カテゴリ:大工の技
昨日8/7夜8時NHK Eテレ、 専門医が考える「理想的な寝室」として 珪藻土と炭の塗壁で睡眠の質が向上するという実例が紹介されていました。 そういえば、以前住んでいたビニルクロスに囲まれた建売りでは鼻炎が絶えなかったのに、 いま築五十年の塗壁の古家に仮住まいを始めてからは嘘のように鼻炎にならないし、 前はあんなにアルミサッシに結露していたのに、 今は同様のアルミサッシなのに結露したことがありません。 高気密高断熱の家が今はトレンドですが、それを新建材で作って、 それが本当の意味で健康や暮らしの質の向上や心の豊かさに有益なのか、 調べれば調べるほど数値を追うだけの高性能住宅に疑問が深まっていきます。 このことについては「気候風土適応住宅の魅力・・・」1/3の稿でも少し触れていますが、 遠からず稿を改めてじっくり考えてみたいと思います。 さて、石場建て伝統構法の新築、進捗状況です。 四連休明け7/27(月)以降、ついに階段が完成したと 8/6「ついに階段完成~木組みの家の手刻み地松スケルトン階段」の稿にしましたが、 他にも地道にいろいろ造作が進んでいます。 寝室直結のウォークインクローゼットには、天井際に棚をつけてもらいました。 ウチは屋根なり天井で小屋裏が無いので、 上棟の御幣や建築・補修記録などの履歴をここに収めようと考えています。 アメリカでは、日本でいう資産価値のなくなった二十年以上経った中古住宅でも、 新築と同等以上の評価をされる可能性があるそうです。 これは、建物の維持・向上への意識が高く、その家の履歴がきちんと管理されているので、 ホームインスペクター(資格保持者)が中古住宅の価値を法的に正当に評価するからです。 日本でも古民家鑑定士のような民間の動きはありますが、 現代家屋でも住宅履歴情報や建物の適切な維持管理に基づくインスペクションが促進され、 家の資産価値が適切に評価されることで、SDGsの観点からも、 三世代に渡って百年以上住み継がれる家が増えていくことが期待されます。 話しが大仰になってしまいましたが、造作の進捗状況・・・。 運び込まれたのは、サワラの腰板材。 魚?・・・鰆の西京焼きが美味しい! じゃなくって、「椹」。 檜よりもさわらか(軽軟)だから、サワラというんだとか。 ヒノキ科ですが香り少ないのでかつては米櫃や箸に、 また水湿によく耐えるので手桶や風呂桶にも、 ほか軽く狂いにくいことから建具の桟や箪笥など指物に使われている材です。 肌目は緻密で爽やかな淡黄褐色で、実用的にも意匠的にも水回りの腰板にピッタリです。 ということで、まずは2階のトイレに張っていきます。 壁内が土なんで、いろいろ取り付ける下地に杉板を仕込んでおきます。 目立ったところでは、寝室と2階トイレの入口に片引き戸を入れるため、半壁が設置されました。 それまで2階全部が大空間だったのが、個室が見えてきて更に家っぽくなります。 これら腰壁や半壁を担当するのは、超若手の大工さん! 弱冠二十代半ばですが、いい腕しています。 三十年後には棟梁は引退しているかも・・・そのころ補修を託すのが楽しみです。 収納といえばもう一つ、今どき珍しい?敢えて普通の押入れ。布団類はやはり押入れ。 押入れの壁には、桐を採用。床や棚は強度上から杉ですが。 桐は「木じゃなく草」と言われるほど成長はきわめて早く、幹は高さ10mにも達します。 女の子が生まれたら庭に植え、お嫁に行くにあたって桐ダンスにして持たせたとも。 前の家の庭に勝手に生えて、毎年50cm程に伐採するのに、都度2mほどに伸びていました。 桐は私がどうしても使いたかった材。「桐で創る低炭素社会」という本で出合いました。 色白で木肌は美しく狂いが少ないだけでなく、 湿度の通過性や熱伝導率がきわめて小さい特性を持っており火にも強いため、 壁材やフローリング材として、また断熱屋根野地板として優れており、 何と言っても床材として足触りが最高に温かく柔らかく、転んでも怪我しにくいことから、 日伸建設ならではの原木から自家製材する選択肢がなく、 既製品を購入するとコストアップにつながるので、 まさに適材適所、押入れの壁に採用ということになりました。 1階の書斎に据え付けられました。 1階はほとんどフローリングですが、ここだけは畳の小上りなので、 床の高さが掘ごたつのようになっています。 当面は大工道具置場として重宝しそうです! 8/6には、特別にお願いした玄関上がり框のところのニッチの小棚が据え付けられました。 まだニッチの窪み部分は仮に板で塞いでありますが、 その小棚を見てビックリ! 材はチャンチン(香椿)というんだそうで、表面に彫りが施されています。 香椿はセンダン科で中国由来の国産落葉広葉樹で、水湿に強く耐朽性に優れた材です。 唐変木(トウヘンボク)とも呼ばれますが、さて、誰の事?! その木目の美しさを生かして、棟梁は我谷盆(わがたぼん)風に彫ってくれました。 我谷盆とは、1965年にダムに沈んだ石川県山中温泉に程近い山間部に位置する我谷村で、 栗の板切れを有効利用して作られていた生活工芸品。 一度は途絶えたものの人間国宝の木工芸作家 黒田辰秋氏に見出され復活を遂げ、 木工芸を修行中のウチの息子も森口先生に直接師事し、 ウチにもいくつか我谷盆があるのですが、 棟梁がそのオマージュとして玄関先にこれを据えてくれたのには、感激です。 檜・杉・松・栗・楓・椹・桐・肥松・香椿・・・ 適材適所とはいえ、なんか材木図鑑のようになってきました。 棟梁、いろんな木を触ることができて楽しいと、すごく喜しそう! 作り手がそんなふうに好き放題に面白がってくれるのも、 お任せしている施主としても嬉しい限りです。 ******************** ところで今日8/8と明日は、 静岡の木ごころ工房さんの手掛ける石場建て伝統構法の新築の完成見学会の日。 この「未来へ紡ぐ石場の家」は、ウチの建て方2/17より2か月ほど早い 去年の12/8に建て方が始まった、数少ないちょっと先輩の同級生。 「未来へ紡ぐ・・・」は私がそれ以前から考えていたフレーズ。 先を越されてちょっと悔しいけど(ウチは別のを考えないと・・・!)、 でもやはり同じ想いで建ててらっしゃるんだなぁとすごく嬉しいです。 完成見学会はぜひ行こうと思っていたのですが、このコロナ禍で残念ながら断念。 完成、おめでとうございます! ウチもあと2か月で竣工できるのでしょうか・・・?!
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最終更新日
2020年08月10日 02時03分28秒
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