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カテゴリ:近畿地方
喫茶店巡りで田辺市の恐るべき潜在力に圧倒されたので、まだ田辺を知らぬ方のためにこの町はどういう町であるかに簡単に触れておくことにします。田辺市は、和歌山県のほぼ中央に位置する近畿でもっとも大きな市で、紀伊田辺駅のあるのはその西側、太平洋側になります。言わずと知れた武蔵坊弁慶、合気道の創始者・植芝盛平、後半生を田辺で過ごした南方熊楠が田辺の三奇人とか三偉人とされているようで、傑物が輩出される興味深い土地です。熊野本宮大社や熊野古道などの熊野信仰の拠点であり、平安時代から、交通の要衝として栄え、江戸時代には熊野の城下町として発展しました。 紀伊田辺の喫茶店のすばらしさにすでにやや満腹状態となっていたのですが、まだまだ夜は長くこのまま一日を終えることはできません。ホテルにチェックイン後は早速町に飛び出すことにします。当然喫茶店探しに合わせて酒場散策にも余念ありません。ただ田辺市の場合は他の地方都市とはやや勝手が違っています。事前の調査ももちろん多少はしてきていますが、実際その町に置かれてみると各種情報にはまるで触れられていなかったような驚くべき出会いが待っているのでした。しかもこの町は店そのものもさることながら、複雑に入り組んだ飲食街に迷い込むとその町自体に魅了されます。 その飲食街は、味光路といういささか安直というか、実際の印象とはかなり違和感のある名付け方がされていますが、この際そんな小さなことには目をつむりましょう。旅行から帰って1か月後の今日になってようやく味光路の振興会によるページ(http://www.ajikoji.jp/)の存在に気が付いたのですが、できることならあえてこのページ、特に全体マップを見ないでさ迷い歩くことをお勧めします。このページに町の魅力がコンパクトにまとめられているので引用します。 -- 味光路とは? JR紀伊田辺駅の西側、約200m×150mの狭いエリアに、輝く路地が連なっています。全国初の公道に照明が埋め込まれたその場所は、「味光路」と呼ばれる200店舗以上もの飲食店が軒を並べる和歌山県随一の飲食街。 自慢の割烹や居酒屋をはじめ、スナックやバーでいっぱい! キラキラ光る路の先に楽しい時間が待っています! 狭い路地を探検しよう! 古くからある飲食街なので、車も通れない狭い路地にお店が集まっているのが味光路の特徴。さあ、路地をたどって味探検をしてみよう! 味光路の歴史 古くは熊野古道大辺路が通り、当時の中心街だった長町(現在の栄町・北新町)に続く街道沿いでもあった味光路。昭和初期にできた紀伊田辺駅に近いこともあり、多くの飲食店が集まりました。 地元民に愛され、現在でも多くの割烹・居酒屋・スナックなどが営業しています。 -- どうでしょうか。ぼくなどは今すぐにでも行きたくなってしまいました。太田和彦は盛岡の櫻山参道人情商店街を「仙台の東一連鎖街なきあと、日本一の飲み屋横丁と断言」していますが、確かに先日訪れた櫻山参道人情商店街は風情があって大好きですが、田辺の味光路は、規模も店舗数も圧倒的に凌駕していますし、なにより楽しいのはふいにぬけ道や横道を気持の趣くままぶらりと歩いていると、その道が思いがけない場所につながっていたり、行き止まりかと思うと飲食ビル内を通り抜けられたりと迷路をさまよっているような気分になります。一昔前に流行ったロールプレイングゲームで迷宮で武器を買ったり食事をしたりといった行為が現実のものとなっているのです。 軽い興奮状態で町を彷徨ったのですが、界隈でもとびきり枯れた佇まいの「居酒屋 徳乃」というお店がありました。細く深い入口までのアプローチをわくわくどきどきしながら進みます。外観から受ける印象と異なり店内は小料理屋風。奥に長く続く座敷席がユニークです。カウンターに掛けて和歌山の名産の柑橘類を使ったすっぱいサワーをいただきます。さっぱりしていてうまいですねえ。お通しやアジ酢なんかも値段に見合わないほどの非常に丁寧で美しい盛付けがなされていて、当然おいしいのでした。全般に値段も安くすごい実力のある居酒屋さんでした。名店といっても過言ではないかもしれません。 細い和風の情緒ある小道を歩いていると何やらえらく活気のある店があります。「しんべ」というお店です。こちらは酒場というよりは大衆向けの料理屋というのが近いかもしれません。それでもちゃんとカウンター席もあります。お通しのアラ煮がすごいボリュームであまり出されたものを残すことはないのですが、これは食べ切れませんでした。店の名物エビ団子のハーフサイズをもらいます。これもまた熱々でエビの味も濃厚でなかなか。一人客というのがあまりおらず、一人ゆっくりくつろいでという使い方にはあまり適した店ではないのでしょうね。そうこうする間にもお盆休みで集まった家族や仲間たちの団体さんが続々と勘定を済ませています。大人気なのも納得のお得なにぎやかなお店でした。 横丁の味わいのあるボロい飲食ビルが通り抜けできるようなので、ふらりと通過しているとちょっと感じのいい伊勢があるので覗いてみることにします。「磊風八(らいふうや)」というお店。なかなか上品で暗い照明を当てたりするスタイルの今時のおしゃれな感じのお店でした。肴もヴァラエティーがあって、こうした居酒屋が好きな人にはいいかもしれませんが、ぼくにはやや物足りない店でした。 まだまだいくらでもぶらぶらしていたかったのですが、翌朝も早くから喫茶店を巡るつもりなのでこの辺で引き揚げることにしましょう。ホテル方面に向かっているとなんでもない普通の店「居酒屋 あじみ」がありました。狭い店ですが、カウンターも小上がりも目一杯に人が入っています。腹一杯なので飲物だけをお願いしたらイカの塩辛などをサービスしてもらえました。こういうちょっとした気の利かせ方をしてくれるから人気があるんでしょうね。 ともあれ、紀伊田辺の酒場と飲み屋街はかなりハイレベル。しかも喫茶店もすごい。明日は見事な喫茶店が登場です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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