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カテゴリ:神奈川県
喫茶篇は、呆気なく終わってしまいましたが酒場篇には、もう少しお付き合いいただかざるを得ません。追浜を出て余計な寄り道をするつもりなどさらさらなかったのですが、目が覚めてそこが京急久里浜駅だとしたら立ち寄ってみることに何ら躊躇すべき自由など有りはしません。久里浜駅に下車したことがあったっけなんて思う間すらの猶予すら惜しく思われます。感慨に浸ったり、物思いに耽って見せるのだって今ここでやる必要はないのであります。そんなの帰路の車中で幾らでもできてしまうし、そうでなくとも身体の自由がままならなくなった時の慰みにでも取り置いておくので十分です。駅前立ってみて無駄な時間を費やさなくて良かったと思うのです。そこには見覚えのないショボい光景があるばかりで、これはここで下車したのは誤りだったかと後悔するのですが、足の運びは止まぬし、むしろ何者かに急き立てられるように急ぎ足となるのでした。三浦らしい閉鎖的な窪地に無理くり造成された町と思ったのですが、さにあらず、すぐに古びているけれど、活気もあって変化にも事欠かぬ楽しいアーケード街が出現しました。身を縮めるように設けられた駅前にこれだけのスペースがあるなら―実際商店街の無辜側には大きな街道が引かれています―、開放的な町並みにしても良さそうなものだけれど、それでもぼくは駅に寄り添うようにごちゃごちゃっと寄り固まったこの町をすぐさま好きになったのでした。
そんなアーケード街でひときわ目に付くのが「くりはま家」です。この閉鎖空間で誰に遠慮がいるものかとばかりに盛大に焼き煙を放っています。そんな店の前には夕食の一品というか旦那さんの晩酌の肴としてなのだろうか焼鳥を買い求める主婦を筆頭に、自ら持ち帰って呑むためだろうか大量に購入するサラリーマン、女子高生や小学生も列をなしています。そんな持ち帰り客を眺めながら呑むことができる立ち呑みコーナーが設けられているのが素敵です。しかもそこでは店頭には並ばぬ変わり串も数多く、ここなら月曜から金曜まで通ったって飽きさせぬのではなかろうか。しかし、この季節はそれもまた情緒と理解するしかないのだが何にしても暑くて敵わぬのでした。まあ暑さは汗を拭えば凌げる。しかし、焼き台前で夥しい量の串を次々と焼き上げる方たちの暑さは並のサウナなど比較にならぬ苦行であるはずです。そして実に不埒で申し訳ないのだがそんな彼女らの姿を眺めるのが堪らなく楽しいと告白せねばなりますまい。んっ、彼女らだと、そうなのです、しかも若い娘さんたちが汗ミドロになって時には怒声を若い男に浴びせる姿を盗み見しながら呑むこの甘美のひと時たるや何ものにも変え難いのです。もちろん焼物もユニークな食材が大胆にアレンジされていて値段の幾倍の価値があります。 何軒か味のある酒場を見掛けましたがどうやらまだ開店には間がありそうです。都心からの帰宅者が町に戻るのには確かにまだ早いようです。「焼島 お島」もやはり戸を開け放ったばかりで、まだお客を受け入れるだけの用意はできていないようです。それでも暖簾をくぐるとさっと出迎えの態勢を整えてくれました。カウンター席のみの隅に腰を下ろし、酒を頼みます。この抜群の風情にあっては、冷奴でもあれば文句はありません。夜になって未だ熱気冷めやらぬのですが、不思議とさわやかに感じられます。開け放った戸の外を時折通り過ぎる人たちがいて、店内を伺っているらしい。彼らは気になっているというのにどうして入ってこないのか。ぼくはいつもそれを怪訝に思うのです。こここそがぼくにとっての酒場の原点ではなかろうかとすら思ってしまう。そんな思いにオブラートを被せてそっと賛辞を女将とその娘さんらしき方に語ってみると、少しばかり怪訝そうな表情を浮かべられるものの満更でもなさそうな笑顔を見せてくれました。だけれどこういう店で長居しては嫌がられそうだし、第一不粋であります。自分でも呆れるほどにあっさりと席を立ち、次なる今回の旅の最大の目的地に急ぐのでした。 他にもこんな素敵な呑み屋や呑み屋街があったりして、これはもういつかまた久里浜を訪れずにはいられません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017/11/20 08:30:04 AM
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