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長押 綴

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2011.05.08
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カテゴリ:.1次メモ
 彼は勇者だった。
 魔王を倒した英雄だった。
 聖なる祠で、守り人たちから渡された魔剣の使い手だった。
 彼の持つ魔剣は、その剣の為に死んだ者の力を全て吸い取るものだった。

 彼は魔王を倒す為にいくつもの街を巡り、いくつもの強力なモンスターを倒してきた。
 それでもまだ足りなかった。魔王には勝てず、命からがら逃げかえった。
 じきにモンスターは目減りして、暗い洞窟の奥に引き籠る魔王がひたすら人間界に災害を起こし続けるだけとなった。
 彼は禁忌を破ることにした。
 最初は志願者を。
 次に罪人を。
 そして奴隷を。
 国にとって不都合な人々を。

 彼の持つ魔剣には、たくさんの怨念と憎悪とぎらぎらとした悲願が染みついた。
 だからだろうか。
 遂に彼が魔王を倒した時、それらは全て彼に逆流した。
 彼は、仲間に自分を石にしてくれと頼んだ。恒久的に、自分が魔王となることのないように。
 剣を肩と頭で抱えうずくまる石の彫像となった彼は、長い年月を経て細かい部分を削り取られ、剣の粗雑な台座となった。
 そこに祠が築かれた。
 血を吸えず少しずつ衰えていく魔剣は、次にまた世界の危機が来るまで、眠り続ける。





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最終更新日  2016.11.04 23:57:31
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