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カテゴリ:中部地方(北陸・東山・東海)
さて、沼津に立ち寄った理由はいくつかあるのですが、その最たる目的はどうしても行ってみたいバーがあったからです。バーのお好きな方であれば太田和彦をはじめとした方がお書きにもなっているのでよくご存知かと思いますが、2軒の歴史あるバーが沼津にはあるのでした。先ほど「たか木」で女将さんにこれからどうするのと聞かれ、バーに行くと言ったらすらすらと5,6軒ほどの名を挙げられたのでした。もちろんこれから向かう2軒もそこに含まれており、たまに店が跳ねると夫婦そろって出向くこともあるそうです。宇都宮などバーの良店があることで町興しにも一役買っていますが、沼津も規模こそ小さくとも負けず劣らずの名店があるようなので、負けずに対抗してみたらどうかとお話していると矢も楯もたまらなくなり急ぎ足で一軒目に向かったのでした。
まずは「梅邑バー」です。沼津駅前のアーケード商店街の仲見世商店街、新仲見世商店街を抜けた先に北口の呑み屋街のようなビル中呑み屋横丁があります。その一軒がまさに「梅邑バー」、まったく知らずに飛び込むのであれば間違いなく躊躇したであろう、危うげなオーラを放っています。ここ以外はネオンさえ灯らぬ位廊下を進み扉を開けて階段を上るとその店内は想像以上に正統派のバーらしいクラシカルな品格さえ感じさせるお店だったのでした。入った瞬間に好きになってしまいました。想像ではまっすぐのカウンターだけのお店だったのが、実際にはテーブル席もある造り。盛岡の「バー バロン」や仙台の「COCKTAIL BAR 門」といった老舗バーに似ているように感じられました。店の主はまさしく絵に描いたような老舗店に相応しい風貌と風格を持つご老体で、矍鑠とした物腰と上品な語り口にまさに酔わされます。アシスタントの女性もまた凛とした表情でありながら優しげな笑みを絶やさない方でひととき別世界に来たかのような気分を味わえました。ここでS氏はリタイア。昨夜以来再び一人になったぼくは念願がひとつ叶って十分満足ですが、欲を張ってもう一軒立ち寄ってみることにしました。 もう一軒のお店は「ビクトリー」です。タイル張りの立派な建物の1階は寿司屋、「梅邑バー」同様2階に伸びる細い階段を上がると想像以上に広い空間が広がっています。こちらはテーブル席が主体でカウンターは10席程度だったでしょうか。団体客に加え、多くのお客さんは2,3人でやって来ているようです。誰もいないカウンターに独り腰掛けるとなんだか店を独占した気分になれます。バーテンダーの方とも一対一で対峙することになるので、カクテルを用意する手さばきをぼんやり眺めるという贅沢な時間を過ごすことができました。団体向けのおつまみを作り終え、前掛けを外しながら険しい表情から一転して無表情すれすれのかすかな柔和さを湛えた表情に瞬時に切り替えた初老の方がいます。どうやらこの方がマスターのようです。次第に酒がまわるにつれ団体客の声が気になるようになってきました。バーはこうでなければならないとかいう決まりごとがあるわけでもないのでしょうが、やはりぼくにとってはオーセンティックなバーは静かすぎるくらいがしっくりくるのでした。そんなことを言ってみたりしますが、ぼくも地元のバーではけっこう賑やかだったりするからな、独り客の方のために今後は慎もうなんてことを今思ってみたりしたのでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014/05/14 08:34:26 AM
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