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テーマ:試写会で観た映画の感想(678)
カテゴリ:映画・DVD
映画ブームが終わったのと忙しいのとで、まったくノーチェックだった作品。
『扉をたたく人』 愛する妻に先立たれ、コネティカットで孤独に暮らす大学教授のウォルター(リチャード・ジェンキンス)。ある日、久しぶりにマンハッタンの別宅の扉を開けると、そこには見知らぬ移民のカップルが住んでいた。思いも寄らなかったシリア人の移民青年タレクとの出会い。ウォルターは、ミュージシャンのタレクにジャンベを習い始め、その響きに共鳴していく。ふたりの友情が深まる中、突然タレクが不法滞在を理由に拘束されてしまう。 (作品資料より) 孤独というより投げやりで、生きる気力を失くした初老の男が、偶然の出会いからジャンベ(アフリカの太鼓)に目覚め、生きがい-「何かに一生懸命になること」を思い出していく。 最初は、本当に陰鬱な表情で、人と交わったり、人を愛することを諦めてしまったかのようなウォルターが、少しずつ少しずつ、笑顔と人間らしい感情(プラスの方向の)を取り戻していく過程を、名脇役リチャード・ジェンキンスが、静かな演技で見事に表現している。 不法滞在らしいタレクとその彼女も、息子が拘束されたことを知って一人でマンハッタンに出てくる母親(ヒアム・アッバス)も、怒ったり笑ったりと感情の吐露はあっても、やはりどこか静けさの漂う演技で、煩くない存在として脇を固める。 9.11以降、誰でもウエルカムな多民族国家であり、自由の象徴であるはずのアメリカという国が、アラブ系の滞在者に対してしたことが、淡々とした物語の中で浮き彫りになる。 けれども、この作品(と、登場人物)は、それを声高に弾劾するわけではない。 ただ、一つの出会いがあり、それが展開していった先に「こういうことも、あるのだ」と告げているだけだ。 米国生まれのアッパークラスに属する白人のウォルターが、なぜ「大切な友人」タレクが強制退去させられるのか納得できず、苛立つシーンがある。 アフリカ人である彼女が、自分が退去させられることを恐れ、タレクに会いに行けないと告げるシーンもある。 なにげないストーリー展開の中に、アメリカの抱える様々な問題が見え隠れする。 派手さはないし、表面だけ追えば何ということもなくインパクトのない作品だが、非常によく考えられ、丁寧に作られていると思う。 ケン・ローチ監督ほど声高に「社会問題に目を向けましょうっ!」と主張していない、静か目の社会派映画ヒューマン味って感じかな。 わかりやすい映画、大作感動モノが好きな方には向きませんが、んーと『再会の街で』あたりがお好きな方は是非 6月27日(土)、恵比寿ガーデンシネマ他、全国順次ロードショー お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jul 31, 2009 01:48:26 PM
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