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SOUTH HILL RX3

突然:Fate SS(絵なし)

(緑のタイトルバーをCLICKすると各ページに飛びます) 編集・管理:南丘蒼梧 HP「SOUTH HILL」 

・「ひぐらしのく頃に」(漫画・小説・イラスト)『macoji arcive』(作:macojiさん)
・Fateオリジナルショートストーリー(小説)3「普遍絵画(仮)」須田 伸;作

・「ひぐらしのく頃に」絵 ・「ひぐらしのく頃に」絵2 ・「ひぐらしのく頃に」ONE DAY

・「ひぐらしのく頃に」SS(小話0)「バレンタイン編」
・「ひぐらしのく頃に」外伝(小説)「祟殺し編」AFTER」
・「ひぐらしのく頃に」SS(小話1)「Heart on FIRE」
・「ひぐらしのく頃に」SS(小話2)「勝利への方程式」
・「ひぐらしのく頃に」SS(小話3)「AKASAKA THE HERO」
・「ひぐらしのく頃に」SS(小話4)「前原圭一ワンマンショー」
・「ひぐらしのく頃に」SS(小話5)『リサさん』
・「ひぐらしのく頃に」SS(小話6)「YAH! YAH! YAH!」
・「ひぐらしのく頃に」SS(小話7)「園崎年代記」
・「ひぐらしのく頃に」SS(小話8)「正しいバットの使い方」
・「ひぐらしのく頃に」SS(小話9)「KID CUTS」
・「ひぐらしのく頃に」SS(小話10)「WIND BLOOM」
・「ひぐらしのく頃に」SS(小話11)「北条悟史の3年間」

・「発売直前『皆殺し編』を一部先取り紹介!」(テキストのみ)電撃Gマガ 2006年2月号 
・「竜騎士07氏 直撃インタビュー『皆殺し編』」電撃G's magagine 2006年1月号

・「TYPE-MOON」絵 ・「TYPE-MOON」キャラ身体DATA ・「ほか」絵  
・電脳絵本「天使の憂鬱」企画書 

・「月姫」 Short Story(小説)「Project Arga No.2」
・「Fate/hollow ataraxia」 SS(小説)突然:「サドンデス (SUDDEN DEATH) 
・「Fate/hollow ataraxia」 SS2(小説)「RIDE ON ~セイバー馬に乗る」
・「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」SS(小話)『ラクス ボール』
・南丘オリジナルSS(小話)『盗 ~NEXT DISH~』

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突然:「Fate/hollow ataraxia」 Short Story

サドンデス (SUDDEN DEATH)

チュンチュンと囀る声で覚醒したが、まだ瞳は閉じている(いや、瞼か)。
この四季に富む国では割とポピュラーな存在の「雀」と言う名前らしい。
数日前、夕食に焼いたものを食した。
小鳥だけに骨抜きに苦労したと”アノ男”は零していた。

季節は冬。しかし、この極東の島国は
”私”バゼット・フラガ・マクレミッツの本来の活動拠点である欧州に比べ、
緯度は低く、寒気も生温いものに感じられた。
”アノ男”の説明によると今年は暖冬だということであった。
午前7時。ようやく遅い朝の日差しが重い瞼を抉じ開けてくれた。
隣室から何やら音が聞こえる。

トントンと俎板を叩く何かを刻む規則正しい包丁音。
ジュッと言う焼成音に伴う香ばしい匂いに、
コトコトと煮沸されるスープらしき物から、
実に芳しい薫りが鼻孔をくすぐればくすぐるほど、
”私”の不満は頂点に達した。

ガバッと毛布をはぐり、スクッと立ち上がる。
バスルームに向かいながら、パジャマ代わりに着ていたTシャツを脱ぎ捨て、
ショーツを脱ぎ、扉を閉める。

すかさず、ボディーソープで髪から全身を一気に泡立て、
シャワーで洗い流した。

先日、街を探索した折、姿を消した”アノ男”にアレコレ言われて、
色々買ったが、シャンプーだの、リンスだの、同じ洗う用途のものだ、
何故分ける必要がある? 資金に困っているわけではないが、
買ったのは”私”。使うのも”私”。そして使わない自由もあるはずだ。
ソレがせめてもの、ささやかな抵抗だ。

大体、残り香を戦場に持ち込む愚を犯して何となるのだ。
ついでに香水…何とかいう花の名前がついたフレグランスも買わされたが、
少しためらったものの、当然未開封、使用しない。

アルスター神話に謡われる戦上手、
こと槍術に関しては右に出ることのない鬼神が、
遥か未来の小国の事情に精通しているのも可笑しな話だ。

しかしサーヴァント(英雄霊)たる者、現出時に脳内に活動拠点の
風俗・一般常識等を叩き込ま(インプっトさ)れるらしい。

だが、その世間の物差しとやらで
魔術師の有り様を指摘されては堪ったものではない。

キュと蛇口を閉め、バスタオルで身体を拭きながらベッドルームに向かう。下着を身につけ、買ったばかりのYシャツを羽織り、
パンツ(ズボン)を履き、手ぐしで髪を整えながら、
鏡を見つめつつネクタイを絞める。

そして、クリーニング仕立ての背広に袖を通し、いざ出陣。
(この間、10分)

ダンダンダンと床を踏み鳴らし、ガチャと扉を開ける。

「ラ・ン・サ・ァー・・・!」

おたまから注いだ小皿の一滴を啜り、
「フム、上出来」と得心の言った感想を漏らした蒼髪の長身の”男”は
振り向き様、不敵に笑い、開口一番こう言い放った。

「よう、寝ぼすけマスター、お早いお目覚めで。
ちょうど朝飯が出来たところだ。さっ、座んな」

そう、言うや否や、”私”に近づき、
さっと肩に手を回して、テーブルにエスコート。
椅子を引かれ座らされる。

そして、瞬く間にナプキンが敷かれナイフ・フォーク、皿が並べられ、
湯気立つ料理が盛り付けられる。

プレーンオムレツに海鮮シーフード・パスタといったところか。

焼かれたブレッド(パン)を千切り、バターを塗りながら不満をぶつける。

バゼット
「ランサー、私はハウスメイド(家政夫)を召喚した覚えはないです。
貴方にこのような家事雑務をさせるつもりはありません。」

ランサー
「まー、そー言うなって、
覚えたことは試してみたくなるってのが人情ってことで勘弁・・・な。
それに、お前さんの軍隊然とした3食缶詰の貧しい食生活を見ていたら、
ついついお節介が焼きたくなってな。
山ん中や飢餓で苦しんでる訳でもない、
この何でも有り余ってる飽食の黄金の国ジパングを
満喫するのも悪くないと思うぜ。で、味はどーよ」

バゼット「・・・ まずくはないです」

ランサー
「・・・ま、お前さんの食べっぷり見てれば、感想は聞くまでもないが、
もう少し、落ち着いて味わって食べてもらえないもんかね・・・
そもそも、バゼット。アンタには、ゆとりがない。
もう少し、肩の力を抜け。
今日、会うと言う男にも、ビジネスライクじゃ愛想付かされるぞ。
折角の久々の再会なんだろ。
あんたが珍しくボディーソープなんてもの香らせてるもんな。
どれ、一つお手伝い」

言うや否や、立ち上がり、壁をすり抜け別室に消え、
次に現れた時には、タオルとドライヤーと櫛(ブラシ)が持たれていた。

そして、背中に回りこまれ、タオルで頭部を包まれ、
ワシワシと揉みしだかれる。
さらにドライヤーの熱風が残った水気を帯びた髪や皮膚を乾かしていく。

”私”が幼き日々から夢見、憧れてきたケルトの英雄:光の皇子クーフーリン
というよりも、”妹”思いのヤンチャな”兄”、ハシバミの少年そのものだった。

文句を言いたいことは山ほどあったが、
癪ながら好結果に辿り着いているのも事実である。

いつの間にか、ドライヤーの音がやみ、髪をすかれ、
目の前には湯気を立てた珈琲が注がれていた。

ランサー
「冷めるぜ。その泥のように苦味ぱしったBLACK COFFEEで眼覚ましな」

”彼”曰く、「この(マウント深山)商店街は、
こと食品にかけては山海の珍味が唸るように在り、
茶葉に関しても充実している」とのことだが、
インスタントの粉末入り珈琲1瓶購入で黙らせた。

1月23日に召喚した”彼”に”私”の生活は激変させられた。
早7日(1週間)が過ぎ、
8日目(1月31日)の朝を迎えようとしていた。

臨機応変、いつ何が起こるかわからない。
不器用な”私”には、切り替えが難しい。
多分、その時の”私”は「女」の貌をしていたのだろう。

平穏は“突然”、破られた。見知った、旧知の顔が扉を開け、立っていた。ランサーは普段のヘラヘラとした態度を一変し、
一気に臨戦態勢に入ったが、”私”は、ソレを制した。

そして、諦め顔でランサーは別室に壁抜けで消えた。
それを視線で見送り、来訪者に声をかけようとした。

「綺礼・・・」

かつて背中を預けたことのある神父姿の男は、
敵を見るような眼で”私”を射すくめた。
そして、何やら呪文を呟き、黒鍵をリアライズ。おもむろに振りぬいた。

左上腕 肘の上辺りがかつてないほどの”熱さ”を感じた。
何が起こったか分からなかった。

尻餅をついた。左手の”熱さ”の正体を確かめようと視線を下に送る。

・・・なかった。

さらに、あろうことか、見覚えのある黒い”悪意”が
床に墜ちた”私”の血塗れの「左手(肘下)」を拾い上げていた。

その時、「何しやがる!」
と腕を振りかざし怒号を上げた蒼い弾丸が疾駆・突進していく。

あわや衝突というところで、
聞き覚えのある声が”私”の「令呪」を発動させた。

言峰「止まれ。ランサー」

急ブレーキは摩擦熱で木調のフローリングを焦がし、
同時に生じた突風が容赦なく”私”を薙ぎ倒す。

そして、立て続けに耳を疑う無慈悲な宣告(第2の令呪)が
噛み付きそうな”狂犬”に下される。

言峰「我に従え(逆らうな)」

そう言うと、こちらには一瞥もくれず「行くぞ、ランサー」と言い残し、
扉の影に消えた。

蒼い影も付き従おうとするが、両耳のイヤリングを外し、床に転がす。
そして振り返り、「じゃーな。楽しかったぜ」と言い残し、去った。

両者の姿が見えなくなり、足音が聞こえなくなった頃、
一気に喪失感が襲う。

熱さは痛み・激痛に変わっていたが、それを気にしている余裕はない。

(待って・・・返して・・・戻って・・・行かないで)
と口にしたつもりが、声になったのは絶叫であった。

バゼット「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」

全身という穴という穴から発汗し、涙が零れたが、男達は帰ってこなかった。

整理のつかない頭ながら、魔術師の、
いや人間としての生存本能が止血をしようと試みる。
立ち上がることは出来なかった。幸い、上着は脱ぐことが出来たので、
残された右手で何とか患部に押し付け、ベルトで締め上げることが出来た。

しかし、あまりにも処置は遅すぎた。バゼットは出血が激しく、気を失う。

この(1月31日)夜、衛宮士郎は”蒼き槍兵”の紅き槍に刺し貫かれ、
絶命し、遠坂凛に蘇生させられるも、再び”槍兵”の急襲に遭い、
二度目の死を迎える寸前に”白銀の剣士”の召喚に成功し辛くも迎撃する。

翌2月1日午前0時に衛宮士郎が第7のマスターとして認められた時点で
第5次聖杯戦争 執行・監督役の言峰綺礼は開戦を宣言する。

だが、それはバゼットの知るところではない。

2月4日、あれから5日が過ぎ、
2月5日に変わろうとする冬木市の新都郊外のある洋館
(バゼットが接収していた)で異変が起ころうとしていた。

不思議とバゼットは復讐心を持っていなかったことが、
かつて、この夜全ての罪・人間を許した
(しかし、全て等しく滅ぶ必要があると言う結論に達した相違はあったが)
神に等しい存在に気に入られた(興味を持たれた)からである。

1月31日早朝、言峰綺礼に取り憑き来訪し、
そのまま残留し瀕死の彼女を観察していた
「この世全ての悪(アンリ・マユ)」は話しかける。

無論、意識(深層心理)下のことであったが。
黒い影は彼女の髪を無造作に掴み引っ張り上げ、こう問う。

アンリ 「アンタ、生きたいか?」

バゼット「・・・死にたくない」

アンリ 「なら、俺を受け入れな。聖杯戦争を続けよう。」

かくして、終わらない「夜の聖杯戦争」が幕を上げた。(完)



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