大萩康司in能楽堂
辻井伸行氏は凱旋帰国の記者会見で 「日本の皆さんの前で演奏できることが嬉しい」と述べていました。 本当にそうなんだなって彼をみてたら思う。 演奏会へ行く時の心がけとしてセンセから教わったことは、 「なにかを感じる、見つける、得てこようって思っていくこと。 意地悪な気持ちを持ってちゃダメだよ」。 今日、能楽堂でおはぎ君のリサイタルで感じたのは 「音楽と対話すること」でした。 彼の演奏から自然とそう感じられました。 具体的に言葉にできないのですが。 ウオームアップなしの現代曲でスタートした前半、 「すみません、今回は重いプログラムで」とご本人が最初にお断りするような コムズカシくてガッチガチな現代曲ですら、リラックスして聞かせてしまう、 足元をしっかり固めた演奏。 今回おはぎ君は「音の詩人」というコピーで語られていましたが、 彼の音は柔らかで優しく優美。 そして間が絶妙で繊細な空気が客席まで届きます。 毎回思うことですが、彼のリサイタルでは、 ステージと客席が一体化するというか、隔たりを取り去るというか。 うーんそれよりワンランク上、奏者の気持ちになっちゃう、そんな感じです。 弦に触れた音だけ、のようなチョーpppが何度も登場して「はう~ん」でした。 会場の能楽堂の舞台は逆L字型。 能楽堂全景出っ張った四角いステージの2辺にむけて客席が配置されています。 だからおはぎ君はお辞儀を2箇所に向かってします。感動~。 私は前から5列目、運良くステージに向かって左辺、 おはぎ君の右側が正面の座席、こういう角度は、普通のホールではありえない。 つまり。 右手も左手も、サウンドホールも私の正面じゃー 指フェチな私ですからこれがもし最前列だったらハァハァ言ってたかも。 だって。こんな美しい手入れの行き届いた指なのですよ。ギタリストにアロンαは必需品 で。おはぎ君語録。 花道を出てきて、松を後ろにしょって、おはぎ君。 「こういうステージは余計な緊張をしますね。花道が長いし、 後ろから誰かが見ているような気がするし。 本当はステージも靴はダメ、足袋をはかなきゃいけないらしいんですが、 今日はシートを敷いてもらってるので…でも足袋履いてやってみたかった気も…」 …うん、足袋&ギターの和洋折衷、見たかった 「演奏する時とトークする時って右脳と左脳で違うんですよね。 演奏とトークを切り替えは難しい、時間かかる。って話を、 虎ノ門病院の知り合いの医者に話したら 『大萩は右脳と左脳の結びつきが弱いんだ』と…」 …切り替えが難しいというのは常々感じていたこと。私も結びつきが弱い 「アンコールありがとうございます。 今回のツアー、11カ所中、今日が8カ所目なんですけど、かき鳴らす曲が多くて。 ついに先ほど皮がむけてしまいました。やったぜ!て勲章みたいなモノですが」 …いや、それは違うデショ、痛いよあと3カ所もあるのに。 「花道が長いんで…出たり引っ込んだりに時間がかかるし恥ずかしいんですよね。 そうしてる間にお客さんが帰っちゃったりしたら哀しいし…」 …おはぎ君のそういう想いはトークと演奏でしっかりと届いていました。 というわけでアンコールは3曲+1曲。 ギターでタンゴと言えばこの曲でしょうというのと、 私の中で、この2曲は「おはぎ君の曲」と位置づけられている曲でした。 アンコールでやっと知っている曲が出てきたので、 ホッとした雰囲気が客席にも漂っていました。 某タンゴは、色んな人の演奏を聴いてきましたが、 今日のおはぎ君のはシブイ!テンポも音量も叩くのも控えめ、新しい! 普通はうりゃーどうじゃーてアピールするハデな曲なのに。 なんと、フィニッシュの「ちゃん・ちゃん」をdimしました!!その瞬間「ほぉ」と声に出してしまいましたよワタクシ。 すんません。ディープなネタで。 どうしてもそれを伝えたくて、リサイタル終了後のサイン会で 「某タンゴ、新鮮でした」というと「?」と顔を上げてくれて 「渋くて」と付け加えたら「あぁ。どうもありがとう」と 天使の微笑みで握手してくれました 【番外編】 私のお隣はブラス関係者レディスらしく、 「ギターってあんなに頻繁にチューニングせんとダメなの?」とか 「息の音すごいよね、呼吸器系どっか悪いのかな?」等々、 彼女らのひとつひとつの会話にツッコミたいのを必死でガマンしていました。