新小岩には、芳ばしい風情の中華飯店が数多く存在します。と知ったかのように書いたけれど、これは憶測によるもので、実際に古びた店舗をそこここで見掛けはしたもののそこが現役かどうかは分らぬだけでなく、期待というか切望めいたものが言わせしめたものとご理解いただきたいのです。そう、新小岩にはまだ知らぬ渋い中華飯店が相当数存在すると思っているし、そうあってほしいと願ってもいるのです。事実、近隣住民である知人情報によるとかなり香ばしいお店があるとのことで実はここに来る前に立ち寄ったりもしたのだけれど、残念なことに中休みに入られたようでした。そこはかなりハイレベルな物件であることから近日中にお邪魔したいと思っているけれど、そう思っているお店がぎょうさん存在するわけでいつのことになることやら、それまで壮健であられんことを祈念するばかりなのです。ところで、中華料理店は様々にカテゴライズできそうなのですが、その一つとしてファミリー中華というカテゴリーを設けてもよいのではないかと思っています。ぼくなどが思わずともとっくに分類を試みた方もおられるようであるけれど、とにかくぼくはこのファミリー中華、定義するのは厄介だけれど、ファミレス風に両親に子供たちといった家族連れで利用しやすいお店といった程度の意味合いではあるけれど、ファミリー層が居心地良い風に適度にデコレートされているのが特徴であります。そんなお店が新小岩にあったことを思い出したので行ってみることにしました。お隣には、かつて訪れた家族連れなど寄せ付けない風情のとんかつ店があるので、ついそちらに目が行ってしまい見逃しがちですが、平日のランチ時を外して訪れたのにそれなりの集客があったので、地元の方には可視化されたお店なのでしょう。
そこは、「やま平飯店」というお店で、一見したところではちっとも特徴の感じられぬごくありふれた外観ではあります。しかし、一歩店内に足を踏み入れると、なるほど、ちょっとシャレたランプシェードなど一般の中華飯店とは一線を画することが感じ取れるのです。席もソファ仕立てなのもゆったりとできて、勤め人だと寛ぎ過ぎてしまってランチ時に訪れたとしたら午後の勤務に差し支えそうであります。品書きを眺めるとお値段は案外強気なのですが、ファミリー層というのは外食に案外出し惜しみしないもののようです。ビールのお供にはちょっぴりの春雨サラダが添えられて、こういうのはほんの少しでも嬉しいものです。揚げ豆腐の炒め物に具沢山の固焼きのあんかけ焼そばを注文します。何とはなしにこちらは炒め物が得意そうに思えたのですが、正解だったように思います。全般に見た目通りの濃い目の味付けがビールを進ませてくれます。ここにしかないという特別なメニューは見受けられなかったようですが、ファミリー中華にはそんな特別な品など不要なのかもしれません。こうした駅からはちょっと離れた場所にあるようなお店の時間がゆっくりと流れるようなところが、ファミリー中華の魅力なのだろうなあと思うのです。