赤い蝶赤い蝶 望美は、異世界に来てからあわただしい日々を送っていたが、 ここ、熊野に来てから少しだけのんびりすることが出来ている。 それは、龍神温泉に着いた時、朔の具合が悪いことや、望美の疲労が酷いと判断した九郎が、 望美の温泉で休みたいという願いを聞き入れたからだった。 そして、今、望美と朔は、のんびりと露天風呂に浸かっている。 「あ~~こんなにのんびりしたの久し振りだよね。 朔、少しは具合良くなった?」 「ふふ・・・もう大丈夫よ。 ありがとう、私に気を遣って九郎殿に言ってくれたんでしょう。」 「違うよ!!私も疲れていたし・・・それに、たまには、ちゃんとお風呂に入って、 ゆったりしたかったんだよ。」 「そう、でも、ありがとう。」 それから、しばらく望美と朔は、取り留めのない話をしていたが、 朔が急に望美がビックリするようなことを言い出した。 「そう言えば望美、最近、気になっている人がいるんじゃないの?」 「えっ・・・・・・それって・・・朔の思い過ごしだよ。」 望美は、かなり動揺していたが、必死に誤魔化そうとしていた。 「望美は、ウソが下手ね。何かいいことがあったんでしょ。 最近、とてもご機嫌だもの。」 朔の言ことは確信を突いていたようだった。 望美には、最近、少し気になっている人が・・・・・・いた。 温泉に入ってリラックスしていたせいか、そのうち望美は、朔に心の内をポツリポツリと話始める。 ある人が、普段の生活の中で自分のことを気遣ってくれていて、そのことを嬉しく感じていることや、 戦いの最中、身の危険を顧みないで庇ってくれて嬉しいけど、その反面、そのことが心配なことなど・・・ 「ふうん、そんな事があったんだ・・・・・・で、望美はどう思ったの?」 「私?みんな大好きだなって。」 「みんな・・・ね・・・横並びなの? 望美が一番気になっている人は誰なの?」 「ええ・・・・・・」 などと女性同士の話が盛り上がっている時に、露天風呂の板塀越しに男性陣が 聞き耳を立てていたことなど、まったく想像していなかった。 「一番って、そうだな・・・強いていうなら・・・・・・」 望美は、朔を手招きすると、その耳に顔を近づけて、ある名前を告げた。 その名前を聞いた朔は、 「ええ!!・・・望美の気になっている人って、その人だった?意外と言えば意外かも。」 「だから、強いて言うならばよ。深い意味は・・・ないんだから・・・ね。」 「ふふふ・・・分かったわ、その人のことが気になっているのね。」 「もう~朔・・・からかわないでよ~~~。」 「はいはい、ごめんなさいね。」 意外そうな顔をしながらも、朔はとても楽しそうだった。 そして、板塀越しの男性陣が微かに漏れ聞こえた名前に、名指しされた本人も そうでないものも内心穏やかでないことなど、考えもつかないことだった。 望美と朔の二人で外に出ると、八葉たちが待っていたので、一緒に宿に戻った。 夕食が終わり、みんな各々の部屋に戻って、久し振りにくつろいだ時間を送っていた。 望美も部屋から出て、廊下にある柱に寄りかかるように座って、月を見ている。 こんなに穏やかな時を過ごすのは、本当に久し振りのことで、いつの間にかウトウトし始めていた。 望美は、とても穏やかな気持ちで、辺り一面、綺麗な花が咲いている場所に立っている。 しばらく綺麗な花たちに見惚れていたが、不意に望美の目の前を綺麗な赤い蝶が横切った。 望美は、何故かその蝶をもっと見ていたくて、その後を追う。 するとその蝶がピンクの花にとまったので、望美もその近くに腰を下ろすと、 赤い蝶が望美の方に近寄るように飛んできた。 そして、一瞬、首筋に熱を感じ、気が付くとその蝶は、望美の・・・・・・ 首筋の右側にとまった 首筋の左側にとまった 驚いて目を閉じた瞼にとまった 額にとまった 胸にとまった 頬にとまった 髪にとまった 唇にとまった 首にとまった 耳元にとまった 指先にとまった 鼻のあたまにとまった 「遙とき3のお部屋」に戻る . 解答編 ジャンル別一覧
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