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カテゴリ:江戸川区
前々から分かってはいたんですけどね、あまり語られることはないけれど新小岩って都内でも屈指の酒場の町なんですね。しかもぼく好みの店の多さということでは、ベストな町かもしれません。もちろん堀切菖蒲園も大好きだし、東十条の底知れなさも捨てがたくはありますが、圧倒的な質量で新小岩はこれらの町を凌駕しています。その底なし沼のような蠱惑的な町に踏み込んでしまっては、無事には抜け出ることが叶わぬのではなかろうかという恐怖からこれまで無意識のうちに避けてきたのではないかと言うと嘘っぽいし、まあ実際のところ嘘っぱちなのですが、底が知れないというのはまんざら大袈裟な話ではなく、実際気の向くままに知らない通りを歩いてみると、これまで存在すら気付かずにいた酒場と出逢うことしばしです。行きたい酒場があったら強く心に刻んで、脇目も振らずに一目散にその店を目指さなければなりません。そうでもしないと幾多の誘惑にコロリと流されてしまうのです。
そんな訳で、この夜は、悲壮なまでの覚悟を決めて目的地を目指します。 焦がれるほどに愛する酒場「さがみや」がどういうわけだか見当たらず閉店してしまったかと落胆するやその先の通りと誤っていたことに気付きホッと安堵の息をつくと、いつこれが現実の出来事になりかねぬと、気持ちが揺れるのを止められそうになくなりますが、そんな浮気心を起こせないように予防線を張っておいたのでした。鋼の意志を持つS氏を伴っていたのでした。「さがみや」を泣く泣く素通りして向かったのは住宅立ち並ぶ中、近所の迷惑など気にも止めずーきっとそんなことはなくて近隣にはもつ焼の付け届けでもしてるのでしょうー盛大に煙を吐き出しているもつ焼店に向かうのでした。 そうです、向かったのは「やきとり おばこ」です。それにしてもこの店の煙の吐き出し方はただ事ではありません。煙突とまでは行かないまでも天に向けて換気するのが一般的ですが、こちらのお店は焼き場から噴出した煙はそのまま窓外へと放出され、ちょうど風向きも良かったのでしょうが地上1メートルの高さで、道に沿って水平に流れていくのです。こんな芳しい厄介者を振りまかれては近所の方は黙って入られないことでしょう。店内はカウンターに相席必至の長テーブル、更に奥にはもともとは恐らくに店の方たちの居住空間であったと察せられる居間が座敷として供されており、さらにあとから後から吸い込まれていく客の去就を見守ると恐らくは店の方たちの寝室であったに違いなかろう奥の間もあるようなのです。さてお通しのお新香をつまみながら啜るチューハイは新小岩の南口に相応しく無色透明のドライなものであります。タン刺し誠に結構、トロトロのシロ、濃厚で奥深いタレと相まってバツグンです。消費税増税のためか20円の値上げは便乗値上げではないかという意見もあろうことと邪推しますが、このデカさで130円は文句を行っては罰が当たります。その頃には「さがみや」のことなどすっかり脳裏から消え去っていたのでした。 さて気を取り直すためアーケード街をぶらり散歩。どこぞやで噂を目にしたことのある「伍市」を見ると散歩などもはやどうでも良くなって早々に暖簾を潜っているのでした。外見にはありふれ凡凡の普通の居酒屋ですが手前のテーブル席の先にコの字のカウンターが待ち受けているのが嬉しいところ。この造りはなかなか、いやすっごくいいアイデアであります。いずれぼくも店を出す折には盗ませていただきます。このカウンター、座ってみたいという気にもなりますが眺めているのもとても良いのです。言ってみれば利用に供するためのカウンターではなく、鑑賞の対象としてのカウンターといったところでしょうか。肴のことはあまり記憶にありません。ただ覚えているのはカウンターの常連さんたちには出されないらしいお通しがわれわれには出されたということ。好きなモズクなので特に意見があるわけではありませんが、備忘のために書き添えておきます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014/07/29 08:34:42 AM
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