カテゴリ:商法過去問答案
【問題】 平成5年・第1問
取締役会においては、株主総会の場合と比べ、その招集手続および議決権の行使につき、どのような違いがあるか。株主総会の場合との違いは、どのような理由に基づくか。 【答案】 平成5年・第1問 1 総論 取締役会=取締役全員で構成される合議体で、会社の業務執行に関する意思決定をするとともに取締役の職務執行を監督する株式会社の必要的非常置機関(260条1項) 株主総会=株主を構成員として会社の基本的事項について意思決定する株式会社の必要的非常置機関(230条ノ10) 所有と経営の分離から →取締役(取締役会の構成員)=経営の受託者。経営の専門家。常時、経営に携わっている。 →株主(株主総会の構成員) =会社の実質的所有者。経営の意思も能力もない。常時、経営に携わっているわけではない このような地位・能力の違いが、株主総会と取締役会の召集手続、議決権の行使につき以下のような違いを生じさせる。 2 召集手続について (1) 株主総会の召集通知は開催の二週間前に発しなければならない(232条) この通知には議題・議案の要領を示す必要(232条2項、245条2項等) (これは) 出席の機会を与えるのみならず、普段経営に携わっているわけではない株主に十分な準備の時間を与える趣旨。 (2) 取締役会の召集通知は開催の一週間前の通知で足り、短縮可能(259条ノ2) この通知には議題・議案の要領を示す必要なし。手続の省略も可(259条ノ3) (これは) 激動する経営環境に即応するために、機動的な開催が要求されるからである。 (この点) 経営の専門家として日常的業務執行について常に把握している取締役には、必ずしも出席の準備の時間を与える必要なく、問題ない。 3 議決方法について (1) 株主総会では書面による決議・代理行使可能(特例法21条の2、239条2項)。 (これは) 会社の実質的所有者である株主にとって、議決権行使は権利であり、できるだけかかる権利行使できるようにすべきだからである。 (一方) 取締役会における取締役には、かかる権利行使の方法認められない。 (なぜなら)取締役は受任者であり、取締役会に参加する義務がある。 (また) 取締役は経営の専門家として、個人の能力が重視されているので、代理行使は認められず、十分な討論の必要性あるからである。 (2) 取締役会決議の方法は一つしかなく、特別決議などはない(343条参照)。 (これは) 取締役は経営の受託者に過ぎず、少数派保護といった利益保護の必要性がないからである。 (また) 一人一議決権であり、不統一行使もありえない。 (3) 株主総会では特別利害関係人も議決に参加できる(ただし247条1項3号)。 (これは) 株主は会社の実質的所有者なので、自己のために議決権行使が許されるべきだからである。 (一方) 取締役会では特別利害関係人の議決権行使は認められない。 (これは) 取締役は、経営の専門家として会社の経営を受任したものであり、会社のために議決権行使すべきだからである。 以上 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Nov 3, 2004 11:20:45 PM
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