1444027 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

Laub🍃

Laub🍃

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

フリーページ

カテゴリ

プロフィール

長押 綴

長押 綴

カレンダー

2011.12.02
XML
カテゴリ:.1次メモ
「なんなんだよこの展開…!胸糞わるいだろうが!!」
「ごめんごめんって」
 目の前の奴はにやにや笑いを崩さない。
「もうこんな展開はないんだろうな…?」
「実はあと10個ほどあります」
 俺の剣幕にも動じず、そしてまったく悪びれない。
「もうプレイしないからな」
「そんな後生なぁ~」
 こいつの作るゲーム自体は好きだけど、いかんせん途中途中にある鬱展開がたまらなく合わない。

「俺胸糞展開嫌いなんだよ!!特に自分で動かす系の奴・・・・・・って、あ?」

「守!大丈夫!?」
「……あ、ああ、ごめん……」

 俺を揺さぶり起こしてくれた『ああああ』の、綺麗なピンクの瞳。

 完全に目が覚めた。

「……ここ、どこだっけ…」
「混乱してるの?7つの神殿のクエスト、6つめじゃない」
「……ああ……」
「あと少しで、クリアできるよ。これであの村の人たちに平和が戻るんだ…!」
「……!?」

 ……そうだ。俺は、このゲームの胸糞展開が肌に合わなくてやめたのだ。
 胸糞展開の場所だけ教えるからプレイしてと言われ再度プレイしたが、ゲーマーの顔も三度、さすがに三つ、精神に来る感じの胸糞展開をネタバレなしでやったのはきつかった。
 それ以降はネタも明かしてこられたが、それが更に胸糞だったので、俺はテストプレイなら別の奴に頼め、俺がやるのは別のゲームにしてくれと頼んだのだった。

「な、なあ……」
「?」
「クエスト、クリアしたらさ。……すぐ、7つめに向かわないか…?わざわざ確認しに行く必要なんてないって」
「え、でも、回復したいし……」

 ちらりと見てきたのは、俺の右脚。出血は止まっているが、魔物の毒のせいで痺れて動かないのだ。
「だったら、次の神殿の近くの街でいいだろ…?切羽詰まってるだろうから、あんま治療とかはされないかもだけどちょっとはましだって」

 だって、あの村は俺達がこうして攻略している間を狙って、……滅ぼされてしまうのだから。

 …そんな所を見た『ああああ』は、闇落ちし、魔王サイドに寝返るか、魔族も人間も全て滅ぼすかの二択を選ぶことになるのだった……


 …いや、仲間が居ない状態だったからかもしれないし……でも、俺がどこまでこいつを慰め引き留められるのか分からないし…

 そう思ってうーうー唸っていると、

「……そうだね」

 そういって勇者が、優しく俺の傷跡に口着けてきた。

『HEAL!』
「……そういえば、お前のキスって回復効果あるんだったな…」

 俺の目にだけ見える場違いな青い文字に、今更ながらここがゲームの世界であることを実感する。

「守のキスも回復効果あると思うよ。僕に対して」
「えっおい、ここ、ボス前の回復ポイント……!」
「だからだよ。僕の事、精神的に回復して、強化の魔法かけてよ……」
「……お前、会った時よりなんかおっさんくさくなった?」
「おっさん!?」
「いや、言うことがなんか…」

 言いながらも『ああああ』とキスを交わす。

 これから先『ああああ』が絶望することのないよう。……したとしても、俺の「魔法」が、こいつに届くように、祈りながら。

「は、」
「守、…守」

 ほんとに俺、なんでこんなことしてんだろう。女の子とキスしたこともないのに。
 でも不思議と落ち着くんだ。校舎の隅で親戚の集まりで暗い部屋でずっとゲーム画面を見つめていた時よりも、ずっと。

 俺は、もうとっくに、ゲーム以上にはまっちゃいけないものに、はまってしまったのかもしれない。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2016.11.19 23:10:46
コメント(0) | コメントを書く



© Rakuten Group, Inc.