは、まだ自分には分からない。 ただ、毎日、お見舞いに行くことしか出来ないシンジであった。 続く ジャンル別一覧
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