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休憩場

休憩場

第35話

第35話【追跡者スミス3】











ロイは急いで城の入り口へと向かった。獣化しているロイは狼の如き走りで長い廊下を駆け抜ける。

(まずいぞおい・・・!グロラルが死んで、もうここには雑魚兵しか残ってねぇ・・・!早いとこデュークからでてブレストヤードに行かねぇと!)

ロイは目の前に続く廊下を走りぬける。両手両足で床を蹴り抜き、走る。ロイの茶色い髪が風で靡いている。

そしてロイの目の前に、白い煙が漂う城の入り口が見えた。その先では白い煙の中でウインチェスターを構えるジョーがいた。ロイは入り口を抜け、煙に視界を奪われているジョーに近づいた。

すると、ジョーはいきなりロイに銃口を向けた。

「見つけたぞノアザーグ!!」

え・・・?そうロイが呟いた瞬間、ジョーは銃口に炎を溜め、フレイムブレットを放った。突然の攻撃に戸惑いながらも、ロイはそれを避けた。

「バカ!俺だ!ロイだ!」

ロイの声を聞いたジョーは目を擦り、ロイのほうを見た。

――――よく見るとロイじゃねぇか・・・。

ジョーはそう呟き、ウインチェスターを下ろした。ロイは今すぐジョーの顔面を引っかいてやろうと思ったが、今はそんな場合ではない、と感情を抑えた。

「ったく、今度撃つ時はよく相手を見てから撃てよ」

「うるせぇ・・・。この煙じゃよく見えねぇんだよゴラァ」

ジョーは懐からタバコを取り出し、一本銜えた。ターボライターで火をつけ、煙の中で煙を燻らす。

その時、ロイはあることを思い出した。

トーカ。とっさにグロラルを追ってしまったため、トーカと離れてしまっていたことに、ロイ気づいた。慌ててロイはジョーに問いかけた。

「ジョー!トーカどこ行ったんだ!?」

「・・・そういやヨウコと一緒にいた気がしたが・・・・・・ん?」

ジョーは口を止めた。

自分とロイの所に、足跡が迫ってくる。その足跡にロイも気づき、その方向を向く。すると、そこには薄っすらと影が見えた。

「・・・誰だあれ?」

「嬢ちゃんじゃねぇのか?」

「でもヨウコと一緒にいるんだろ?影は1つしか見えねぇけど・・・」

2人が離している間に、影は徐々に2人に迫ってきていた。コツン、コツン、と石造りの地面を進んでくる。鎧の擦れる金属音が聞こえない。ノアザーグともデュークの兵士でもないことに2人は気づいた。

だが、その独特の靴の音に、ロイは違和感を感じた。

――――どこかで聞いたことあるような・・・。

それは魔界にいた時。魔界の何処にいた時だろうかとロイが考えた時、その答えはすぐに出た。

それは、巨大都市・東京にいた時。そこにいた時のことを思い出したロイは、その足音の主に気づき、爪を立てた。

「どうしたんでぇロイ?」

「この足音・・・・あいつが来てる!」

その時、足音が消え、辺りが静かになった。そして2人が見ていた影の腕の部分が細長くなった。

「ロイ、抹殺」

その言葉が発せられた瞬間、細長くなった腕が煙からロイに目掛けて突き出された。細長く伸びていた腕は、剣状に変形された鉄で出来た腕。ロイはその切っ先を爪で捌いた。

それと同時に、周りに漂っていた煙が風で流され始めた。そして足音の「主」がロイとジョーの目の前にその姿を曝した。

そこにいたのは、右腕を剣の形に変形しているスーツ姿の男、スミス。スミスはロイだけを凝視し、捌かれた右腕を再び突き出した。ロイは両手でその切っ先を押さえた。

「このストーカー野郎めが!」

ジョーはウインチェスターの引き金を引き、ショットシェルを放った。炸裂する弾がスミスの肩に当たり、その衝撃でスミスは後ろによろめいた。レバーを引いて弾を込め、再び引き金を引く。2発目のショットシェルは腹に命中し、スミスは前によろめく。

さらにレバーを引いて弾を込め、ショットシェルを放つ。その弾は胸に当たり、スミスは後ろに吹き飛ぶように倒れた。スミスの体にはショットシェルの中に詰め込まれた無数の鉄の粒がめり込み、液体金属で出来た体をへこませている。

「ロイ!」

ロイを呼ぶ声。ロイがその方向を見ると、その方向からトーカとヨウコが走ってきた。トーカが無事でいたことに、ロイは胸を撫で下ろした。

「よかった、無事だったんだな」

「うん。ロイは大丈夫?」

「あぁ。このスーツのオッサンに襲われたとこだけどな・・・」

ロイが倒れているスミスを見た。それと同時にスミスの体のへこんだ部分が徐々に元に戻り始めた。液体で出来ている金属が傷を修復し、スミスは元のスーツ姿に戻った。

「ロイ、抹殺」

スミスは立ち上がり、両腕を剣状に変形させた。

スミスがロイを見た、その刹那の瞬間、狼のものに変形したロイの脚が顔面を蹴り飛ばした。スミスは吹き飛び、地面に倒れた。

「相変わらずしつけぇストーカー野郎だなゴラァ・・・」

ジョーが倒れているスミスにウインチェスターを向け、銃口に炎を溜める。引き金を引き、フレイムブレットを放つジョー。

炎の弾はスミスに直撃し、爆発した。スミスの体は炎に包まれていく。それを見て、ジョーは軽くガッツポーズをした。

しかしスミスは火達磨になりながらも、顔を上げた。剣状の両手を地面に突き刺し、ゆっくりと立ち上がる。炎に包まれながらも動くスミスに、ロイ達は驚愕した。

「こいつ・・・丸焼きにしても死なねぇのかよ!?」

「ロイ、抹殺」

スミスの体から炎が消え、全身が修復されてきっちりと着こなすスーツ姿を見せつけた。そして剣と化した右腕をロイに目掛けて突き出した。

ロイはその剣を避け、スミスに接近した。スミスは左腕でロイに切りかかったが、ロイはその切っ先を蹴り飛ばした。隙だらけになったスミスの顔面を、ロイは爪で引き裂き、再び蹴り飛ばした。

スミスは大きく吹き飛び、民家の壁を突き破った。人々は非難しているため、家の中には誰もいない。

「急ごう。またあいつが追っかけてくる」

「ちょっと待ちなさいよ。どうして急がなくちゃいけないの?グロラルから何か聞いたの?」

「あぁ。北の国のブレストヤードを侵略したって、死ぬ前に言ったんだよ」

「そんな・・・・・あのブレストヤードがノアザーグに・・・」

「そりゃマズイこったな・・・」

「グロラルは俺が殺した・・・・・から、残りの司令官は3人。ブレストヤードを侵略したのはアメリアだとも言ってた」

「あの三十路女か・・・」

「そういうことなら急ぎましょ。ぐずぐずしてるとあいつが――――」

ヨウコが翼を広げ、スミスが吹き飛んだ方向を見たとき、思わず口が止まった。

スミスが激突した民家の屋根、大きな石で出来たそれがスミスの手によって浮いている。片手で意図も簡単にそれを持ち上げるスミスは、遠く離れたロイを凝視した。

「ロイ、抹殺」

スミスは屋根を投げた。巨大な石とも言えるその屋根は、まっすぐロイ達に飛んで行った。ロイ達がヤバイッ!と思った時には、すでに屋根は目前まで迫ってきていた。

「オンベシヤマンダラワソワカ・・・・・ウォーターウォール、発動」

何処からか呪文が発し、ロイ達の目の前に巨大な水の壁が地面から吹き上がった。屋根はその壁に激突し、砕け、水の中へと沈んでいく。

「こ、これは・・・」

「オンベシヤマンダラワソワカ・・・・・ウォーターケージ、発動」

再び呪文が発せられると、民家の壁から外に出てきたスミスの足元の周りから分厚い水柱が幾つも吹き上がり、スミスを囲った。頭上を水の壁が覆い、スミスは「水の檻」に閉じ込められた。

スミスが両腕の剣で水柱を切り払う。しかし水柱はすぐに元に戻り、行く手を遮る。

その姿を、ロイ達は水の壁の後ろから見ていた。突然現れた水の壁、そして水の檻。ロイ達は呪文の聞こえた方向を向いた。

ロイ達から少し離れたところに、コルビナスが杖を持って立っていた。その後ろには何百人もの兵士が跪いている。

「コルビナスさん!」

「話は遠くで聞かせてもらいました、トーカ姫。急ぎブレストヤードへ!」

「急ぎって言うがな、ヒゲオヤジ。こっから北っつったら相当な距離だぞおい」

「デュークの入り口に、デストロイデザートへと続く道が2つあっただろう?その道の水で少しだけ湿っている道の先に門がある。その先の魔界の都市に、ブレストヤードへと続く門があるはずだ」

「で、門の先の都市はなんなんでぇ?」

「そこまではわしも覚えておらん」

「あんだとゴラァ!?ホントに大丈夫なのかよ!」

「どうもこうもねぇよ、ジョー。急ごうぜ」

ロイはバイクの止めてあるデュークの入り口へと走った。トーカはコルビナスのほうを振り向き、頭を下げた。

「ありがとうございます、コルビナスさん」

「わしのことは気にせず、早くブレストヤードへ!」

コルビナスの言葉にトーカは頷き、ロイ達と共にデュークの入り口へと走った。

「さぁ兵達よ!ウォーターケージが取り押さえし者を倒すのだ!」

兵士達は大きな声で叫び、水の檻に閉じ込められたスミスに突進した。

スミスは目の前から迫ってくる敵と周りの水柱を見回した。スミスの青色の視界が水の檻の形状を立体映像で表示させる。

「高さ、2メートル。奥行き、30センチメートル。有効脱出方法表示・・・・・・有効脱出方法発見・・・・・・脱出方法使用開始」

スミスは剣状に変形していた腕を水柱と水柱の間に差し込んだ。そして迫り来るデュークの兵士達の前で、スミスは鮮やかに高速回転し、水柱を切り払った。

水柱が破損を感知し、元に戻ろうとするその刹那の瞬間、スミスは両腕の剣で水柱を突き破った。直りきれていない水柱は崩れ、スミスは水の檻から脱した。

「な、何だと!?」

スミスに迫っていた兵士達は驚いた。出られるはずの無い水の檻からスーツ姿の奇怪な人間が脱出したことに、兵士達は動揺を隠し切れなかった。

しかしスミスの視界には驚いている兵士など、ロイに協力する「敵」にしか見えていない。スミスは両腕の剣で兵士達に襲い掛かった。兵士達は盾でスミスの剣と化した両腕を押さえ、一斉に剣でスミスの腹を刺した。

兵士達の剣はスミスの腹を貫いていた。普通の人間なら致命傷に値する怪我。しかしスミスにしてみれば腹に鉄の棒切れが突き刺さったようなものだった。スミスは両腕を勢いよく押し出し、盾を持った兵士ごと、周りにいた兵士達を吹き飛ばした。

「兵達よ!そこをどくのだ!」

コルビナスが叫んだ。突然のことに兵士達は戸惑いながらも、スミスの前から後退した。

腹の傷を修復し、スミスはゆっくりと前を歩き出した。歩く先にはコルビナス。そのコルビナスは杖の大きな水晶球がついた先端をスミスに真っ直ぐ向け、水平に構えた。

「オンベシヤマンダラワソワカ・・・・」

コルビナスが呪文を唱える。すると、水晶玉の周りに水が現れ、徐々に大きな水の球体が出来上がった。

「剛天砲、発射」

水晶体から水色の光が発し、大きな水の球体が唸りを上げて爆発した。水はスミスの方向に爆発し、スミスを飲み込む。勢いよく発射された水の大砲・剛天砲によってスミスは空高く吹き飛び、デュークの周りに広がる砂漠の遥か彼方へと消えて行った。

コルビナスは杖を地面につけ、老いた体を支えた。深く深呼吸をし、スミスが吹き飛んだ方向を見る。

「倒すことは出来なかったが、トーカ姫達が門に行く時間は稼げたな・・・」

コルビナスはもう一度、深呼吸をした。蒸発した水の水分を全て吸い尽くかのように、コルビナスは大きく呼吸した。










同時刻。魔界。

見渡す限りの黒い大地。光は全く無く、黒く濁った空は相も変わらず漂っている。

しかしその黒い雲はただの雲ではない。雲から秒単位で放たれる雷。雲から雲えと雷は飛び移り、唸りをあげて大地に降り注ぐ。その度に黒い大地には雷の跡が刻み込まれる。

雷が降り注ぎ続ける大地・ライトニングゾーン。

年中無休、24時間降り注ぐ雷。それ故にライトニングゾーンに近づくビーストは誰一人としておらず、陸の無人島と化していた。

しかしそのビーストがいないはずの大地に、苔の生えた石で積み重ねられたような遺跡が、ポツンと建っていた。遺跡の小さな入り口の前には、マシンガンを手にしたノアザーグの兵士が2人、降り注ぐ雷に照らされながら立っている。

「酷く降り注ぐ雷だな・・・。俺達は当たらないのか?」

「遺跡の中に入って行ったイリス様の話では、この遺跡の周辺にしか雷は落ちないそうだ」

「つまりこの風化してもおかしくない遺跡が今も保たれているということは、そういう理由なのか」

「特殊な魔力の磁場が雷を防いでいる、ともイリス様は申していたな」

「この遺跡には我らの目的の品が納められているそうだが、俺は一刻も早く魔界と人間界を1つにするべきだと思うんだが・・・」

「馬鹿。そのために必要な物なのだ。焦ろうが焦りまいが、2つの世界は必ず1つになる」

2人の兵士は雷を発する黒い雲を見上げながら話していた。雷が鳴り、遺跡の外で雷が落ちる音が辺りに響いた。



遺跡内部。

苔の生えた石造りの通路。洞窟とも鍾乳洞とも言えるその通路は、風化せずに形を保っている。

その通路を、黒い鎧を身に着けたノアザーグの2人の兵士、そして身の丈以上もある大刀を背負うイリスが歩いていた。イリスの後ろを歩いていた兵士の1人が、イリスに話しかけた。

「イリス様、今回の任務で奪還する品。それは一体どういったもので?」

「あれ?お前達にはまだ話してなかったかぁ」

イリスが兵士を横目で見ながら言った。足を止めることなく、イリスは歩きながら口を開いた。

「これは聞いたことあると思うけど、僕達ノアザーグの目的は人間界と魔界の境界を崩し、1つにまとめる事。それには大昔にいた完全なる魔王・ムンドゥスの力が必要なわけさ。ムンドゥスはバルグザーダンとかいうヤツに封印されたわけなんだけど、その4つの神具は人間界と魔界に2つずつ隠されていたんだ」

「では、今回奪還するのは、そのうちの1つということですか?」

「そういうこと。この遺跡に隠された神具が、最後の1つ。それを手に入れれば、僕達の望みが叶うんだよ?」

イリスは笑顔で言った。司令官とは思えないほどの、可愛らしい笑顔。しかし頬にペイントされた虎柄のような黒い線と、背中に背負った2mを超える大刀が、その笑顔を「不敵の笑み」に変化させていた。

「し、しかしほかの神具でもそうだったようですが、それを守る『守護者』がいるはずでは・・・?」

「いるはずだから、なんなの?」

「いえ、その・・・。私は今回の奪還任務が初めてでございまして、その『守護者』がいかなる強敵か・・・」

「強敵かぁ・・・。まぁいままで殺してきた守護者は弱かったけど、今から取りに行く神具の中身はムンドゥスの『頭部』。つまり脳があるわけなんだよね」

「と・・・・いいますと?」

「頭部ってさぁ、人間でもビーストでも大事な部分でしょ?なんせ物事を考える『知能』がそこにあるわけなんだから。つまりね、その頭部を守る守護者が、守護者の中でいっちばん強いってこと」

「な、なるほど・・・」

「でも楽しみだなぁ。今までの守護者は化け物じみた奴らばっかりだったけど、頭部を守るやつはどんなやつなんだろうなぁ。人型だったら首とか腕とか脚とか全部切り刻んで、最後に1つにまとめて突き刺す・・・・。ん~!面白そう!」

イリスは笑いながら言った。その残忍な話の内容に、2人の兵士の体が震えた。

その時、イリスの前に大きな石の扉が見えた。シャッターのように開閉する仕組みなのか、取っ手やドアノブが見当たらない。その扉の横に、石の歯車が露出したギミックが見えた。

イリスはその歯車のギミックのところに足を運んだ。歯車と歯車の間に何か別の歯車をはめ込む仕掛けのギミック。ポカンと空いたそのスペースを見て、イリスは、あっ、と呟いた。

「おい。さっき拾った赤い歯車、貸して」

「・・・これでございますか?」

兵士の1人が懐から石で出来た赤い歯車を出した。イリスがその赤い歯車を兵士から奪い、ギミックにはめ込む。そのギミックの下に取り付けられた石のレバーを、イリスは横に引いた。

すると、ギミックが動き始めた。はめ込んだ赤い歯車が、それと隣接する別の歯車を動かす。そして目の前の大きな扉が揺れ、ゆっくりと扉が開いた。イリスは迷うことなく中に入る。2人の兵士もその背中を追うように中に入った。

扉の先は大きな広間。広間の奥には、ノアザーグとはまた違う騎士を思わせる黒い鎧、顔まで覆い隠す黒い大型の兜、そして妖しい輝きを見せる黒と赤のマントに身を包んだ人間のようなものが、壁に設置された拘束専用の鎖に両手を束縛されている。

そして広間の中央には、鮮やかに輝く紫色の膜・魔法壁に包まれた小さな石柱があった。その石柱の上にはワイングラスのような青い土器が置かれていた。

「これが神具みたいだね」

「この膜、魔法壁のようですが・・・・・異様に輝いているようにみえます」

「そうだね。多分この遺跡の特殊な魔力が、この魔法壁を作り出してるんだ」

「ではこの魔法壁、どのように解除いたしますか?」

「ん~、どうしようかな――――」

その時だった。紫色だった膜が、突如真っ黒に染まった。そして開いていた扉が揺れ始め、ゆっくりと閉まった。

「しまった!扉が!」

2人の兵士が扉に近づいたときには、既に扉は完全に閉じていた。隙間に指を差し込んで動かしても、扉はビクともしない。

「閉じ込められたみたいだね。まぁここまで来たらそう来ると思ったけど」

イリスは慌てることなく、背中に背負った大刀を手に取った。ドスンッ、と大刀の切っ先が床に落ちる。それと同時に、何処からとも無く不気味な声が発した。

「正式ナ歯車ヲ使用セズ扉ヲ開ケシ者ヨ。異次元ノ魔王ヲ蘇ラセヨウトスル外道者トミナシ、処刑スル」

その声を聞いて、イリスは鎖に拘束された騎士を見た。顔を隠すほどの大きな兜の目の部分から紫色の光が上がり、その全身から不気味な黒い炎が燃え始めた。その炎が消えて無くなったとき、鎖に繋がれた両手が動き出した。

騎士は頭をすばやく持ち上げ、広間にいるイリス達を見た。紫色の光を放つ不気味な目が、イリス達を凝視する。

そしてその騎士は腕に力をいれ、右手に繋がれた鎖を引きちぎった。そして左手に繋がれた鎖も、同じように引きちぎる。騎士の両腕が自由になり、騎士は床に足をつけた。

そしてその両手の平を合わせた。すると掌から黒い炎が燃え上がり、両手を炎に包ませる。その手を広げると、炎はその手を追うように長く伸びた。

そして炎が形を変え、大きな剣を作り出した。騎士はその剣を手にし、振るった。

イリスはその騎士から確かな殺気を感じ取り、大刀を持ち上げ、防御の構えを取った。

その瞬間、大刀に黒色の刃が直撃した。イリスが後ろを見ると、扉の前にいた2人の兵士が黒色の刃に体を真っ二つにされている所だった。上半身と下半身に切断された2人の兵士は床に倒れる。

騎士は生き残ったイリスに視点を向け、剣を構えた。

「ワタシハ、ゼグラス。闇ノ魔剣士・ゼグラス・・・!」

「『闇の魔剣士』・・・かぁ。僕は大刀の魔戦士・イリス。勝負だ、ゼグラス!」

イリスは大刀の切っ先をゼグラスに向けた。

ここに、「魔戦士」と「魔剣士」の戦いの幕がきっておとされた。










To be continued...

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あとがきコーナー




管:毎度毎度やります、売ります(殴、買い取ります(蹴、なあとがきコーナー!ここまで読んでいただき、管理人はとっても嬉しいです^w^。

コルビナス(以後「コ」):ここが噂のあとがきコーナーか・・・。

管:うぇいw。デューク王、コルビナスじゃねぇかw。

コ:いやはや、アクトやクローディアス、それにウーロンまで来ているなら、わしだって来てもおかしくないだろう?

管:なんか皆同じ様なこと言ってる気が・・・w。

コ:そんなことどうでもいい。さっさと始めてくれないかな?

管:はいはい始めます(☆w☆;)。



☆「追跡者スミス3」というタイトルにもあるように、今話のメインはスミス。こいつは魔界から人間界まで、ロイが何処へ行っても執拗に追いかけるキャラです。このスミスというキャラがどこまでロイを追い詰めるのか、それは話が進めばわかります(ぉぃ。

☆グロラルを倒したロイは城を出る。しかし入り口は兵士達が退却する時に撒き散らす「煙幕弾」によって白い煙に覆われています。ここでロイはジョーに出会うんですが、ジョーはノアザーグ兵と勘違いしてフレイムブレットを発射。ロイには当たりませんが、危うく焼き殺される所ですw。この「間違えて発射」の場面は実は今話を書き上げる時に、はっと思いついたもの。即興といえば即興ですが、なかなかいい出来(出来と言うのも変だが・・・)に仕上がったと思っていますw。

☆2人の所に歩み寄る影。その影がロイだけに襲い掛かります。煙が消え、影の正体がスミスだと気づきます。当初の設定では煙が消えた後に襲い掛かっていたのですが、それだと普通の登場なうえに普通の強襲なイメージなので、煙が漂うところを襲うという「暗殺」的な設定に変えました。

☆スミスを民家に吹き飛ばすロイ。スミスがその民家の屋根(この屋根は石で出来ているんですが、今で言うコンクリートの塊と思えばイメージしやすいかも)を投げてきますが、ロイ達の前に現れたウォーターウォールによって防がれます。そしてそのスミス自身もウォーターケージ(ケージは英語でcageと書き、「檻」という意味の単語)に閉じ込められてしまいます。このウォーターケージ、実は当初の設定ではただのウォーターウォールでしたw。がそれでは単調で面白くないと思い、動けなくさせる=閉じ込める、という今の形になったのです。

☆ロイを先に行かせ、スミスを倒すべく兵を投入するコルビナス。しかしスミスはウォーターケージから脱出し、襲い掛かってきた兵士を吹き飛ばします。この時コルビナスや兵士達を襲ったのは、物語にもチラッと登場しましたが「ロイに協力する敵と判断した」から。ターゲットのロイをかばう者も倒す。というのがスミスの思考回路なのです。

☆そのスミスもコルビナスが放った必殺技(?)的なウォーターマジック「剛天砲」で吹き飛びます。この剛天砲という名前なんですが、実はそれの前の名前は「ウォーターキャノン」でしたw。しかし「ウォーターキャノンではありきたりな名前では・・・?」という自分の心の訴えにより、剛の力が天を貫くような大砲→剛が天を貫く大砲→剛天砲・・・・と出来上がっていきましたw。「剛」というのは力強いとか、そんな感じの意味です(ぉぃ。

☆デュークでそういったことがあったのと同時期の魔界・ライトニングゾーンの遺跡にはノアザーグが侵入。イリスが兵を従え、遺跡の奥へと進んでいきます。この敵であるはずのイリスの行動を物語の中に加える事は随分前から考えていたことで、いわゆる「サブストーリー」みたいな感じです。ロイ達がこうしているとき、敵はこういう行動をしている、みたいな感じですね。

☆イリスは赤い歯車を使ってムンドゥスの頭部が封印された神具がある広間へ。ここでイリス達が閉じ込められ、黒い鎧、黒い大型兜、黒と赤のマントに身を包んだ「闇の魔剣士」ゼグラスが動きます。ゼグラスは傀儡(くぐつ)のようなもので、人間やビーストといった存在とはまた違う存在です。

☆そのゼグラスはノアザーグ兵2人を殺し、生き残ったイリスに剣を構えます。イリスはそれを嬉々とし、大刀を向けます。魔戦士と魔剣士、果たして勝つのはどちらなのか、それは次回明らかに。



コ:ところで傀儡というが、それは一体なんなのだ?

管:元々の意味は歌に合わせて舞わせる操り人形のこと。だけど最近では「人形」としての意味を強く強調した意味で使われてることが多いねぇ。ファンタジー小説では多くの場合、闇の力等の作用で動く人形、って意味らしい。

コ:ほぉ。なかなか詳しいではないか。

管:まぁ辞書で調べればわかることだけどな(ぁ。あと魔戦士と魔剣士という単語は存在しないから、変換しても「マセンし」「負けんし」と誤字る現象が生じるんだよねぇ。魔戦士も、魔剣士も、小説などで生まれた言葉だから当たり前かもw。

コ:意外と管理人、いろいろな雑学を知っておるな。

管:まぁこれが長所のようなもんだから(ぁ。なんならゴジラにでてくる怪獣の名前全部言ってあげよか?

コ:いや、それは聞きたくない。脳に異常をきたしそうだからな。

管:ひ、ひでぇ・・・OTL。俺の自慢の1つがぁ・・・。

とこんなのんきに話していても仕様がない。今回のあとがきコーナーはこれで終わり。それでは皆さん、次の話でまた会いましょう( ☆w☆)ノシ。


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