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金子航 /小松正明 のブログ [全165件]
みんな泣いていた。もうすぐ41歳のベテランははなをすすり、いつも笑顔のエースは真っ赤な目で声を詰まらせた。マウンドでほえる20歳の若者も、敗北が決まる直前に、ベンチの奥で目を潤ませていた。第2ステージ敗退から、もう5日。それでもテレビでは野村監督のラストゲームになった試合を、繰り返し放送し続けている。それだけあの試合は監督、コーチ、選手の思いが凝縮されていた。 さまざまな思いが入り交じっていた。「てっぺん」を勝ち取りたい気持ち、野村監督と長く野球をしたい気持ち。それが同時に断たれた瞬間、感情が一気に噴き出した。全体がそろって涙するチームなど、極めて珍しい。1人1人思いは違えど、目標は日本一あるのみ。月並みだがまさにチームは一丸となって戦い、敗れた時もまた1つだった。 今日29日、ドラフト会議が行われた。楽天にも続々と新たな戦力がやってくる。そのうち2人に楽天のイメージを聞くと「CSでは特にチームが一丸になって戦っていた気がします」と、同じ言葉を口にした。楽天というチームの一体感は、まだユニホームにも袖を通していない、来年のルーキーたちにも届いていた。 野村監督が去り、1軍コーチ陣も大多数が退団した。「野村楽天」は、強烈なインパクトと球団史上最高の成績を残して終了した。あと3カ月も経てば、新監督のもと、新たな楽天が久米島でスタートを切る。次なる目標はリーグ制覇と日本一。もちろん技術の向上も必要だ。それでも「野村楽天」最終戦で見せた一体感なくしては、目標達成はありえない。より強い集団となるために、10月24日を忘れてはならない。 【小松正明】
5月30日以来の2位浮上を決めた1日、今季4勝目でお立ち台に上がった川岸がスタンドに向かって呼び掛けた。「まだ空席があります。球場に来て、僕らに声援を送ってください」。ヒーローインタビューでは「たくさんの声援、ありがとうございます」が決まり文句だ。Kスタ宮城は2万人の収容が可能。この日の観客数は1万4619人。CS進出へマジック2とし、地元CS開催も現実味を帯びてきた中、だれも座っていない客席を目にして、思わず口をついた言葉だった。 選手にしてみれば、今こそがこれ以上ない「見せ時」だ。Bクラスに沈んだ4年間を耐え、ようやくつかみかけているAクラス。チームも勢いに乗り、好守好打を連発している。苦しい時期も変わらず応援してくれた地元ファンの大声援の前で、悲願を達成するのが本望だ。だがCSマジックが着実に減っても、スタンド全体が揺れると思えるほどの大観衆にはなっていない。これでは選手が寂しさを感じるのも無理はない。 私自身、野球記者としての仕事の中で、歴史的な瞬間に立ち会えることを幸せに感じている。今年は球団初のCS進出がもう目前。こればかりはその時、その場所にいない限り、現場の興奮は味わえない。昨年はシーズン最終戦で、ソフトバンク王前監督の勇退を見た。「涙雨」の中、かつてライバルとして戦った野村監督が、試合後に花束を贈呈した。大スターの引き際という歴史的瞬間を見られたことは、私にとって大きな財産の1つだ。 野球記者を10年続けても、1度も優勝に立ち会えない人もいる。球団創立5年目でのAクラスは、常勝球団の優勝にも十分匹敵する瞬間といえる。たとえ決定当日でなかろうとも、その過程を体感できるのも今だけだ。1試合でも生の興奮を選手と共感してほしいと、野球ファンの1人として願っている。 【小松正明】
22日のオリックス戦で、永井は7回6安打3失点で7敗目を喫した。今季すでに11勝を挙げて芽生えた自信もあったのか「もったいなかった」と唇をかんだ。試合後、帰り際に自分も含めた報道陣に囲まれると、敗戦のショックも感じさせず、はきはきと質問に答えた。「残りの登板機会も少ないですからね」。早くも気持ちを次戦へと切り替えていた。 成績の向上は、そのまま人間性の向上でもあった。昨年のオフに寮を出て、仙台で一人暮らし。つい暴飲暴食になりがちだが「食事は大事ですから」と節制している。管理栄養士の大前さんからも「永井君はしっかりしてるから」と太鼓判を押されている。自宅では商売道具の右ひじのケアも欠かさない。大人としての自立が、言葉にも出ている。テレビ出演など、表に出て話すことは得意ではない。それでも今年はお立ち台でもしっかり自分の言葉を発するようになった。 シーズンはCSを含めても残り1カ月。永井の登板機会は多くても4、5試合だ。「とりあえずシーズン。CSに行ったら、もうなんでもありですから」と、スクランブル登板にも意欲を見せた。後輩の田中とともに、投手陣で1番の成長を見せた男の秋に、改めて注目したい。 【小松正明】
札幌ドームに来ると、試合前練習のアップの輪に、中島がいたので驚いた。ソフトバンク3連戦、僕は休みで、福岡にいなかった。中島が合流するって聞いていなかったのもあって、ビックリ。「ファームでも2試合しか出ていないんですけど、呼ばれました」と、昇格した中島本人もビックリした様子だった。 左手の平の骨折。8月初旬だったか。泉に行った際に、周囲は今季中の復帰は難しいと、見通しを話していた。右打者がバットを握りしめる部位だけに、完治に時間がかかるという。今日も「まだ握力は10キロ減です」と100%ではないと言うが、何という回復力だろう。全快ではないため不安そうな顔をしていたが、それでも、1軍はうれしいもの。笑顔で試合に臨んでいた。 試合は敗戦。ただ、中島は2回の復帰打席で右前打。チェンジアップをうまく右前に落としてチャンスを広げた。日本ハム武田勝のチェンジアップは、楽天の右打者が大の苦手にしている球種。左キラーの面目躍如だった。中島も「ほっとしました」とポツリ。明日のスウィーニーはベンチスタートかもしれないが、明後日は藤井が先発と予想される。藤井ならば十分スタメンの可能性がある。今度は「右超え」を期待しよう。【金子航】
山村が投げた。1軍のKスタ宮城で。07年9月30日、ソフトバンク戦以来。実に703日ぶりのカムバックだった。 だが、試合後の山村には2軍行きが通達された。1回無失点。この日の内容が悪かったためではない。1軍昇格した時から、3日に抹消することは既定路線だった。 理由は「連投ができないから」。それを承知で1軍に上がり、1試合に投げて、また2軍に戻った。明日3日から左投手との対戦が続くこともあって、右打者が手薄になる。右の野手を補強することも理由だった。山村は「家族には言っていなかったんだ」と、自宅で待つ家族に明日2軍落ちする見込みなど説明していなかったと言う。 1試合だけで2軍落ち。家族が心配するのを山村は危惧していた。何しろ703日ぶりの復帰。野球ができなかった時も、いっしょに悩んでいたのは家族だから。「(2軍落ちの予定を家族に)言っていたら、今日だって見に来ていたよ。でも、学校があるからね」と苦笑いした。 橋上ヘッドコーチから10日で戻ってくるように通達されたと山村は言う。その間に、連投、イニングまたぎの登板、その2点をクリアするのが宿題という。橋上ヘッドも言った。「終盤の戦力としてね。本来の力が出せれば、1イニング任せられるんだから。秘密兵器? まあ秘密ではないけど」と。CSへ向けた9月中旬以降の戦いの力にと期待を込めていた。 「10日後にどうなるか分からないけど。やってみるよ。9月30日のヤフードーム以来ですね。投げられたのは良かった。支えてくれた人たちに感謝。感謝ですよねえ。ここまでくることができたんですから」。話す表情は、復帰にしみじみ30%。2軍落ちにぶ然30%。今後に不安30%。マウンドの快感10%。複雑な顔で球場を後にした。【金子航】
緊迫した順位争いこそが、経験の少ないチームを育てる。残り38試合。どれだけ長くても、あと2カ月足らず。初めて体感する負けられない日々の連続こそが、若手選手の能力を飛躍的に向上させる。それをだれよりも痛感するのは、他ならぬ山崎武だ。 球団創立5年目。ようやくこの時期まで順位争いができる。「やっぱり緊張感があるところでやりたいよね。今はイーグルスが強くなる課程だから。何とかクライマックスシリーズには出たいからさ」。自分が43発打っても、エースが21勝しても届かなかったAクラス。春先にいくら首位を独走しても、この時期に蚊帳の外では何の意味もない。「若い選手にしたら、いい経験なんじゃない?ドキドキしてさ」とほほ笑んだ。 優勝を経験したメンバーは、ごくわずか。楽天誕生後に入団した選手は、8月末の上位争いすら経験がない。それだけにプレッシャーのかかる試合を1つクリアすることで、少しずつ自信を深めていく。40歳の大ベテランでさえ「自信のとなりに不安があってさ。心が数秒ごとにコロコロ変わるんだよ」と、苦しくもやりがいのある日々を思い出す。重圧をはねのけ本来のプレーができるか。押しつぶされて自分を失うか。乗り越えた先にだけ、歓喜のゴールが待っている。 【小松正明】
高卒ルーキーの辛島航が13日、ソフトバンク戦で1軍デビューを果たした。 負け試合の中2番手で登板し、3回4安打2失点。 数字だけ見ればホロ苦デビューだが、内容は十分だった。 疲れの出た3イニング目に連打を浴び2点を失ったが、 最初の2イニングは1安打無失点。 まだ18歳の若者が、堂々とした投げっぷりを見せた。 初登板の緊張より強気が勝った。 6回1死から右の中西を迎え、カウント2−3。 嶋は外角の直球を要求したが、首を振り内角への直球を選んだ。 「右打者の時は内角の方が投げやすいんで」と笑って明かしたが、 結果は中西の動きを止める見逃し三振。 173センチと小柄な左腕が、マウンドではどっしりとしていた。 高卒ルーキーのデビューに、翌朝の2軍は辛島の話題で持ちきりだった。 泉の練習場に顔を出すと、若手選手から次々と「ワタル、どうでした?」と聞かれた。 育成担当の吉田投手コーチも「よかったね。これからも応援してあげてよ」と ニッコリ微笑んでいた。 だが選手たちも笑ってばかりはいられない。 プロに入ってまだ1年にもならない後輩に先を越され、悔しくないはずもない。 片山は「次こそ僕が上に行きます」と言い残すと、グラウンドに駆けだして行った。 先輩、コーチのアドバイスは勉強になるが、1番の刺激となるのは後輩の活躍。 1年目から即戦力として働いた田中ならまだしも、 まだまだ2軍で鍛える時期と思われた後輩・辛島の活躍に刺激されたのは、 片山だけではないはずだ。 辛島が1軍昇格したのは9日の午後。 イースタン・リーグで断トツの最下位だった楽天の2軍は 翌日から5連勝と意地を見せ始めた。 まだまだ夏の暑さが厳しい季節。 1軍メンバーたちも疲労の色が日に日に濃くなる。 「ワタル」に刺激された若手たちが、不振に陥った選手に代わり 昇格即活躍するようになれば、悲願のAクラスもより現実味を帯びてくる。 【小松正明】 |一覧| |
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