「個人で電子出版」への道
→関連記事:今頃ですが、新型Kindleについて無名な個人が本を出すというのは、なかなか敷居が高い。もちろん、自費出版は、お金を自分で出せば可能だが、最低部数は買取で印刷する必要があって、数百万円ぐらいの出費は覚悟する必要がある。しかし、印刷が不要な電子出版なら、その敷居がかなり下がってきているようだ。海外では、Amazon Kindle、米国外からも自費出版可能に。印税35%Appleの電子書籍ストア、個人の自費出版作品も販売可能にのように、自費出版した書籍を、手数料を払ってiPadやKindle向けに販売するサービスが確立しつつある。日本でも、次のようなサービスが始まっている。日本初、個人でも電子ブックを出版販売 電子出版ASPサービス「wook」(ウック)開始ただ、これらのサービスは、いくら個人とはいっても、一般の書店サイトに並べる前提なので、予めISBN(国際標準図書番号)という書籍の管理コードを取得する必要がある。書籍の裏側にバーコードと一緒に書かれている、あの番号である。ISBNは、全く問題がなく個人でも取得できるのだが、最低(10書籍分)でも、登録料 15,750円と国際本部分担金(5年分)2,100円の合計17,850円がかかる。このため、すでにプロの作家が、出版社を中抜きするために使うのには適するが、全くの素人が一から出版するには、それ相応の覚悟が必要だ。素人向けに、もっと手軽な出版サイトが出てこないものかと思っていたら、次のサイトが見つかった。「AiR」「パブー」 出版社なし・個人発の電子書籍の可能性私は利用していないが、以前から、「ブクログ」というブックレビューコミュニティサイトがあるらしい。会員数は29万人を数え、それなりに繁盛しているようだ。自分の持っている本やCD/DVDなどの本棚と、そのレビューを管理し、共有できる無料サービスで、収入源はレビューから本を購入する際のアフェリエイト収入と、サイトの広告収入が主なようだ。この「ブクログ」を運営するpaperboy&co..(通称ペパボ)が、6月から新たに始めた個人向け電子書籍作成サービスが「パブー」だ。「パブー」は、ウェブ上で電子書籍の作成・公開・販売が行えるオンラインサービスで、これまで紹介したサービスと違い、無料でアカウントを作り、無料ですべての機能を利用できる。作成した電子書籍は、「パブー」のサイト上で公開でき、EPUBおよびPDF形式のファイルも自動作成され、iPadやKindleなどの電子書籍リーダーでも閲覧できる。閉じた世界での販売になるので、ISBNを取得する必要もない。元手が完全にタダで、電子書籍の出版が可能になる点で、画期的だといえるだろう。書籍は、無料公開もでき、有料で販売する場合には10円~3000円の販売価格が設定できる。有料の場合、販売価格から手数料を差し引いた70%が作者の報酬となるというから、リスクが低い割りに、比較的報酬の割合は高い。Web上で、PDFファイルやテキストファイルから電子書籍を作成できるツールが無償提供されるものありがたいし、本の指定した部分を試し読みできるような設定もでき、すべて試し読み可能にした上で有料の設定もできるらしく、「読んで気に入ったら寄付してね」というドネーション的な設定も可能なようなのも、気が利いている。ただ、6月に開始された時点では、「ブクログ」との連携ができておらず、実際に、どうやって売ったらいいのか困る状態だったが、7月下旬から「ブクログ」がリニューアルされ、パブーで作成した電子書籍は、「ブクログ」上の本棚に登録可能になり、評価やレビューなどの登録・閲覧や、書籍の購入ができるようになったため、格段に使いやすくなったようだ。しかも、もう一つ面白い機能を見つけた。パブーがEPUBポッドキャストに対応最初は、書評の音声Podcastを配信する機能なのかな?と思ったのだが、詳しく読むと違っていて、PodcastのRSS配信を使って、電子書籍を配信できるらしい(DRMは使えないから、多分、当面は無料の書籍だけだろうが)。このRSSをiTunesに登録すれば、iTunesで定期的に電子書籍をダウンロードし、しかも、iPadやiPhoneにコピーして読むこともできる。これは、なかなか便利だ。ここまでシステムができていると、自分も電子書籍の出版にトライしてみようか、と思えてくる。実際、パブー開始から1ヶ月で、公開作品が2,000作品を突破し、有料作品も400作品を数えるまでになったそうだ。ブログの過去のレビューを電子書籍化して公開する件も、パブーを使うのが、一番いいように思えてきた。まずは、練習台に、一度、やってみようかな。ちなみに、9月に賞金50万円の絵本コンテストを開催するらしい。私自身は、絵が書けないので応募は無理だが、今後も「パブー作家発掘プロジェクト」ということで、様々な種類のコンテストを開催するらしいので、小説の募集があったら応募してみようかな。ペパボでは、将来的には原作者やイラストレーター、校正者、マーケティング担当などのマッチングサービスの提供も視野に入れ、企画から執筆、読者の手に渡るまでのすべての過程を個人が行うことができる電子書籍サービスを目指すとしている。 とのことで、将来を見据え志は高いな。こうした書く側に敷居の低いサービスは、今後、伸びしろがありそうで、楽しみだな。「パブー」と「ブクログ」の今後には注目だ。