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私小説です。

nanachan04の日記 [全14件]

2006.02.28楽天プロフィール Add to Google XML

第13回
[ 回想小説 ]  

私は母と顔を見合わせた。
「お父さん、浩二と話がしたいみたいね」
「俺が二階に行けばいいのか?」と浩二は落ち着いた様子で言った。
「行くの?」
「うん、来いと言ってるから」
と言って浩二は立ち上がった。

私は浩二を、2階の父の書斎に連れて行った。
父は私を見ると「お前は下に降りていなさい」と言った。

私は浩二を残して階下に下りていき、リビングの椅子に再び座った。
家のリビングの椅子は、いつも眠気を誘う。
睡眠薬が塗りこんであるのだろうか、と思うことがあるほど
その椅子に座ると私はたびたび眠りに吸い込まれていく。
その日は、3日間の疲れもあったのだろう
私はいつの間にか、眠っていた。

どれくらい眠ったのだろうか。
起きると、浩二が横に座ってテレビを見ていた。
「父との話はもう終わったの?」
「うん、終わったよ、それより腹減ったな~」
と、浩二は平然と答えた。
父は2階から降りてこない。

母は、簡単な食事を用意してくれた。
すると、浩二は嬉しそうな顔をして
「食べていいんですか、じゃ、いただきま~す」と言うがはやいか
すごい勢いで食べ始めた。
ごはんの3杯目をお代わりするとき
「いそうろう、3杯目はそっと出し」と言っておどけながら
お茶碗を母に渡した。

4杯目になると「4杯目は下から出し」と言って
テーブルの下から出した。
母が可笑しそうに笑うと
「5杯目は後ろから出し、6杯目はぐるりと回って出し」と
ますますおどけながら言った。

父とどんな話をしたかわからないけれど
浩二は呆れた能天気ね、と私は首を振った。



Last updated 2009.09.25 14:54:22
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2006.02.26

第12回

女の気持ちがわからないのか、わかろうとしないのか
浩二は私のブルーな気持ちをいつも気にもとめないふうだった。

私は生真面目で実直な性格で、それと対照的な浩二の破天荒な態度に
たびたびうんざりして、抑うつ的な気分にさせられた。
全く無言状態になることも多かった。

でも、そんな状況が長く続くと、私はそんな自分がバカバカしくなってきて
浩二の楽天性に適度に合わせるようになってきた。
人間って、付き合う人によって変わるものなんだな、と思った。
というより、変わらなければやっていけなかったということかもしれない。

4日ぶりに見る実家の玄関。
いつもと変わりなく、ほっとするような暖かい光を放っている。
ここはいつでも私を包み込んでくれるシェルターのようなところだった。
でも、私は浩二と関わることによって
それを針の筵に変えてしまったのではないだろうか。

私は「ただいま・・・」と言って玄関の戸を開けた。
浩二も一緒に入ってきた。
バカみたいに動じない男だな、と半ば私は呆れながら思った。
「あっ、ゆうちゃん」母が奥の部屋から出てきた。
母は私の後ろに突っ立っている浩二をちょっと見て会釈をした。
浩二は挨拶するでもなく、立っていた。
母は腑に落ちない表情をしていた。

私が家に入ると、浩二も平然と後からついて上がってくる。
私と浩二はリビングのソファに座った。
母は、お茶をいれて持ってきて
何も言わずに一緒に座ってテレビを見ていた。

そこに、父が入ってきた。
そして、浩二を見ると浩二に向かって
「二階の部屋に来い」と言って部屋を出て行った。



Last updated 2006.02.26 16:06:16
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2006.02.24

第11回

私は急いで浩二のアパートを出た。

浩二は私の後を追うように、歩いてくる。
そしてすぐに追いついて、私と並んで歩いた。
二人は駅に向かった。

電車の中でも私は無言だった。
浩二とは何も話すことがないと思った。

しかし浩二は、電車の窓から見える景色のことや
車内の吊り広告のことなど、一人で楽しそうにしゃべっていた。

(この男は私の今の状況を解っていないのだろうか
私について来て、私の家族に会ってどうなるとか考えないのだろうか
3日間も私を閉じ込めて、死ぬほど心配させたことについて
何ともおもっていないのだろうか)
と、私は呆れて、浩二の様子をみた。
霊界から現われた妖怪のような外見の中には
私には理解不能な楽天的な性格が詰め込まれているのだろうか。
私は、耐え難いほどに両親に会うことが恐ろしい。
その原因を作った浩二はもっと恐ろしそうにしていてもいいはずではないか。
でも、浩二は全く意に介さない様子だ。
私と二人で外出していることが楽しくてたまらず
恋人気取りで、浮かれている。

でも、不思議なことにそんな浩二を見ていると
自分まで楽天的になって、度胸がついてきた。
そして、どうなってもいい、という居直りのような気持ちが湧いてきた。
全く理解できない人間から、私は強烈に影響を受けていたのだ。




Last updated 2006.02.24 22:52:58
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2006.02.21

第10回

「待たせたかな」と言いながら、浩二が出てきた。
「少しだけよ」と私は答えながら、ほほえんだ。
「おっ、笑ったね、初めて笑ったね」
私の笑顔をみて、浩二は嬉しそうにした。

「ちょっと、恋人のふりをしようと思って」
「えっ、ふりなのかよ~、もう俺達は恋人どうしじゃないのか?」
私は、すぐには返事ができなかった。
すこし考えて、言った。
「わからない・・・・」

浩二は私の肩に手を回した。
二人は並んで歩いた。
往きと同じように、石鹸箱がカタカタ鳴った。

アパートに戻ると、私はすぐに帰り仕度を始めた。
浩二はそれをしばらく黙って見ていたが
「俺もゆうの家に一緒に行くよ」
と言った。

私は母のことしか頭になかった。
早く帰って母を安心させなくては・・・。
心配のあまり、臥せってしまうかもしれない。
浩二が一緒に私の家に行く意味を考えることもできなかった。
ただ、早く家に帰りたいだけだった。



Last updated 2006.02.22 00:16:24
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2006.02.20

第9回

「うん、わかった、帰るよ、すぐに帰る。
ちょっと、友達の家に泊まってたの、ごめんね、心配かけて。
私は大丈夫だから、もう心配しないでね。元気にしてるから。」
私はそれだけ言って、電話を切った。
電話を切らなければ、そのまま泣き出してしまいそうだった。

電話ボックスを出て、私は浩二に言った。
「家に帰るから、お財布を返して。私のお財布持ってるでしょ」
「アパートに置いてきた」
「じゃあ、持ってるだけでいいから、お金をちょうだい」
浩二は返事をしなかった。
「早く!!」と私は叫んだ。

ちょっと間をおいて
「そんなままで帰るの?風呂に入ってすっきりして帰れば?」
と浩二が答えた。
私は電話ボックスに写っている自分を見た。
髪の毛がボサボサで、薄汚れた自分が写っていた。
確かにこんな姿を両親に見せられない、と思った。

「じゃあ、今から銭湯に行くわ」
私は急いでアパートに向かって走りだした。

「これが石鹸、それからタオル・・・」
浩二は二人分の風呂用品を準備をして、二人は銭湯まで歩いた。
歩くと小さな石鹸がカタカタ鳴った。
(神田川みたい)
銭湯に向かって歩く二人は、「神田川」の恋人のように見えるのかな、と
私は思った。

「早くあがったら待っててよ」
と言って浩二は男湯に入っていった。
私は髪の毛をきれいに洗って、体もすみずみまで洗った。
そして、温かい湯に首まで浸かった。
浩二と私は恋人同士になったのだろうか?と考えた。
でも、私は浩二が憎らしい。愛しているという感情が湧いてこない。
きっと、体だけの関係なんだ・・・。

銭湯の外に出ると、浩二はまだ出ていなかった。
私は12月の寒空に一人で浩二を待った。
乾ききっていない髪が冷えてくる。
洗い髪が、芯まで冷えて~。
やっぱり、これじゃまるきり「神田川」だなと
思いながら、私は恋をしている女のふりをした。



Last updated 2006.02.20 23:29:36
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2006.02.17

第8回
[ 回想小説 ]  

当時は携帯電話などなく、浩二の部屋には電話もなかった。
電話をかけるには、外の公衆電話にまで行くしかなかった。

私は「そうだ、とにかく家に電話しなくちゃ」と思い
そう思うと、いてもたってもいられなくなって、急いで服を着た。

久しぶりに服を着た、と思った。
トイレに行くときも、浩二のシャツをはおって行っていた。
銭湯にも行かず、浩二が私の体を拭いていただけだった。

私は久しぶりの外出がうれしくて、玄関で先に靴を履き
浩二がドアを開けてくれるのを待った。

公衆電話は、浩二のアパートから2,3分の公園の片隅にあった。
私は電話ボックスに入って、浩二からもらった10円玉を電話に入れて
ダイヤルを回した。

「もしもし・・・」母の声が聞こえた。
3日間聞いていないだけなのに、母の声を懐かしく感じた。
「もしもし・・・」と私は小さな声で返事した。

「ゆうちゃん、ゆうちゃんね。
怒ったりしないから、一度帰って来て。
電話切らないで。
お父さんにも、私から言ってあげるから
何も心配しないで、帰っていらっしゃい」
母は優しく話しかけてくる。

母は私に何が起こったのか全く知らない。
3日間、黙って家を空けた娘を大声で怒っても
私はそれを当然のことと受け止めただろう。
母の心配はおそらく極限に達していただろう。
でも、母は私が家に帰りづらくならないように
気を配って話してくれる。

私は、泣き崩れたいのを必死で堪えていた。
私より母の方がもっと辛い思いをしたと思うと
泣き出すことはできなかった。



Last updated 2006.02.17 23:34:36
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2006.02.16

第7回
[ 回想小説 ]  

私は布団の上で裸のまま正座して、ポロポロ涙を流していた。
「そんなに泣くほど、俺のこと好き?」
と浩二は言った。

「母が心配してるだろうと思ったら、涙が止まらない。
黙って家を3日間も空けたことなんてなかったもの。
死ぬほど心配してるわ、きっと・・・」
私は、そう言いながら悲しさが増していった。
私は20歳になるまで、体が弱いこと以外に親を心配させたことがなかった。
無断外泊など、したことがなかった。
それなのに、突然の無断3連泊。
そして、このように淫らなことをしている。
もう、母に顔を合わせられないと思った。

そう考えるとますます悲しくなって、布団に突っ伏して泣き出してしまった。
「泣くなよ、泣くな!」と私に怒鳴りながら、浩二は私を抱き起こした。
でも、私は泣き止むことができなかった。
「母がきっと心配してる。父はきっと怒っている。
私はもう、家に帰れない・・・」
と言いながら泣き続けた。

浩二は口の中でなにかぶつぶつつぶやいていたが、突然
「服を着て」と言った。
「どうするの?」と私は尋ねた。
「公衆電話。おふくろさんに電話しろよ」
と浩二は答えた。



Last updated 2006.02.16 23:55:25
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