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休憩場

休憩場

第10話

第10話【黒き鎧】









ウインチェスターの銃口に集まっていた炎が、爆発と共に発射された。炎は形を成し、弾となってロイに向かって飛んでいく。その炎の弾を、ロイはその場でしゃがみ込んで避けた。

2発、3発と、ジョーが続けてフレイムブレッドを放った。転がるようにロイは避け、一気にジョーの目の前まで接近した。そして長く伸びた黒い爪で、ジョーの太腿を切り裂いた。

「ぐぉっ!」

血を噴き出す両方の太腿。足を駆け巡る痛みにジョーは思わずよろけてしまった。その隙を突いてロイが胸に蹴りを当てた。

観客席と舞台を分断する壁に、ジョーは激突した。全面に皹が入る壁。体はめり込み、壁にその跡が残っている。地面に倒れたジョーはウインチェスターを肩に担ぎ、苦しそうに立ち上がった。背中を走る激痛に、ジョーの顔が歪む。

そのジョーの様子を、観客席から心配そうに蜥蜴メンバーが眺めていた。特にメンバーの中で心配そうにジョーを見ていたのは、ケルだった。

「だ、大丈夫っすかねぇ、リーダー・・・。このままじゃ負けちゃいますよ・・・」

誰に言ってるかのも分からないケルの呟き。祈るように手を合わせているケルに、サモ、ハン、キンポが呟きに答えた。

「馬鹿野朗。リーダーはゼッテー負けねぇ」

「ストリートファイトで無敗のリーダーがここで負けるわけねぇだろうが」

「今は信じろ・・・。そうすりゃリーダーは勝つさ・・・」

「サモさん・・・ハンさん・・・キンポさん・・・」

3人の言葉に励まされ、心配を振り払ったケル。

――――勝って下さい、リーダー・・・。

ケルは心の中で何回も呟き、そして祈った。そしてリーダー・ジョーの事を見た。

「痛てぇじゃねぇかコノヤロウ・・・」

激痛で腕が震えるジョー。それでも力を振り絞り、銃口をロイに向けた。銃口に炎が集まり、攻撃態勢が整った。

「また炎撃つつもりかよ・・・。こっちも避けるの大変なんだからな」

「へっ・・・。なめた口利きやがる。これから撃つやつは、お前が言う炎とは一味違うぜ・・・」

ジョーの震えた銃口から、炎が爆発した。ロイはさっきと同じように、しゃがんで避けようとしたがしかし、それが出来なかった。

向かってきたのは弾ではなく、炎の壁。次第にそれは渦を撒き、巨大な炎の渦が真っ直ぐロイに襲い掛かった。

モグラの怪物・バラゴンを一撃の下に焼き殺したジョー必殺の技・フレイムストーム。

その巨大な炎故に避けることも出来ず、炎だけに防ぐことも出来ないジョーのフレイムストーム。ロイはどう対処すればいいか分からず、混乱していた

。避けることも防ぐことも出来ない。ロイの思考回路は炎が迫ってくる数秒間の間、活発に活動した。そしてロイは1つの答えを導き出した。

ロイは巨大な炎に向かって突っ込んだ。炎の渦が、ロイの体に襲い掛かる。だがロイはその刹那の瞬間に、渦の中に飛び込んだ。

「なっ!?」

ロイの意外な行動にジョーは驚愕した。渦を巻く炎から飛び出てきたロイに、ジョーは完全に反応できなかった。

そしてコモドドラゴンの大きな頭に、ロイの跳び蹴りが当たった。横に大きく吹き飛ぶジョー。地面に倒れ、ウインチェスターの銃口から炎が消えた。

「試合終ううう了おおお!ジョー選手、ダウン!よってブロリア・バトル・フェスティバル優勝者は、ビースト・ロイ選手であります!!」

司会の声がロイの名前を呼んだ瞬間、今までにない大歓声が観客席から響き渡った。屋根付きの席にいたトーカも、思わず立ち上がって喜んだ。

「やったぁ!ロイが勝ったぁ!」

トーカは席から走り去ってしまった。アクトが慌ててトーカの名前を呼ぶが、トーカの足は止まらない。

「あ!トーカのやつ無視しやがったな!」

「行かせてやりなさい。ロイ君の所に行くのだろう」

「トーカのやつ、民衆の前でロイの所に行ったらどうなると思ってるんだ・・・」

「そんなもの、後で何とかすればいいだろう。ロイ君が優勝して、トーカ姫はとても嬉しいのだからな」

クローディアスの柔和な表情で話されたアクトは、仕方なく口を閉じた。

一方、ロイは地面に倒れたジョーの側に寄っていた。ジョーはタバコを銜え、ターボライターで火をつけていた。煙を燻らしながら、ジョーは大の字で倒れていた。

「大丈夫か、ジョー」

「へっ・・・。大丈夫だからタバコ吸ってんだろうが・・・。全く、顎が砕けそうになる蹴りだったぜ・・・」

「悪いな。つい力入っちまってさ」

「このガキが・・・。まさかフレイムストームの中に突っ込んでくるとはな・・・。おめぇも体、火傷してんだろ?」

ジョーがロイの体を見た。黒の半袖Tシャツの裾が焦げ、上腕が火傷していた。しかしロイの顔は痛みで歪んでいなかった。

「火は殺傷力が低い。父さんが教えてくれたことの1つだ。それで渦になってる所に突っ込めば、全身を焼かれずに突っ込める。って、思ったわけさ」

「なるほど・・・。『当たって砕けろ』とはこのことだな・・・」

「いやそれは意味が違うと思うぞ・・・」

「いいんだよそんなこと・・・。大体当たってればそれでいいんだ・・・。それよりも後ろからなんか来るぞ、ロイ・・・」

「え?」

ジョーが笑いながらロイの後ろの方を見ていた。ロイも気になり、後ろを向いた。

「ロイイイイィ!」

ロイの体に飛び込むトーカ。抱きついてきたトーカを支えきれず、ロイは背中から倒れてしまった。

「ト、トーカ!?」

「優勝おめでとう、ロイ!私、ちゃんと応援してたんだから!」

笑顔で喜ぶトーカは、その細い腕でロイの体を抱きしめた。顔を真っ赤にしたロイは、ありがとう・・・、とただ一言、恥ずかしがりながら言った。トーカを抱えて、ロイは重たげに立ち上がった。

「リーダー!」

観客席にいた蜥蜴メンバーが、観客席を飛び越えて舞台に乱入し、ジョーの下へやってきた。いち早く駆けつけたケルが、ジョーの側へと駆けつけた。

「リーダー!大丈夫っすか!?」

「大丈夫だからタバコ吸ってんだろ、ケル・・・」

よっこらせ・・・と呟きながら、ジョーが立ち上がった。内出血を起こした腹を押さえながら、ウインチェスターを腰のフックに引っ掛ける。顔、腹、足、上から下まで痛みがにじみ出ているジョーの顔は痛みで歪んでいた。

「おいお前ら・・・、医者呼んで来い医者・・・」

「あ、ちょっと待ってて下さい」

トーカがそう言い出すと、腰にぶら下げていた白い棒を1つ1つ組み合わ始めた。飾りのついた棒を取り付け、白い杖が完成した。飾りから仄かな光が放たれ、ロイとジョーの傷が癒えていく。

ヒーリング。トーカのもっとも得意とする白魔法。

太腿から傷が無くなり、顔から痛みがなくなったジョーは、服を捲って自分の腹を見た。盛り上がった腹筋を青紫に染めていた内出血が、何も無かったように綺麗に消えていた。それを見た蜥蜴メンバー全員が驚いた。

「き、傷が無くなってますぜ、リーダー!」

「どうなってるんだこれ!?」

「白魔法だ。これぐらいでいちいち驚いてんじゃねぇよおめぇら」

銜えていたタバコを吸い終え、地面に吐き捨てる。2本目のタバコを銜え、火をつけた。

ジョーのタバコから煙が立ち込めたその時だった。闘技場の入り口から突如、大きな爆発が起こった。

入り口を覆う黒い煙。突然のことに観客席にいた人々は騒ぎ出し、立ち上がる人もいた。アクトもクローディアスも、席から立ち上がって様子を伺っている。

屋根の上にいたヨウコと忍者軍団も、その爆発に目が行っていた。夜目の効く忍者達、そしてヨウコは、煙の中にいる存在に気づいていた。

「御頭、煙の中に何かいます」

「そうだね。それも、かなり大勢で」

「いかが致しますか?」

「人助けに殿の許しなんて必要ないよ。戦闘準備だよ、お前達」

「御意」

黒い忍装束で身を包んだ忍者軍団「陽炎」。ジパング大陸で暗躍するその軍団は、殿と呼ばれる人物の命令に絶対服従の隠密部隊。ヨウコはその部隊の頭領を務めている、と言うのは本人の口から明らかにされていた。

ヨウコは赤い着物を脱ぎ捨てる。着物を着たビーストの少女から、忍装束をまとった忍者軍団のビーストの頭領へと、その姿を変えた。そして彼女は獣化を始めた。

背中から巨大な烏の真っ黒な翼が生え、手が真っ黒な鳥のものへと形を変え、肌が薄っすらとねずみ色に染まっていく。烏系獣人型ビースト・ヨウコの獣化が完了した。

忍者達は忍装束の背中の部分に仕込ませていた刀を抜き、姿勢を低くして刀を構えた。ヨウコも腰の部分に仕込ませていた2本の小太刀を抜き取り、構えた。

「あの煙の中の連中が出てきて、攻撃してきたらあたし達も動くわよ」

「御意」

ヨウコは忍者達に命令し、煙のほうを見た。ヨウコの黄色い眼は、煙の中に身を潜める何かを睨みつけていた。



入り口が突如爆発し、舞台にいたロイ達は黒い煙を凝視した。煙が晴れ、入り口が見渡せるようになったとき、そこにいた者に誰もが驚きを隠せなかった。

黒い鎧を身に着け、マシンガンを装備した魔軍勢・ノアザーグ。それが爆発した入り口にいたのだ。マシンガンを装備した兵だけでなく、長い鈎爪を装備した隠密系の兵もいる。そんな兵達のなかに、異常に長い鈎爪を装備し、赤い飾りがついた黒い鎧を身に着けた、ツンツンに立った髪をした男がいた。

その男は奇妙な笑い声を発しながら、兵士達を舞台に進ませた。ノアザーグを前にアルヘルリオの軍が動かないはずも無く、舞台の上は両軍の兵士で埋め尽くされた。

赤い飾りをつけた黒い鎧の男が、兵士達に向かって笑いながら話した。

「ヘーッヘッヘッヘ!ぃよう、アルヘルリオ軍達ぃ。俺はこの軍の司令官、ジェニーだ。ブロリア・バトル・フェスティバルの途中で悪いのだがぁ、この国を頂くよーん」

ベロリと口から長い舌を出しながら司令官、ジェニーは言った。その目立ちすぎる態度に、そこにいた蜥蜴メンバー全員が眼を飛ばした。

「あんだおめぇら!誰に物言ってんだゴラ!」

「闘技場ぶっ壊して、サーカス気取りか、あぁん!?」

「黒で統一してんじゃねぇよ悪趣味野郎どもが!」

「おとといきやがれブタヤロウ!」

「リーダーとのいい時間潰してんじゃねぇぞ田舎もんが!」

「その鎧剥ぎ取って素っ裸にしてやろうかゴラ!」

あらゆる罵声を浴びせる蜥蜴メンバーに、ジェニーはなぜか爆笑した。気違い、変人、身障、といった単語が、その場にいた全員の脳裏に浮かび上がった。

「ヘーッヘッヘッヘ!おおおおぉもしろいこと言ってくれるじゃねぇか。おい、こいつらぶっ殺せ」

「なっ!?」

ジェニーの言葉に、ジョーが思わず銜えていたタバコを落とした。ジェニーの横にいた、マシンガンを装備した兵士達が、蜥蜴メンバーに向かって一斉に発砲した。一瞬の判断で、ロイはトーカを抱きかかえて観客席に向かって跳んだ。

マシンガンから発射される弾の雨に、そこにいた蜥蜴メンバー全員が倒れた。血まみれになって倒れるメンバー達。ジョーだけが奇跡的に当たらずにいた。

否、ジョーに当たろうとしていた弾は全て、1番近くにいたケルの体に当たっていたのだ。

「き、貴様ら!我らも攻撃するぞ!」

「ヘーッヘッヘッヘ!お前ら、一斉攻撃ぃ!」

舞台にいたノアザーグ軍、アルヘリオ軍が衝突を始めた。盾で体を覆い隠しながら突進するアルヘルリオ軍。鈎爪を装備した兵士達が先陣し、一気に襲い掛かった。鈎爪兵士の攻撃に、アルヘルリオ軍は剣で立ち向かい、激しい戦いが始まった。

衝突が始まった舞台の上で、ジョーの側にいたケルや、サモ、ハン、キンポ、そして大勢の仲間達が、目の前で倒れている。まだ意識があったケルに気づき、ジョーは体を抱えた。

亀の体から人間の頭と手足が出た姿のケル。しかしその亀の体には夥しい数の風穴が開き、大量の血が流れ出ていた。

「リ、リーダー・・・・・」

「ケ、ケル!今は話すな!い、今医者呼んでやる!」

「もう無理っすよ、リーダー・・・。体から・・・力が抜けてきてます・・・」

「ケ、ケル・・・!」

「俺・・・・・リーダーのような・・・・立派なビーストになりたかったんっす・・・・。親がどっちも死んじまって・・・・・生きる道・・・無くした時・・・・蜥蜴の特攻服を着たリーダーを見たんです・・・。それでそん時俺、リーダーがスッゲーカッコ良く見えて・・・・・蜥蜴のメンバーになろうって、そん時思ったんです・・・・」

「もういい!もういいから話すな!このままじゃ、おめぇ死んじまうじゃねぇか・・・!」

「ハァ・・・ハァ・・・。メンバーの中で・・・俺・・・1番下っ端で・・・・・リーダーと話せた時もあったっすけど・・・・・それでも俺、役立たずで・・・・・だから最後ぐらいは役に立とうと・・・・」

「役に立とうって・・・・ま、まさかおめぇ、撃たれるとき、わざと俺の側に・・・」

ジョーは思わず大粒の涙を流した。頬を流れ落ちた涙がケルの体に零れ落ちていく。ケルも鼻水をたらしながら涙を流し、最後の力を振り絞ってジョーの手を掴み、そして話した。

「リ、リーダー・・・・生きてください・・・・・。俺や、サモさんや、ハンさんや、キンポさんや、メンバー達全員の分まで・・・・生きて・・・・・く・・・・・だ・・・・・さ・・・い・・・」

ケルの瞼が閉じると、ジョーの手を掴んでいた手が、ダランと地面に落ちる。ジョーに抱えられながら、ケルはその命を絶った。

「ケル・・・・ケル!?おい・・・ウソだろ・・・おい!ウソだと言ってくれ!ケル!!」

ジョーがケルの体を揺さぶる。しかし体は動かず、腕は地面に落ちたまま。首は揺さぶるときしか動かず、反応は無かった。

「そんな・・・こんな簡単に・・・皆・・・」

ジョーは自分の周りを見回した。白い特攻服が血に染まり、倒れている仲間達。無惨に死んでいる仲間達を前に、ジョーは泣き崩れた。そして、いままで一緒にやってきたいろいろなことが、ジョーの脳裏を巡る。

ブルーシャドーの街道を爆走したこと、鉄砲販売のオヤジを口説いて銃を手に入れ、街中でぶっ放したこと、女と合コンして一夜を共にしたこと、バイクの乗り方を知らない新人に乗り方を教えてやったこと、仲間と焼肉を食ったこと、仲間とゲーセンで競い合ったこと、そしてケルを後部座席に乗せ、モグラのモンスターのバラゴンを倒したこと。

あらゆる思い出の走馬灯。懐かしすぎる思い出に、ジョーの涙はより一層多くなった。

「ジョニー、マックス、ルーニー、ジュライ、カイヌ、バーコ、ヴァズ、ウォーン、リッチ、ベローヌ、マンド、ボンサル、ゲンズ、サモ、ハン、キンポ、ケル・・・・・」

メンバーの名前1人1人を呟くジョー。安らかとは言えないが、眠りについたケルの体を、ジョーはそっと地面に寝かせた。そして立ち上がり、腰にぶら下げていたウインチェスターを手に取り、強く握り締めた。

「てめぇら・・・・・よくも・・・・よくも俺の・・・俺の大事な仲間達を・・・・・・仲間達をおおおおぉぉぉぉ!!!!」

ウインチェスターから勢いよく炎が噴き出し、意思があるようにジョーの周りを炎が旋回した。紅蓮の炎に包まれるジョー。その目は、ノアザーグに対する殺気で満ちていた。

そしてウインチェスターから巨大な炎の渦、フレイムストームが噴き出し、ジョーの前にいたノアザーグの兵士達は炎に包まれてしまった。悲鳴を上げるノアザーグ兵達。火力を上げるフレイムストームに、兵士達は焼け死に、骨さえも燃えて消えてしまいそうなほどだった。

「許さねぇ・・・・・お前らぜってぇ・・・・・・許さねええぇぇぇ!!!!」

ジョーは狂ったように炎の渦を放ち続けた。舞台で戦っていたノアザーグ兵達は、その炎に飲み込まれ、全身を焼き尽くされた。

「ヘーッヘッヘッヘ!なんだあいつ!?ブチ切れて暴走してやんの!おい、あいつを狙え!」

ジェニーが手首を振り下ろした。人々が逃げ惑う客席の中に紛れていたマシンガンを装備したノアザーグ兵が、その合図を確かめた。そして客席から銃を構え、炎に覆われたジョーに標準をあわせた。

「狙ってんじゃねぇよ!」

兵士の横から、客席に逃げていたロイが襲い掛かった。長く伸びた黒い爪で、鎧ごと兵士の体を切り裂いた。後ろから襲い掛かってきた兵士にも、ロイは蹴りを入れ、倒れる前に両爪で胸を突き刺した。

無惨に倒れる2人のノアザーグ兵。その場所に、トーカが遅れて駆けつけた。

「ロイ!」

「そこまでだ!」

トーカの後ろから、1人のノアザーグ兵がトーカを首を押さえ、ナイフを突きつけた。

「トーカ!」

「ウゴクナ・・・」

トーカに駆け寄ろうとしたロイの周りを、鈎爪をつけたノアザーグ兵達が囲んだ。機械が喋っているような硬い喋り方で、鈎爪の兵士達は話した。

「大人シク、シテモラオウ・・・。動ケバ、ワカッテイルナ・・・?」

「くそ・・・!」

周りを兵士に取り囲まれたロイは、トーカに何も出来ない。トーカは必死でもがくが、その細い腕では首を押さえる兵士の力に到底勝てない。2人は絶体絶命の窮地に追いやられたのだ。

しかしその時、トーカの首を押さえていた兵士が、倒れこんだ。首筋には小さなくないが刺さっている。トーカが後ろを見ると、忍装束に身を包み、2本の小太刀を持った獣化したヨウコがいた。

「お前達!やっちまいな!」

「御意」

ロイを取り囲んでいた兵士達の周りからいきなり忍者達が現れた。どこかに隠れていたのではないかと思うほど、突然登場した「陽炎」の忍者達。後ろから刀で喉を切り裂き、背中を突き刺し、兵士達の息の根を完全に止めた。その鮮やかな撃退に、ロイもトーカも驚いていた。

「大丈夫かい、お2人さん?」

「う、うん。ありがとうヨウコ」

「いいのいいの。あたしがいる限り、トーカは絶対死なせないよ」

「いたぞ!あそこだ!」

マシンガンを持ったノアザーク兵達が、ヨウコの方向から走ってきた。巨大な烏の翼を広げたヨウコは、空中を飛び交った。

「撃てるもんなら撃ってみなぁ!キャハハハハハ!」

突然空を飛んだヨウコに、焦りを見せるノアザーク兵達。ヨウコに向かってマシンガンを連射させても、俊敏な動きで飛び回るヨウコに当たるはずもない。ヨウコは一気に接近してノアザーク兵達の首を、真っ黒な烏のものに変わった両手に持つ小太刀で斬りつけた。

大動脈を斬られ、血を噴き出しながら倒れる兵士達。ロイの鎧ごと体を切り裂く戦い方とは違い、ヨウコは急所を狙った戦闘を得意としていた。

通常、忍者とはその活動内容から、身を隠して行動しなければならない。そうした行動上、敵を一撃の下で倒さなければならないことが多い。そこで忍者達は相手の首等の急所を狙い、物音を立てずに殺しを遂行する。ヨウコはそういった「暗殺」を完璧にマスターした、エリート忍者ビーストだったのだ。

観客席でロイ達が戦っていた頃、舞台ではジョーとジェニーが睨み合っていた。ジョーはおぞましい殺気を、ジェニーは場違いな大笑いを見せていた。

「ヘーッヘッヘッヘ!お前も随分キレちまったみたいだなぁ!顔見てるだけで笑えるぜ!」

「てめぇ・・・!ぶっ殺してやる・・・・・ぶっ殺して、やらああああぁぁぁ!!!!!」

ジェニーに向かってフレイムストームを放つジョー。巨大な炎が渦を巻いてジェニーに襲い掛かったが、ジェニーは蛙のように高く跳び、ロイでも飛び越えられないほどの巨大な炎をあっさりと飛び越えた。それを見て、ジェニーは人間では無いということを、ジョーは感じた。

「てめぇ、獣人型ビーストだな!」

「ヘーッヘッヘッヘ!その通りよ!飛蝗(バッタ)系獣人型ビースト・ジェニー様の力、見せてやるぅ!!」

上空から落ちてきたジェニーが、獣化した姿で地面に着地した。

足は巨大な飛蝗のものに変形し、腹から細いバッタの腕が生え、そして巨大な緑色の飛蝗の目と長い触手を生やしている。仮面ライダーの怪人として出てきてそうな、不気味な昆虫人間の姿だ。

手に装着した鈎爪を構えるジェニー。長い触手を敏感に動かしながら、ジェニーはジョーに突進した。










To be continued...

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あとがきコーナー




管:いやぁ今回も始まりましたあとがきコーナー!ここまで読んでくださった読者様、誠にありがとうございますm(_ _)m。それでは早速始めようと思います。

ケル(以後「ケ」):ど、どうも。蜥蜴メンバー新入りのケルっす。リーダーがここに顔を出すそうなんで来て見ました。

管:お、今回はケルかぁ。ケルはこの話で死んでしまうんだよなぁ。

ケ:そういう設定にしたのは管理人じゃないっすかw。個人的にはもう少し生きてたかったんすけど(ぁ。

管:まぁこちらにも事情というものが(殴。とりあえずこれを読めばケルが死ぬ設定にした理由がわかるはず!



☆ロイ対ジョー、ついに大詰め。ロイの攻撃で体を傷つけられるジョーに声援を送るメンバー達。リーダーが仲間思いなら、メンバーはリーダー思い。その関係が蜥蜴を1つにまとめているのです。

☆ジョーの必殺技・フレイムストームをロイにぶっ放す。ロイは避けることも防ぐこともできない攻撃にあえて突っ込み、ジョーは頭を蹴り飛ばされてノックアウト。ちなみに、広範囲に広がる炎から逃げる時、炎そのものの殺傷能力が低いため、むやみに隅に逃げるよりも炎に向かって突っ込み、その場を離れる、といった方法がいいらしいです(ホントか知りませんが・・・)。

☆ロイとジョーが戦い終わった後、円形闘技場の入り口が突如爆発。ヨウコ達は噴煙の中に隠れる軍勢に気づき、すぐさま戦闘体勢を整える。忍装束というのは文字通り忍が着る服のこと。黒をベースとして、動きやすいように軽い布を素材としています。

☆ノアザーグ襲撃。ここで登場する司令官はジェニー。場違いな所で笑い出す、身体障害者的な変人。ジェニーに蜥蜴メンバーが文句を言ったために、メンバー達はマシンガンで蜂の巣にされてしまいます。この第10話で蜥蜴のメンバー全員を死なせる設定にしたのにはわけがあって、当初、この先ジョーもノアザーグを倒すために動き出すという設定がありました。しかしその理由をどうするかを決めていなかったんです(殴。で思いついたのが「復讐」。仲間を殺された恨みを晴らすため、ノアザーグを倒す、という設定に決まり、この早い段階で死なせることとなりました。

☆ジョーを庇うために自らマシンガンの弾に当たり、ケルは倒れる。最後の力を振り絞り、ケルは「生きてください」とジョーに諭し、死んでいきます。そしてジョーは怒り、必殺技のフレイムストームを撃ちまくります。魔法は精神にも作用されるため、ジョーの怒りの感情に呼応して、この時のフレイムマジックはより強大なものに変化しています。

☆飛蝗(バッタ)系獣人型ビースト、ジェニーが獣化して、ジョーと戦闘を開始する。避けられないはずのフレイムストームを軽々と飛び越える脚力を持った、ノアザーグの強者変人(ぁ。飛蝗系獣人型ビーストという設定のモチーフは有名なヒーロー「仮面ライダー」。今の仮面ライダーはカブトムシやら蜂やらトンボやらと種類が多いが、1号と2号等が出てきた昭和の仮面ライダーは飛蝗がベースだったらしいです。

☆ジェニーとジョーの戦いはどちらが勝つのか、そしてノアザーグの兵士達を、ロイ達は倒すことが出来るのか、それは次回明らかになります。



ケル:なるほどぉ~。俺らはリーダーをノアザーグに戦わせるために死んだってことっすね?

管:そういうことになりますねぇ。ちなみにこの設定、即興の割にはいい味出してると自分では思うんだけど、どうかなぁ?

ケル:それは読者の皆さんに聞いてみないとわからないっすよ・・・。

管:だよなぁ・・・。

ジ:おぉ、ケルじゃねぇか。ここじゃおめぇも死んでねぇな。

ケ:リ、リーダー!実はですね・・・・こうで・・・・あぁで・・・・あれで・・・・・という理由から俺ら死ぬ設定だったらしいんすよ。

ジ:てめぇ、管理人・・・!!もっとまともな設定にしろやゴラァ!!!(フレイムストーム発射)

管:ぎょえええええええぇぇぇぇ!(全身を炎に包まれる)

ケ:というわけであとがきコーナーは終わりっす。次回もよろしくお願いしますっす。


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