中之島公園の猫たち-SAVE THE CATS IN NAKANOSHIMA PARK-

暑い毎日が続いています
ここに来て「猫の部屋」でも、夏バテ気味の仲間たちがチラホラ…
少し食欲も落ちてきて、缶詰をあまり食べなかったり…
ちょっと食べ過ぎると吐いてしまったり、お腹をこわしたり…
「ありゃりゃ、気持ち悪くなったか」
「仕方ないよね、これだけ暑いと人も猫も食欲落ちるもんね」
だから新鮮で冷たいお水は欠かせません

しかし日が陰ってくると
仲間たちは、お昼より少しは元気になります
そんな時
よく見かけるのが天井に掛けてある葦簀（よしず）に登る姿
「…きっとそのうち落ちるか、折れるな」
「どうしようか、先もきちんとはめ込んでしまった方がいいのかな…」
丸くたわんだ葦簀を見上げて秘書たちが話している間にも、次々と登っていく仲間たち
天井と葦簀との隙間は、狭いところに入りたがる猫にとってすごく魅力がある場所
しかしお日様が思い切り当たっていた天井は、夕方になっても結構暑いと思うのです
「なんでみんな上がりたいのかな」

アミルちゃんはいつも大騒ぎをしながら、立てかけてある葦簀を駆け登り、天井に上がっています
「アミルそれって案外、格好悪い上がり方だと思う…」
「…足滑らせたりしてるし」
その上、葦簀から降りる時も大騒ぎ
怖々で足を壁にかけながら…
最後はほぼ落下状態で着地しています
「…アミルよ」
「もしや猫って、運動神経鈍いね」

最近、いつもアミルちゃんの後をついてまわっているももちゃん
仲良しのアミルちゃんの様子を見ていたからか、頑張って自分も登ってみたくなったようです

立てかけた葦簀に何度も登りつくのですが
これがなかなか登れない
「ももちゃん頑張れ」
「よしもうちょっとだよ」
応援する秘書たちの期待に応えるように頑張るももちゃん
結果、何とかももちゃんも登れたのですが…
ひとしきり葦簀の上の様子を伺って、いざ降りようとした時
これがなかなか降りられない
「…ももちゃん、どうするよ」
「あー、応援するんじゃなかった」

ウロウロするももちゃんを助けることも出来ず、見守る秘書たち
しばらく壁に手を掛けたり、葦簀から身を乗り出したりしていたももちゃん
諦めたのか怖々ながら飛び降りて、無事に着地することが出来ました
「ももちゃんはね、もう登らない方がいいと思うよ…」
「…そのうち落ちるな」

最近、夏バテ気味の黒猫さんチーム
ジジも食欲が落ちていて、あまり元気がなかったのですが…
しかし先日
ガシャという音に秘書たちが振り向いた時…
ちょこんと葦簀の上に座っているジジを発見
「ジジいつの間にこっちに来たの」
「すごいね大騒ぎせずに登れたんだね」
少しだけ得意顔に見えたジジ
その視線を見て、なぜ仲間たちが葦簀の上に登りたがるのか…
秘書たちは気付いたそうです
葦簀と波板の間には２０ｃｍほどの隙間があります。
脱走防止用のネットだけになっているその隙間から、お外が見えるのです。
ジジはネット越しに見えるお外を眺めていました。
日差しは少しだけ弱まっているけれど、まだお昼の暑さが残った夏の夕方の風景…
土の匂い、水の匂い、木の匂い…
一生懸命にお鼻を動かしながら、ジッとお外を眺めているジジ。
その様子を見ながら、秘書たちは少しだけ切なくなったそうです

「ジジ、好きなだけ見てていいからね」
「いっぱいお外の匂いがするね」
葦簀の先を天井の枠にはめ込もうかと考えていた秘書たちは、そのままにしておくことに決めました
「葦簀、もしも折れたら折れた時のことだよね…」
「…うん、猫たちがケガさえしなかったらいいよ」
ジジも降りる時は少し大騒ぎしましたが、何とか無事に着地が出来ました

少し危険な葦簀展望台ではありますが…
窓がない「猫の部屋」ですから、仲間たちにとっては、唯一、ゆっくりとお外を見られる場所のようです
いくら大騒ぎしても、落っこちそうになっても登りたい場所なのでしょう
しかし…
中には大騒ぎなどせず優雅に登り、そして静かに降りてくる仲間がいます
それは、おばあちゃんに次いでの長生きさん
「猫の部屋」ご長寿No.2のゆうちゃんです

ゆうちゃんも最近は食欲が落ちてしまい、公園時代からずっとお世話されているSさんが心配しておられました
「ゆうちゃんも、もう年ですからね…」
そんなゆうちゃんが少しでも食べやすそうなのものを、いつもSさんは持って来られます。
若い時のゆうちゃんは食欲旺盛
お肉もお魚も大好きだったそうです
とてもすばしっこくて元気いっぱいだったゆうちゃん
「姉弟はみんな死んでしまったけど、ゆうちゃんは元気に生きてきましたからね」
Sさんは、最近少しお鼻が詰まっていたゆうちゃんの鼻水をまめに拭き、ゆうちゃんの好きなものを少しずつ食べさせておられました
ゆうちゃんも８歳を過ぎ、この夏の暑さをきっと厳しく感じていることでしょう…。

ある日、またもや葦簀が丸くたわんでいることに気が付いた秘書たち
「えっ今度は誰が登っているの」
「でも今は何も音なんかしなかったよ…」
葦簀の隙間からチラチラ見えるお顔
秘書たちが近寄って、ソーッと見上げて見ると…
葦簀の上にいたのは、お外をジッと見ているゆうちゃんでした
「ゆうちゃんすごい、どうやって登ったの」
「全然音もしなかったのに、どこから登ったんだろう」

そのままゆうちゃんはしばらくのんびりとお外を眺めた後、いつもみんなが右往左往しながら大騒ぎで降りてくる隙間からヒラリと飛び降りて…
スチールの棚の上に、静かにスタッと着地
トコトコといつも自分が寛いでいる箱の中に帰って行きました
その一連の動作はすごく優雅で、ゆうちゃんの運動神経の良さが垣間見られました

「Sさん、ゆうちゃんが葦簀の上に乗ったんですよ」
「ものすごくきれいに乗って、降りる時もすごく上手だったんですよ」
Sさんが来られた時に、ゆうちゃんの様子を張り切って報告する秘書たち
「あ、登りましたかゆうちゃん、まだまだ元気ですね」
「そうですよ、すごく運動神経がいいのがわかりました」
「上に登るのも下に降りるのも、誰よりもゆうちゃんがいちばん上手でした」
Sさんもニコニコと嬉しそうで、その笑顔を見て秘書たちもすごく嬉しかったそうです

その後…
一仕事終えて、いつもの箱で寛ぐゆうちゃん
その表情はいつものゆうちゃん、少し眠たげな様子のゆうちゃんでした。
「ゆうちゃん、すごくカッコよかったぞ」
「特に降りる時、ヒラリと音もなく着地してさ、すごかったね」
興奮気味に話しかけてくる秘書たちをチラリと見て、ゆうちゃんは眠そうに箱の中で丸くなりました。
『まだまだ若いもんには負けませんよ…』
お見事ですゆうちゃん

「中之島公園の猫たち」nekomat@nifmail.jp