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2011年06月04日

なぜエアコンのリモコンは学習できないのか？

カテゴリ：家電

→関連記事：ソニーから学習リモコン3機種を発売

AV機器の操作には便利で使用している学習リモコンだが、エアコンのリモコンに関しては、プリセットで用意されている以外に、新たに学習できないケースが多い。

何故なのかを考察してみた。

エアコンのリモコンというと、テレビのリモコンと一番違うのは、冷房、暖房などのモードや、設定温度などの表示が、リモコン側にあることだ。

こうしたリモコン操作を、AV機器で一般的な片方向の赤外線リモコンで単純に実現しようとすると、問題が起きるだろう。

リモコンから送った赤外線信号は、必ず機器側で受信されるとは限らない。
例えば、リモコンで温度アップのボタンを押して、リモコン上は1度温度が上がっているのに、本体側で受け取れないと、設定温度は変わらないことになる。
もちろん、エアコン本体は、リモコン信号を受け取れたら「ピッ」という音を出すので、人は信号が伝わったのは分かるのだが、リモコンはそれが分からないため、赤外線信号が本体に伝わらないことが発生すると、エアコンとリモコンの温度設定の乖離を補正できなくなってしまう。

さて、その問題を解決するには、どういった方法がありえるだろうか？
一つは、リモコンを双方向通信が行えるようにして、例えば、本体が温度アップボタンのリモコン信号を受け取れたら、リモコンに対し受信確認の信号を送り、それをリモコンが受けた上で、リモコン上の温度設定を1度上げるようにすればいい。
こうすれば、リモコン表示と、エアコン本体内部の温度設定の食い違いをなくすことができる。
こうした双方向リモコンを採用しているエアコンが、学習不可能であるのは、学習リモコン自体には赤外線受光部がないことからも明白だろう。

なお、双方向リモコンというのは、コストが高いため、大多数のエアコンでは使われていないようだ。では、片方向のリモコンで、温度設定などの乖離問題を解決するにはどうしたらいいだろうか？

例えば、リモコンの温度アップボタンが押されたときに、アップ後の設定温度や、その他のモード設定などを、まとめてコーディングしたリモコン信号として本体に送るのだ。
エアコン本体は、受け取ったリモコン信号を復号して、リモコン操作後の設定温度やモード設定情報を取り出し、エアコンに設定するようにすればいい。
すなわち、リモコンのボタンを押したとき、ボタンのコードを送るのではなく、リモコン操作後のエアコン状態をリモコンで送るようにすれば、たとえ、リモコン信号を受け取れないことがあっても、再びエアコン本体がリモコン信号を受け取れたときに、最新のリモコンの状態を受け取って内部状態を最新の状態に更新できるため、リモコンとエアコン本体の状態に矛盾が生じない。

さて、この方式を取るリモコンだと、リモコンボタンを押して、赤外線信号を学習リモコンに学習させようとしても、エアコンの内部状態に応じ、毎回異なる信号が発信されるため、学習できないことが分かる。

つまり、どちらの方式を取っても、現行のリモコンに液晶で温度表示をしているような大多数のエアコンでは、既存の学習リモコンへのリモコン信号の学習は、無理ということになる。

なお、汎用リモコンの中には、赤外線の学習は無理でも、プリセットで各社のエアコン操作に対応する製品も存在する。こうした製品は、必ずエアコンの状態や温度設定の表示画面をリモコンに持っているため、おそらく、エアコンの温度や状態を、各社独自のアルゴリズムに基づき、リモコン信号を生成する機能を持っていて、対応しているのだと思われる。
こうした情報をエアコンメーカーが公開しているとも思えないので、色々操作してみて発生するリモコン信号波形を解析し、そこからアルゴリズムを類推して、個別に対応しているのだと思われるが、結構、大変な仕事だな。

何故突然こんなことを書いたかと言うと、とあるQ&Aサイトで、エアコンのリモコンが学習できないことに対し、激怒し、文句を言っている人を、たまたま見かけたからだ。
私自身は、別にエアコンの技術者でも、リモコンの技術者でもないが、上に書いた理屈ぐらいは容易に想像がつくため、当たり前のように、エアコンのリモコンの学習なんて無理だと思っていたのだが、そうは思わない人も多いんだな、と思った。
そのQ&A自体は既に閉じていたので、その場で回答はできなかったのだが、質問した人や、同じような不満を持つ人が読んでくれたらいいな、と思い、その理屈を解説してみた。