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長押 綴

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2011.08.04
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カテゴリ:.1次メモ
私は彼女が嫌いだった。

ただの子供のくせに、周囲の関心と同情を集める彼女が。

だから奪った。
彼女にできる彼氏なら、彼女に優しくできる人ならば、私に対しても彼氏になってくれるだろうと。


そうしてその目的は達成した。

独りも味方のいなくなった彼女の前で私は高笑いをしてみせた。

けれどそんな私を一瞥して彼女は言った。言いやがった。

「そんな勝手に奪い取れるようなものなら、あんただけじゃなくて他の奴にいつ奪い取られるか分からないってことだよ」

猛烈に、腹が立った。


違う。そんな簡単に奪われたのはお前のせいだ。私はそんなことはない。ありえない。
私はお前と違ってあの人を大事にする。

「ま、あんな奴どうでもいいけど。あんなのを後生大事にしようと思ってるあんたってばかだね」
「負け惜しみもいい加減にしなさいよ」

なんなんだこいつは。どうして、どうして全く動じていないかのようなふるまいを。いや、これはただの建前、でなきゃ誤魔化しだ。

傷付け、傷付け、あの時の私のように傷付いて立ち直れなくて誰かから奪うことに懸命になってしまうような惨めな存在になりやがれ―――

「あんたがどう解釈しようと勝手だけど、あたしの思考回路はあんたの思考回路よりもずっと自分を大事に思うようにできてんのよ。他人に振り回されたりなんかしないの。あんたみたいに、自分がない人間には生まれ変わってもなりたくないわ」
「……っ!!!」

奪う。奪うことが、全てになっていた、というのか。私の。ふざけるなちがうちがうちがう、わたしはわたしは、わたしは、


わたしは?


わたしは、わたしは……





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最終更新日  2015.12.07 00:51:58
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