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2006年03月25日
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某所で桜坂洋作品の感想/書評リンクがあり、載せてもらったり読ませていただいたりしているわけだが、「10月はSPAMで満ちている」の感想でラノベ読み以外の方々の書評もたくさん見れるようになり、一つ気づいたことがある。

桜坂作品は、ものすごく人を選ぶ、と。

そんなことも気づかなかったのかというと気づかなかったわけだ。モロにストライクゾーンだったから。
とにかく書評感想見回ってみると「やっぱり面白い・七つの黒い夢の中では一番の出来・嘉穂タソハァハァ」という肯定派と「コレ誰?何コレ?何言いたいの?・七つの黒い夢の中では最低の出来・萌えキャラいらない」という否定派に分かりやすすぎるほど分かれていて面白い。

デビュー作「よくわかる現代魔法」も人によって評価が全く分かれ、「スラムオンライン」も同様。評価が安定しているのは「ALL YOU NEED IS KILL」だけのようだ。
まあ実際長編文庫本として出ているのは以上の三作品だけで、その中で一番とっつきやすいのはALL YOU NEED IS KILLだけど。
しかし戦争モノでSF要素高しという普通それだけで人を退かせる内容の作品が、一番とっつきやすいんだからその時点でアレだよなぁ……。

肯定評価している人にさえもよく言われるのが「コンピュータ用語を多用しすぎ。してもいいが、まともに説明してくれ」という意見。
特に現代魔法は用語説明してくれないとどうしようもない。何が起こっているのか、なんで解決したのかすら理解するのに一苦労する。
まあ私は「コンピュータ関連のアレやコレやは作品のスパイスであり、根本的な話は人間の成長ドラマなので気にしない。後で自分で調べて納得する」という完全信者思考に入っているのですが。

ラノベ作家はどうでもいいこと、行間に潜ませておくべきことを語りすぎ、説明しすぎ、肝心なところを語っていないという方が多いので、個人的には桜坂洋のように「投げっぱなし・本が他作家に比べ薄い・内容は濃い」という作家もいてもいいと思うんですがね。
現代魔法一巻の「駅に着くまで、こよみは、三回転んだ」は名文だと思いますよ。
このたった一文に、すがった希望が潰えた失望感、脱却できない自分の欠点、どうしようもなさが滲み出ていて読んだ時感動しましたよ。

まあラノベから一般へシフトしつつありますが。
何考えてんだかわかんないので普通にラノベもそのうちふらっと書きそうですが。現代魔法以外でも。

桜坂作品は(ほとんど長編しか読んでませんが)今のところすべからく良質な少年少女の「壁を乗り越える」成長ドラマだと私は思っているわけです。
現代魔法シリーズは1巻でこよみの何をやってもダメだという自分へのコンプレックスの克服から始まり、燃え尽き症候群少年、引きこもり少女などの爽やかな成長譚。
スラムオンラインでは現代の青少年ならではの、アイデンティティの確立。
ALL YOU NEED IS KILLはたぶん、大人になろうとして大人になったけど、だからこそ大人に頼れなくなってしまった、という話かと。ちょっと自信ないですけど。
各作品の主人公に、幼少時なんらかのトラウマがあったりする、というのはスラムオンラインの感想で述べましたが、「幼少時(過去)→作品そのもの(現在)→壁を克服して完結(未来)」という風に繋げやすいからかなぁ、とか。

そういう「壁」をまず前提に持ってくるくせに、読んでてあんまり重荷を感じたり鬱になったりしないのも良い。
ヒロインとガチの殺し合いをしてその手でヒロインをぶっ殺すというALL YOU NEED IS KILLでさえなんだか重くない。
逆に人殺しもしないスラムオンラインが一番重いですよ……主人公本気で一歩間違ったら廃人だし、現代魔法みたいにテンション上げる萌えキャラもいないし……。

ちなみに前述したALL YOU NEED IS KILLの解釈は個人的にこうです。
キリヤ・ケイジ(ループ初期)の各キャラへの意識=ヨナバル→うっとうしいけど和む人生の先輩。フェレウ軍曹→頼りになるオヤジ。レイチェル→食堂の美人のおねーちゃん。リタ・ヴラタスキ→人類最強の戦士
と、基本的に全キャラに対し目下的な視点でいます(実際年齢的、階級的に下ですが)。
しかしループを重ねるにつれ、無感動に、ドライに、そして機械的に強くなりだすとこうなります。
ループ終盤の各キャラへの意識=ヨナバル→使えない一般兵そのいち。友人。フェレウ軍曹→唯一使える兵隊。師匠。レイチェル→一般人。リタ・ヴラタスキ→人類最強の少女。
精神的、立場的に依存できるキャラはことごとく死亡するか、絶好されるかです。まともに残っているのはフェレウ軍曹くらいなもんです。
物語が始まった時のキリヤ・ケイジは誰に寄りかかっても文句はなく、仕方ねぇな初年兵だからで済みましたが、終わった時には立場的にも実力でもキリヤ・ケイジの方が上。軍曹さえも、あの後どう考えたってキリヤ・ケイジの方が階級上になっちゃうでしょう。
そしてキリヤ・ケイジこそが人類最強の戦士。人類全ての希望の星として、たった一人で戦い続けなければなりません。
「ループする戦場」という「クソったれな日常」から這い出ようと実力を付けたら、「クソったれな日常」でしかなかった安息の地が失われてしまったわけで。
これは「子供はあれもこれも禁止されて下らない。大人になったらなんでもできるのに」と思って頑張って勉学に励みバイトして金をため「なんでもできる大人」になろうとしたら、責任や仕事をたくさん抱え込んで身動きが取れず、金も権利もなかった子供の頃が一番なんでもできたなぁ、というよくある話の変形なんじゃなかろうか、と。





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最終更新日  2006年03月26日 01時14分24秒


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