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長押 綴

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2013.01.15
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カテゴリ:.1次メモ
「……おい、シャツが出てんぞ」
「腕がもげてる奴に言われる台詞じゃないなそれは」


脳の断面



 数日前、リーダー田中が二人に分裂した。
 数日間は「上半身露出していた田中」と「下半身露出していた田中」と呼び分けていたが、
それだと「元下半身の田中」と「元上半身の田中」という呼び分けと紛らわしいので……

 改造され巨大化していた高橋先生に体育座りで掴まれていた下半身露出田中を「照れる田中」、
恥ずかしがり過ぎてショートしている照れ田中と同じく平静を装おうとしているが爆発寸前の高橋先生という二人をしらっとした目で見ていた上半身露出田中、こいつを「クール田中」と呼び分けることにした。



 ……回想を終えて、目の前のやつに向き直る。

「なあ、クール田中」
「なんだ」

 毒に侵された腕の断面を少し切り、佐藤から処方された薬を注入すると、ずりゅんっと音を立て一瞬にして新たな腕が生えてくる。
 人通りが少ない街で良かった。そう思いながら話を続ける。

「お前最近おかしくないか」
「は?」

 怪訝な目で見て来る……いたたまれない、だがこの際言ってしまいたい。
 言い方を考えながら話す。

「なんというか……「お前はどこの母親だ、って思うな」

突っ込み田中に言葉をとられた。

「俺のどこが母親だ」
「さっきのシャツ云々とかだよ。身なりちゃんとしなさいとかやたら食べ方うるさいとことか片付けろってぶつくさ言いつつ片付けてる所とか。この間倒した怪物捌いて料理してる姿は完全にどこぞのオカンだった」

突っ込みのマシンガントークが炸裂する。よく言葉途切れないな。

「はー……?いや、別にそんなの勝手にさせろよ。つーか俺達の母さんは別にシャツがどうとか言わなかったろ」
「まあそうだけど、でもお前今完全に『宿題しなさーい』『今やる所だったっつーの』の母親のほうだ」
「それはうちの場合むしろ姉貴じゃないか」

 色々とうるさかったが、今となっては懐かしい彼女のことを言うと二人が「ああ…」と、嫌そうだが少し懐かしく嬉しそうな顔でうなずく。
 わいのわいの話していると、木鈴がとてとてと歩いてくる。

「どうしたの?おかあさんみたいって…」
「ああ、木鈴も思わないか?最近こいつさあ……」
「……うーん、よく分からないけど、でも面倒見がいい、なーとは思う」

少し困った様子で言う木鈴。……ああ、まずい。
木鈴は出会った日から、全く家族について話そうとしないけれど、地雷を踏んでしまってはいないだろうか……

「じゃあ、お父さんは師匠かな」
「は?」
「あ、確かにそんな感じだな」
「末っ子に甘いんだな」

 途端に話題がこっちにうつってきて戸惑う。
 やめろ、俺はそんな器じゃない。

「ふふ」
「……ったく」


 まあ、でも、いいか。











 海への歩み。どことなく潮の匂いの強くなってきたそれは、今日もそんな、かけがえのない一日だった。




@@@


服は廃屋や潰れた店からどこかの勇者のごとく拝借





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最終更新日  2015.06.17 00:33:56
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