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ナラティヴ ひとり語り

ナラティヴ ひとり語り

・・・『みみずのカーロ』『漁師さんの森・

今泉みね子=著『みみずのカーロ』(合同出版)
畠山重篤=著『漁師さんの森づくり』(講談社)

 小さい頃の娘は「○○は何のためにあるの?」と、良く尋ねてくる子どもだった。例えば、「ハエはなんのためにあるの?」という具合に。でも、そんなことを聞かれても神様ではないのだから、こちらも返答に困る。そんな娘におあつらえ向きの本を見つけた。今泉みね子=作『みみずのカーロ』。
 “シェーファー先生の自然の学校”というサブタイトルでも分かるように、この本はドイツにある小学校のシェーファー先生の環境教育を紹介したものだ。この本を読みながら私たちは、メルディンガー小学校の子どもたちと一緒に、みみずが生ゴミや落ち葉や鉛筆の削りかす等を土に分解していく力の凄さを追体験していく。これを読むと「気持ち悪いだけのみみずなんて、神様はお創りにならなければ良かったのに」なぁーんて、思わなくなりそうだ。
 シェーファー先生の取り組みは、教室でのガラスの箱に入ったみみずの観察から始まって、地域の人達の協力を得て昔からメルディンゲンにある仕事を子ども達が体験するという活動へ発展していく。ゴミの問題と動物達のすむ川や森などの環境、子ども達の未来の仕事がすべて関わっていることが分かる。
 もう一冊、全く関係がないと思われるものが深い関わりの中にあることを書いた本を紹介しよう。畠山重篤=著『漁師さんの森づくり』。
 三陸リアス式海岸の海で育った畠山さんは、お父さんの代からカキの養殖をしていた。その畠山さんが海の異変に気づいたのは、昭和39年頃だそうだ。1984年、フランスのカキ養殖の視察に行った畠山さんは、帰国後、漁師仲間に声をかけ室根山に広葉樹の森をつくる活動を開始する。落葉広葉樹の落ち葉が腐葉土になり、そこに降った雨が土にしみ入って地下水となり、カキの成育に必要なフルボ酸鉄を川から海へ運んでいくのだ。
 それにしても苗を植えてそれが育ち、雨が地下水となって川にしみ出ていくまでにどれだけの年数がかかるのだろうかと気が遠くなって、私などはそこから先に進めそうにないが、ここの漁師さん達はそれを実行していったのだ。そして、それだけではない。山の小学校にも呼びかけて、子ども達を海に招き、海にとって山がどんなに大切かを学んでもらう体験学習も実施した。
 この、山に木を植える活動は今では全国にひろがってきているようだが、このようなことを子ども達にこそ伝えたいと思う。未来を生きる子ども達にこそ。いつか、この本を小学校で読み聞かせることが、私の夢だ。


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