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カテゴリ:忘備録
サルのオスではとくに上下顎の犬歯が巨大になり、上顎の犬歯は下顎の犬歯と第3小臼歯(P3:人では第1小臼歯)の間に噛み込んで,特殊な機能をしている。 このセットになった組み合わせをC-P3 complexと呼んでいる。
http://ymd20hiro4.sakura.ne.jp/sub6_6.html C-P3 Complex(犬歯-下顎第3小臼歯複合体) C-P3 complexという言葉をはじめて耳にする人は多いと思う。しかしサルの歯の形態を研究する学者には良く耳にする言葉である。サルのオスではとくに上下顎の犬歯が巨大になり、上顎の犬歯は下顎の犬歯と第3小臼歯(P3:人では第1小臼歯)の間に噛み込んで,特殊な機能をしている。このセットになった組み合わせをC-P3 complexと呼んでいる。オスとメスの形態の違い(性的二型)が強い種に特徴的に見られる。上下顎それぞれの歯同士が噛み合う位置関係は現代人でも同じであるが,その場所で行われる働きはサルや類人猿とヒトではかなり違っている。上下顎の犬歯は大型になり,サーベル状に発達してくる。 真猿類(ニホンザル)の犬歯 真猿類を代表してニホンザルの上顎犬歯について話したいと思います。大きさはオスで大きく,メスで小さくなっています。形はオスもメスも単錘形ですが,詳しくみると形にも雌雄に違いがあります。 オスの上顎犬歯を頬側面からみると,歯冠の概形はやゝ遠心へ湾曲した二等辺三角形あるいはサーベル状の形をしています。犬歯は他の歯よりも明らかに大きく,咬合面よりかなり突き出しているのが分かると思います。舌側面では近心切縁溝(ヒトでは無い)が尖頭から歯頚基底部まで深い溝を形成し,完全に武器としての役目を担っています。同時に相手に対する威嚇行動や示威行動の働きをしています http://ymd20hiro4.sakura.ne.jp/sub7_1.html 食糧運搬仮説 人類進化のカギとなる直立二足歩行について、最近注目されている「食糧運搬仮説」とは、次のようなものである。 人類が直立二足歩行に適した形質(形態と性質)を獲得する条件は「生存や繁殖に有利なこと」と「子に遺伝すること」である。この条件が自然選択によって生物の種全体に広がることが進化である。では人類はどのようにしてこの形質を獲得したのか。考えられるのは人類が他の霊長類と違って、集団生活を営みながら一夫一婦的な社会を持っていることである。 人に最も近い霊長類のヒヒは多夫多妻の社会をつくっているので、オスは子どもが自分の子かどうか判らないが、一夫一婦社会であれば、オスが直立二足歩行して子どもに食糧を運んでやって「生存や繁殖を有利」にしてあげることができ、その子が生き残って大人になれば直立二足歩行をする可能性が出てくる。それが何世代も繰り返されて、直立歩行する個体は増えていけば、それが種の形質になる。 人類の直立二足歩行への進化が一夫一婦社会と関係が深いことの傍証になるのが、人類の犬歯が小さくなってることだ。犬歯はオス同士が闘うための武器であり、多夫多妻、一夫多妻の動物社会では必要なものだが、一夫一婦社会では必要がない。犬歯が小さくなったことの理由を固い物をすりつぶす咀嚼運動で必要となったためと説明されることが多いが、化石人骨の犬歯はまず上顎の犬歯から小さくなり、下顎の犬歯が小さくなるのはそれより遅い。横方向の咀嚼運動ためなら同時に小さくなるはずだから、人の犬歯が小さくなった理由は、「オス同士の闘いが穏やかになった」ため、つまり一夫一婦社会になったためと考えられる。最も完全な一夫一婦制でなくとも、それが定着するまでの中間的な一夫多妻社会でもこの変化は起こり得た。 以上のことから「アフリカにいた類人猿の中で約700万年前に現れた、一夫一婦制かそれに近い社会を作るようになった種では、オスが食物運搬をする必要から、直立二足歩行の能力を身につけ、それが形質となって進化した。その種は同種内で争うことがほとんどなくなったので、犬歯が小さくなった」という仮説を立てることができる。この仮説は人類を直立二足歩行に進化させた理由の説明として、スジが通っていると思われる。 <更科功『絶滅の人類史―なぜ「私たち」は生き延びたか』2018 NHK出版新書 p.51-71> ヒトの直立二足歩行はオスが食糧を運ぶために進化したためだ、というのは興味深い説です。するとメスは妊娠と子育てのため二足歩行への進化が遅れたのでしょうか?などと疑問も湧いてきますが、更科氏の話は上記では要約しきれませんので、くわしくは、かつ正確には同書をご覧下さい。 https://www.y-history.net/appendix/wh0100-01.html お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年10月16日 12時53分16秒
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