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I'll Sleep When I'm Dead!

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訴訟社会アメリカ―その現状と背景―

「訴訟社会アメリカーその現状と背景ー」


◆アメリカ法の特色

1.世界二大法系

世界の二大法系として、「英米法」と「大陸法」があり、アメリカは読んで字のごとく、「英米法」です。それぞれの特徴は、

大陸法:圧倒的にローマ法の影響を受けており、法典を持っている。主にヨーロッパにおける法体系。

英米法:中世イングランドがルーツで、包括的な法典を持たず、慣習や判例をもとにしている。イギリスの植民地政策に伴い、ニュージーランド、オーストラリア、マレーシア、インド、などにおける法体系。

ちなみに日本は、明治時代にドイツ(プロシア)の法を元に法制度が設けられたので大陸法の一種と考えられています。

2.連邦制

米国は、50の州という「国」が集まって出来たもので、各州は独自の議会・裁判所を持っている。法律は州によってバラバラで、州の権限はオールマイティである。一方、連邦も独自の議会と裁判所を持つが、州議会・州裁判所とは重なる部分はあるが異なるものとして考える。連邦は防衛や外交における権限を持つ。

3.判例法主義

日本は六法全書をベースにしているが、そのような包括的な法典はなく、判例を元に裁判が行われる。

4.陪審制度

英国では、民事の陪審制はほとんど使われていないのに対し、アメリカでは、一人の裁判官に裁かれるよりも、同胞の良識ある判断にゆだねたいという、司法における民主主義の実現として、陪審制度が設けられている。一方、裁判官が無責任になるのではないかという批判も少なくない。

5.法曹一元

日本の場合、司法試験に受かったら、まず司法修習生となり、その後検察官、裁判官、または弁護士の道をそれぞれ選び進む。しかしそれだと昔あった「雲助事件」のように、人格に偏りのある人間が裁判官になる可能性がある。

アメリカではLaw Schoolを卒業し司法試験に受かったら、まず全員が弁護士になる。その後、人格も高潔でバランス感覚のある人のみが裁判官になれる。「一元」とは、まず全員が弁護士になることを示す。

日本にもようやくロー・スクールが設けられたが、そのきっかけは、今までの司法試験のあり方がまずいということにある。今までのやり方だと、司法試験にパスするためにとにかく仕事をせず予備校に通い、丸暗記主義のもとで試験に臨む人が多く、判で押したような回答ばかりが目立つ一方で、応用問題になるとお手上げだそうだ。これでは変わりゆく社会に柔軟な対応が出来る法曹を生み出すことは不可能だと考えたからである。

◆弁護士

1.概要
日本米国
弁護士数12000人60万人
司法試験の合格率2%50~70%(州により異なる)
報酬制度成功報酬は一部完全成功報酬可


日米の弁護士の数は、それぞれ1万2000人、60万人とかなり差がある。司法試験の合格率は日米それぞれ2%と50~70%。報酬制度は日本では一部成功報酬が見られるものの、裁判の勝ち負けに関係なく着手金を払わなければならないのに対し、米国では完全成功報酬、つまり、負ければタダ、勝てばその一部を報酬として支払う。それによって、ダメ元で裁判を起こすことが可能

2.過当競争の是非

弁護士の数が多く、また簡単に訴訟を起こすことが可能なので、濫訴の弊害が取りざたされているが、逆に日本のように弁護士が少なすぎるほうが問題ではないか。

たとえば、イジメ問題にしても、日本では以前、中学生が総額5000万円を恐喝されたと言う事件やイジメによる自殺、殺人などが社会問題化しているが、アメリカではイジメはまず社会問題にはならないという。というのも、訴訟にかかる費用が安く、個人の権利実現が容易であるために、いじめられた側がすぐに裁判を起こし、いじめた側は損害賠償を要求されるのでいじめた側の親が自分の子供を押さえ込んで問題を解決してしまうからである。

また、弁護士の数が少ないと、弁護士は都市部に集中し、儲かる仕事しかしなくなる。そうではなくて、生活上のトラブルを解決するために、かかりつけの医者を持つのと同じように「かかりつけの」弁護士を持つ必要があるのではないか。

◆訴訟社会の実態

1."Sue first, and talk later."

これが米国の社会で、日本とはまったく逆である。日本はほぼ同一民族なので、相手の考えていることがわかるということでトラブルの解決も円滑に運ぶことが多い。日本では話し合った末、どうしても解決できないのでやむなく裁判を起こすことが多いが、人種のモザイク現象が起きている米国では民族によって異なる考え方を持ち、言葉も違うので、まずは訴訟を起こすほうが早い解決が望めるというもの。

2.訴訟の実態
訴訟件数判決率
米国1567件3%
日本42万件29%


これを見ると、米国では判決していないように思いますが、実は訴訟を起こしてから和解することが多いのでこの数字になっています。日本でも和解するケースは多いそうです。

◆訴訟社会の背景

1.人種のモザイク社会

↑で述べたように、多民族国家である米国において、話し合いは不可能に近い。

2.権利意識

「出る杭は打たれる」日本では、この権利意識はあまりいいものだと評価しない風土がある。一方米国は自ら主張することは、回りまわって人々の人権保障に結びつくのでむしろ「よいこと」とされる風土がある。

3.安価な訴訟関係費用

日本では多額の訴訟を起こしにくい制度がある。(多額になればなるほど、訴訟を起こした時の印紙代が高くなる。)

4.訴訟促進的な制度(懲罰的損害賠償、クラス・アクションなど)

悪質な違法行為には実質的な損害の3倍の賠償を認めることが出来る。それによって、悪質な行為の抑制にもつながる。

5.弁護士人口の多さ

◆日本社会への示唆

ロースクールの導入により、日本も訴訟社会になってしまうのだろうか?

すでに日本でも国民の権利意識が高まりつつあるが、国民性や社会の風土はそうそう変わるものではないので、米国のような件数になるとは考えられないので、まずならないだろうという見解。

◆質問

きっとみなさんが興味のあるところだと思うのですが、勇気を出して聞いてみました。

「講義の中で、国民が権利意識をもち、それを主張できるのはむしろ良いことだと言われていましたが、昨今のマクドナルド裁判、タバコ会社対肺ガン患者というような、一般的に見てばかばかしい裁判と言うのがアメリカでは非常に多いですが、これは私たちから見ると時間と裁判費用などの無駄であり、間違った権利意識ということで問題にはならないのか。」

答:確かにバカバカしい裁判も多いが、件数自体が多いのでこのような裁判が一定数含まれるのは仕方がない。

・ ・ ・

一定数って・・・それにしてもちょっと多すぎやしませんか?(^^;;



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