090423 ランダム
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Silver Fox

Silver Fox

聖獣の里~02~

長の家はそう遠くない。大きな櫓のような形をしていていつでも適温になっている。
中に入ろうとすると長はちょうど隣町の商人を占っていた。
「天神の御祖教え詔りして曰く、若し痛む処有らば茲の葦の空穂なる、神秘の力を令て、一二三四五六七八九十白、而布瑠、部、由良、由良、而布瑠、部」
何を言っているのかはさっぱり分からない。しかたないので少し待つことにした。

「う~む、やはりあんたの抱え込んでる大事、商売かな?とにかくそれは師走がいいのう。それ以前もそれ以降もなし。だいたい大安じゃの。まあ仏滅いがいなら大丈夫。ああ、あと先勝もやめておくほうがいいのう。では。」

声が聞こえ急いで中に入った。漣は千鳥足だ。
「おお、よおきた。まあ座れ。」
「じじい、自分で、よ、呼んどいてそりゃないぜ。」
顔が青い。
「どうした?酒か?」
「違いますよ、なんていうか・・・犬酔いですかね。三半規管がないんだよ、連は。」
にやけながら丑寅が言った。
「ば、馬鹿野郎。三半規管ぐらいある。」
「でも犬の尻尾で酔ったりはしないよ、普通。」
長が笑いながら
「そうか。連は酔いやすいからのう。これを飲め。」
と言った
「じじい、それを早く出せ。」
と言いながら連は飲み干した。
「うっ・・・。ああ~きもちわり~。」
「なんで呼んだんですか?」
少し悩んだ後長は答えた。
「率直に言おう。旅に出てもらう。そしてこの村を救え。」
顔色ひとつ変えず漣は即答した。
「ああ分かったよ。おい、行くぞ丑寅。」
「ええ!!?でも武器ないよ!!?」
「おい、寄こせじじい。」
「普通は『なんで!!?』とか言うもんじゃがのう・・・。まあよい。まずお前たちの父母の死因についてじゃ。」
神妙な面持ちで長は言った。
「そろそろくるころだと思ったぜ。」
「実はのお、この世界には世の中を変える戦士みたいなものがおる。率直に言うとそれは漣、お前の父だ。とある武具に認められたんだ。そしてその戦士には3人の付き人がおる。その内の一人が丑寅の父じゃ。」
「なるほどな。で何で死んだ?率直に頼むぜ。」
「二人の父母はのお。紅蜘蛛のリーダー、実名は分からんが紅蜘蛛に殺された。怪しげな呪術を使うのでの、太刀打ちできんかったんじゃ。」
「そうなのか・・・。ようは紅蜘蛛を叩けと?」
「そうじゃ。最近増えてきた魔物にも紅蜘蛛が関係している。」
「勇者に俺がなって丑寅とほかの付き人っていうのを見つけて蜘蛛を殺せと。まるで神話だな。第一俺たち魔物とも戦ったことないぜ。」
「心配するな。武器がある。栄治、持って来い。」
長は守衛の一人にそういった。
「おお、これじゃこれじゃ。すまんの、栄治。」
持ってきたのはは巨大な幅の広い剣、そして三又に分かれた槍であった。
「この剣は青破刀、この槍は朱魔槍という。この二つの武具には聖獣、清龍と朱雀の力が宿っている。この二つと残りの二つ、玄牙と虎太刀をみつけこの世界のどこかの聖獣の里に持っていくのじゃ。そうすれば紅蜘蛛も殺せる。お前らの父母はのう、その聖獣の里を探すたびの途中紅蜘蛛にやられた。」
「ああ、おれは過去はあんま振り返らない。で、どこに行けばいいんだ?あと魔物はどうやって倒す?」
「次はチリルの森を抜けゼラン平原をすすみミトの町へ。そこに付き人がおる。ただし相手はその事実を知らなんだ。説得するのじゃ。相手はもともと武具をもっておる。それで探せ。戦いは慣れで行け。」
「よし行くぞ。」
「あ、そうじゃった。一部の魔物が宝玉をもっておる。それがないと聖獣の里には入れんぞ。」
「じゃあ行こうか。」
「よっしゃ!!」
連は飛び出した。雲ひとつないさわやかな日であった。


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