先般行きそびれてしまった錦糸町の酒場があります。その酒場とは特に屋号らしきものを持たずシンプルに居酒屋を名乗っているようでありますが、それては何かと不便であろうと名物をもって店名としているということが酒場放浪記で放映されたのはつい先だってのことだったはずです。やはり先般もそこを目指して店のあるロールプレイングゲームのダンジョンの地上階のような花壇街に訪れてその際に随分と綿密にこの雑居ビルを散策したものだから、もはやその目的の酒場に入ることなどどうでも良くなりつつあったのですが、誘われたとあっては断る理由もないのでありました。
改めて断るまでもありませんがそのお店は、とりあえずは「馬刺し 居酒屋」と番組にならって記しておくことにします。L字の窮屈なカウンターと小上がりに2卓あるだけの狭いお店なのでまずは入れた事に喜ぶことにします。けして安いお店でないことは当然分かっていることなので、ついつい呑み方も控え目になります。熊本への寄付の足しになるとは思わぬけれど、少しでも消費の面で支援したいという気持ちがぼくにだって少しはあるというものです。あまり品が良いとは言えませんが、先頃会津て頂いた量の1/3の量で3倍の値段とかいうことも知ってて入ったのだから気にはしません。そんなことはどうだっていいのです。ただ困った事には、カウンターの背後から鳴り響くテレビの音があまりにもやかましいのです。しかもそこで流れるのは酒場放浪記の放映回を録画したものがエンドレスで繰り返されるのです。しかもカウンターの向こう側からは主人がさも誇らしげにこれ、うちが紹介されてるんだと来る客ごとに語って聞かせるものだから、おちおちくつろいで呑む気にもなれぬのでした。こうして一見で来てる客はほぼ例外なく番組を見ているはずだから店であえて再生してみせる理由が理解し難いのです。まあ遠からず常連さんが忠告してくれるのでしょう。訪れるなら主人の興奮が覚めた頃にしておくのが無難なようです。