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休憩場

休憩場

第9話

第9話【薫】











灰色の雲が埋め尽くしている空の下、手提げバッグとトランクケースを手にした薫は葛飾警察署の入口の前にいた。余程のことがない限り人通りが多くないどこか静かな入口前にいる薫は、その入口を警護している1人の警官に話しかけていた。

「え?隼人君、ここに住んでないんですか?」

「あぁ。つい最近荷物をまとめて署を出て行ってね、新しく住む場所が出来ましたとか言っていたよ」

「あ、あの・・・隼人君が今住んでる所の、住所とかわかりませんか?」

「ん~・・・ごめんよ、こっちもそれは把握してないんだ。一応プライバシー保護という義務もあるしねぇ・・・」

「そうですか・・・わかりました、ありがとうございます」

薫はそう答えた後軽く頭を下げ、警察署の入口を後にした。どんよりとした晴れるわけでも雨が降るわけでもない雲の中、薫は歩道を歩いていく。

薫が葛飾警察署を訪れた理由、それは学校を休んだ隼人のお見舞い。

夜中に襲ってきたストーカーや、天魔興志郎という謎のルシフェルからこの身を救ってくれた隼人の身を案じての行為だったが、特別お見舞いの贈り物もなく、ただ隼人に会いたいと思ったからに近い。隼人に会ったら今日学校で教わった授業の内容を教えてあげよう、そう薫は思っていた。

しかし、その隼人がいるはずの警察署に、隼人がいない。葛飾区にある警察署は先程訪れた葛飾警察署の1つだけであり、学校までの通学距離を考えて他区の警察署で生活しているのはまずあり得ない。にも関わらず、隼人は警察署にいなかった。

(隼人君・・・何処に引っ越したんだろう・・・)

歩道を歩きながら、薫は心の中でそう呟く。隼人はこの身を守ってくれた、言わば命の恩人。そんな隼人に少しでもいいから何か役に立ちたい。少しでもいいから、隼人に近づきたい。それが、今の薫の気持ちだった。

そんな気持ちを内で膨らませていた、その時だった。

「ちょっと隼人!遅いわよ!」

前方から聞こえた、隼人を呼ぶ少女の声。どこか聞き覚えのある声に薫が視線を前方の交差点に向けると、信号の先に私服を着た明日香が立っていた。賞味期限切れのパンを食べて体調不良になっていたはずの明日香の元気そうな姿に、薫は疑問を抱く。

それと同時に、薫の目に明日香から少し距離を離した所を歩く隼人の姿が映った。

白いTシャツに黒いジャージのズボンという、私服というよりは寝間着に近い服装の隼人は具合が悪いのかその表情が沈み、更に頭痛を起こしているのか右手で頭を押えている。いつもの制服姿とは違う姿や、いつもの優しい表情とは違う表情であっても、薫は前方に見える人物が隼人だとすぐに認識した。

「ま、待ってよ明日香・・・。まだ頭が痛いんだから・・・」

「これでもゆっくり歩いてる方よ。昼過ぎまで寝てたんだから、さっさと歩く」

「うぅ・・・医者まで一緒に来てくれたのは嬉しいけど、もっとゆっくり歩こうよ・・・」

「甘いわよ隼人。病院から貰った薬を飲ませるまで、あんたに楽させないんだから」

「そんなぁ・・・これじゃ頭痛が悪化する一方だよ・・・」

「ゴタゴタ言ってないでさっさと歩く。じゃないと置いてくわよ?」

「うぅ・・・今日の明日香は厳し過ぎる・・・」

隼人はどこか苦しそうな声でそう呟きながら明日香の立っている所まで歩き、肩を並べた2人は歩道を歩く。歩く速度を急がせていた明日香だったが、隼人と肩を並べた後は隼人の速度に合わせ、ゆっくりと歩き進んでいた。

そんな光景を目の当たりにした薫は、何故明日香が元気なのに学校を休んだという疑問よりも、何故隼人と明日香が一緒にいるのかという疑問に襲われていた。

(隼人君に明日香ちゃん・・・どうして一緒なんだろう・・・?2人とも気分が悪くて休んだから、一緒のお医者さんに行ったのかな・・・)

浮かんできた強い疑問にそれらしい答えを導き出す薫。しかし何故か、それが正しいとは思えなかった。そして同時に、学校で十兵衛が口にした言葉を思い出す。

『まぁ例え幼馴染といっても相手があの怪力女だからありえねぇ気もするけど、学校サボって『デート』って可能性もあるっつうこと』

軽い気持ちで十兵衛が口にした、可能性の低い学校を休んだ理由。しかしそれが、薫の中で高確率な理由へと跳ね上がっていた。

隼人の様子や微かに聞こえた会話の内容からデートではないことは明らかだったが、昼過ぎまで隼人が寝ていたことを明日香が知っていることから、少なくとも今日は隼人と一緒にいたことになる。どんな理由にせよ、隼人と明日香は学校を休み、今まで一緒にいたのだ。

――――・・・ついて行ってみよう。もしかしたら、隼人君の住んでる場所もわかるかもしれない・・・。

そう感じた薫はすぐに交差点の横断歩道を渡り、隼人と明日香に気付かれない程の距離を離しながらその後をついて行った。ゆっくりと歩く2人に合わせて薫もゆっくり歩き、確実に2人の後を歩く。ふと隼人が背後を振り向いた瞬間にも薫は慌てながらも物影に隠れてやり過ごし、そしてまた2人の後を歩く。そんな闇に潜む忍者の如く、薫は慎重に2人の後を歩いていった。

しばらく歩き、隼人と明日香は住宅街までやって来た。2人の後をついて来ていた薫も当然住宅街まで足を運び、手提げバッグとトランペットが納められたトランクケースを手にしながらゆっくりと確実に2人の後を歩いていく。

そして住宅街の一角、どこにでもありそうなごく普通の家の前に隼人と明日香が到着すると、2人は玄関の扉を開き、その家の中へと入って行った。その瞬間、薫は体を縛りつけられるような驚きに襲われた。

(2人が家に・・・!?もしかして、あそこが隼人君の・・・!)

薫はそんな疑問や期待を抱きながら2人が入って行った家へと走り、玄関の前に駆けつける。これといった特徴がない本当に普通の家を前にした薫は、走ったために息を荒くしながらその玄関を眺める。

そして、インターホンの隣についていた表札を目にした瞬間、薫はトランクケースから手を離してしまった。

表札に書かれていた名前は、小泉。そう、そこは隼人の家ではなく、明日香の家だったのだ。

何故?どうして?疑問の言葉が次々と頭を過ぎり、その疑問に薫は答えを導き出そうとする。2人は幼馴染だからたまたま明日香の家に訪れた、しかし訪れる理由がない。

ふとその時、警察署の入口にいた警官の言葉が頭を過ぎる。

『あぁ。つい最近荷物をまとめて署を出て行ってね、新しく住む場所が出来ましたとか言っていたよ』

訪れた警察署に隼人がいなかった理由を述べた、警官の言葉。その言葉と先程目にした明日香の家に明日香と一緒に入っていく隼人。全てが重なった時、薫は1つの答えを導き出した。

――――隼人君は、明日香ちゃんと一緒に生活してる・・・。

それの答えは高確率、可能性が高い、そんな言葉ではとても表現できない程の、確実過ぎるものだった。それを知った瞬間、薫は鋭利な刃物で貫かれるようなとてつもないショックに襲われた。










翌日。

昨日の曇り空が嘘だったような青々とした快晴の朝空を見せ、朝の部活動をしている軟式テニス部が校庭で汗を流している。まだ朝早いため、学校には軟式テニス部の生徒達しかいない。

そんな学校の廊下を、尻のファスナーから爬虫類の太く長い尻尾を生やした十兵衛が歩いていた。ルシフェルである十兵衛は他の人よりも回復力が高いため、昨日の魚沼謙信との戦闘で負った傷は綺麗に消え去っている。

しかし、体の傷を完治させたためか疲れが溜まり、いつも以上に眠気を抱え込んでいた。廊下を歩く足取りも重く、大きな欠伸を連続してかいている。

「は~ぁぁぁ・・・ったく、なんで俺が日直なんてめんどくせぇ仕事しなくちゃならねぇんだ。朝早くから黒板消しの掃除なんてしなくてもいいじゃねぇかっつーの・・・」

十兵衛が独り言のように愚痴を零し、自分のクラスである2年B組の教室に到着する。閉じている扉を開き、十兵衛は早朝で誰もいないだろう教室に入る。

その時、教室に入った十兵衛はある光景を目にした。

それは、席についている薫。隼人の隣である自分の席に座り、机と睨めっこをしているかのように俯いている。その表情はとても元気で満ちているようには思えず、酷く落ち込んでいるような表情だった。

こんな朝早くに何してんだ?そんな疑問が十兵衛に過ぎり、いつもなら興奮を示す尻尾も左右に振り動かない程になっていた。そして俯いていた薫はそんな十兵衛の存在に気づき、その顔を十兵衛の方に向けた。

「あ、石動君・・・おはよう」

「よぉ、早いな・・・」

「うん・・・今日は、早く来たんです。石動君は、どうしてこんな早く?」

「日直。全く、朝っぱらから黒板消しの掃除とかやってらんねぇぜ。で、上御霊は?」

「ううん、私はやることがあって早く来たんじゃないんです。ちょっと早起きしちゃって・・・それで・・・それで・・・」

「上御霊・・・?」

声が微かに歪む薫に、疑問を抱く十兵衛。何が起きたのかさっぱり理解できないでいた十兵衛がその表情を見ると、薫は今にも泣き出しそうな程その瞳を涙で潤していた。



それから時間が経ち、放課後。

先生の挨拶も終わり、教室にいた生徒達が帰る支度を済ませて教室を後にしていく。教室に残るのは支度を終わらせていない何人かの生徒か、教室掃除の当番についた生徒達のみとなっていた。

そんな教室の中に、隼人と十兵衛、そして明日香と薫もいた。4人は支度を済ませていないためか、他の生徒よりも教室を出るのが遅れていた。そんな時、ふと十兵衛は隼人を見る。

朝から明日香と2人で登校し、昨日休んだためか今日は元気な姿でいつも通りの学校生活を送っている。そしてこの帰りの支度を済ませている時も、いつもと何ら変わらない。

そんな隼人を十兵衛が見た後、今度は薫を見る。日直の自分よりも早く学校に着き、隼人が明日香と一緒に登校してきてから今に至るまで、ずっと隼人のことを気にしている。何か言いたそうな表情を浮かべているみたいだったが、勇気がないためか言いだすことが出来ないでいるようだった。

――――もう、我慢出来ねぇ・・・。

2人の姿を見て十兵衛は抑え込んでいた感情をついに解き放ち、隼人に話しかけた。

「隼人、1つ聞きてぇことがあるんだけど」

「ん?何?」

「お前、警察署に住んでるんだよな?」

「え?あ・・・うん、そうだけど?」

「それ・・・嘘だろ」

十兵衛の言葉に、4人のいる空間の空気が一気に静まり始める。その瞬間、隼人と明日香は十兵衛の言葉を疑った。もう警察署に住んでいないのを知っているのは隼人と明日香、更に言えば明日香の母親である涼子のみ。なのにどうして十兵衛がそのことを知ってるのか、2人はその疑問を隠しきれずにいた。

そして、そのことを口にした十兵衛に、薫は若干焦りを見せる。

「い、石動君・・・」

「俺、昨日変な鮫野郎に襲われてよ。お前の事しつこく聞いてくるからお前となんか関係があんじゃねぇかと思って警察署まで行ったんだ。したらなんて返事が来たと思う?『一文字君はもうここに住んでない』だとよ」

「じ、十兵衛・・・あんた・・・」

「それだけじゃねぇさ。そっから帰り道歩いてたら、たまたま2人仲良く歩いてるお前と小泉見つけてよぉ。ズル休みしてんじゃねぇかと思って後つけたら見ちまったんだよ、お前が小泉と一緒に、小泉の家に入っていくのをなぁ」

「そ、それは・・・その・・・」

「お前言ったよな?そんな関係じゃないって。それなのにそんな事して、今まで言ってきたのは嘘だったのかよ?」

「ち、違うんだ!僕が明日香の家に入ったのは・・・その・・・」

「あぁわかってるとも。新しい家が明日香の家だってんだろ?幼馴染仲良く同棲とはいい話じゃねぇか」

「あんた・・・それ以上言ったら――――」

「言ったらなんだっつうんだよ?お前らが困るだけだろ?俺は何も困らねぇ」

「石動君・・・やめて・・・」

「警察署から明日香の家に引っ越したこと言わねぇで、平気な面して生活してるだぁ?・・・良い気になってんじゃねぇぞ隼人!そういう態度のせいでどんだけ辛ぇ思いした奴がいると思ってん――――」

「やめて下さい!!」

十兵衛の言葉に我慢できなくなり、薫が大きな声でその言葉を制す。その言葉で教室の空気が一気に静まり、掃除や帰りの仕度をしていた生徒達の視線が薫の方へと向く。

そんな視線を余所に、薫は今にも泣きそうな表情を見せながら俯いていた。零れ出しそうな涙をぐっと堪え、薫が口を開く。

「そんな事言ってなんて・・・頼んでないです・・・石動君・・・」

「上御霊・・・。だけど、これはお前の――――」

「そんなのじゃないんです・・・私・・・・・違うの!!」

押え切れなくなった涙を零しながら薫はその場から走り去り、教室を出て行った。突然のことに教室にいた生徒達は状況が把握出来ず、どよめきを広めている。

それを余所に、明日香は手提げバッグを手に教室を後にしようとする。その明日香に隼人は声をかけようとしたが、それよりも早く明日香はそそくさと教室を出て行った。

取り残された隼人と十兵衛は静まりきった教室の空気に耐え切れず、黙り込んでしまっていた。ただ立ちつくしているだけの2人はしばらく無言のまま俯き、その間に教室の空気は元に戻り始める。

やがて掃除を済ませた生徒達の雑談で賑やかになっていった時、十兵衛はその口を開いた。

「はぁ・・・なんで俺こんな馬鹿しちまったんだ・・・」

「十兵衛君・・・?」

「あぁ悪い。さっき言ったこと、実は俺じゃなくて上御霊のことだったんだ。それを今日の朝あいつから聞いてさ、あいつお前にそのこと聞きたがってたからさっきまで様子見てたんだ。けど、いつまで経っても言わねぇから我慢出来なくなってさ・・・」

「そうだったんだ・・・」

「ホント、馬鹿だよな俺って・・・。本人が言わなきゃいけねぇことを、俺が聞いちまうなんて・・・。はぁ・・・おせっかいが過ぎちまったな・・・」

「そんなことないよ。言われたことは間違ってないし、そのことがバレたら言われると思ってた。けど、僕にだけ言うならまだしも・・・さっきの場所で言うのは・・・」

「あぁ・・・反省してる・・・」

「・・・ねぇ、1つ聞いていい?」

「なんだよ?」

「もしかして十兵衛君・・・・・薫さんのこと・・・」

「・・・さぁ、どうだろうな。ただ俺は上御霊が困ってたから、ちょっと手助けしたくなっただけさ。ホント、それだけ・・・さ」

十兵衛は静かにそう答え、再び大きなため息を零した。



一方、体育館裏。

2階建の体育館の非常階段が建っているそこは立派なコンクリートの道が作られてはいるものの、体育館裏の近くにある清掃用具倉庫に用がない限り人がほとんど通らない場所。普段ならまず人がいないそこに、涙を流した薫が体育館の壁に肩を寄りかからせていた。

溢れる涙を手の甲で拭い、しかしそれでも泣き続ける薫。拭っても拭っても涙が止まらない薫は、心の中で自分を責めていた。

(馬鹿!私の馬鹿!石動君は何も悪くないのに・・・なのに私・・・自分が言えないことあんなはっきり言われたから・・・!でも・・・言うの怖かった・・・。もしこのまま言ってたら・・・今の私と・・・隼人君の細い絆とか・・・関係も・・・全部・・・壊れてしまうかも・・・)

後悔の念を自分にぶつけ、涙を拭いながら心の中でそう呟いていたその時、薫の視線の先にその姿はあった。

それは、小さなポニーテールをした明日香。手には手提げバッグを持っており、すぐに部活に向かえるような姿だった。にも関わらず、明日香は薫の前に立っていた。

「あ、明日香ちゃん・・・どうして・・・」

「別に。体育館で部活だから、ここを通るだけよ」

そう答え、明日香はゆっくりと歩き出す。一歩一歩ゆっくりと歩む明日香はそのまま薫の横を通り、体育館裏の道を抜けようとする。

しかし、その時だった。

「明日香ちゃんはずるいよ!!」

涙を堪えながら発した薫の大きな声に、明日香は歩みを止める。勇気を振り絞り、力強い言葉を口にした薫に、明日香も口を開く。

「・・・何がよ」

「明日香ちゃんだって・・・隼人君のこと、好きなんでしょ!?」

薫の放った言葉に、明日香は度肝を抜かれてしまった。大胆に、しかもストレートにそんな事を言ってくるとは想像もしてなかったからだ。

「なのにそっけなくして、知らない振りして、なのに私よりずっとずっと近くにいて・・・・・ずるいよ!!」

「か、関係ないわよ!」

「幼馴染だからって一緒に生活して・・・隼人君とずっと一緒にいて・・・・・ずる過ぎるよ!!」

「な、なんであんたにそんな事言われなきゃならないのよ!」

「言う資格あるもの・・・」

静かに、それでいて力強く呟いた薫は明日香のほうに体を向け、同時に体を向けた明日香の目を睨むようにじっと見る。そしてありったけの勇気を振り絞り、薫は言い放った。

「私も・・・好きだから・・・」

「え・・・?」

「私も!!隼人君のことが・・・・・好きなんだから!!」

これまで以上の大きく力強い声に、明日香は体や心の全てに衝撃が走った。隼人のことが、好き?薫の言葉に錯乱したのか、薫の言葉に疑問を抱いてしまっていた。

そんな明日香に薫は勇気を振り絞って一歩一歩近づき、明日香の目の前まで歩み寄る。そして身の丈がほとんど変わらない明日香を前に、薫が口を開く。

「確かに私はいろいろな意味で弱かったから・・・明日香ちゃんより近づけなかったかも知れない。でももう違う、もう決めた。自分の力で、最後までがんばろうって。・・・明日香ちゃん、隼人君に『好き』って言ったことあるの?」

「そ、それは・・・」

「無いんだね・・・勇気のいることだから、仕方ないよね。でも・・・私はちゃんと言う」

「ダ、ダメ・・・」

「はっきり、自分の口で」

「ダメ・・・!」

「隼人君に『好き』って言う」

「ダメ!そんなの言っちゃダメ!」

「ううん、言う。決めるのは隼人君。『好き』って言ってない明日香ちゃんに、私・・・負けない!」

「わ、私だって・・・!」

拳を握り締め、全身に力を入れる明日香。心の中に押え込んでいた気持ちのリミッターが外れ、ついに爆発させる。

そして、明日香はそれを口にした。

「私だって!!幼稚園の時から、小学生の時からずっと・・・・・隼人のことが、好きなんだから!!だから・・・あんたが隼人に『好き』って言っちゃダメなの!」

「ダメじゃない!私は好きですって隼人君に言うし、ずるい明日香ちゃんに邪魔されることもないんだから!」

「ずるくなんかない!ダメったらダメなの!隼人は私といるほうが絶対いいんだから!」

「そんなことない!それを決めるのは隼人君よ!」

「隼人のこと何も知らないくせに!」

「これから知るもの!」

「無理よ!」

「なんで!?」

「無理ったら無理なの!」

いつの間にか額と額がぶつかってしまいそうな程に顔を近づけ、決意の込められた瞳で睨み合う明日香と薫。次第にその頬は膨らんでいき、互いにムスッとした表情を見せる。

「私、ちゃんと言ったんだから・・・!」

「負けない・・・あんたなんかに、絶対に負けない!」

決意を示した言葉を放ち、それを互いに確かめ合う。そして明日香と薫は同時にプイッと背中を向け、その場から歩き去って行った。

(私は負けない・・・あんな奴に、負けない!)

(隼人君にちゃうんと言うんだ・・・隼人君の事が好きって!)

互いに心の中で強い決意を固め、そして誓った。隼人に必ず、自分の想いを伝える、と。










「ソルジャー1に続き事を起こしたな、ソルジャー2」

「申し訳ない。一文字隼人の情報を聞き出すためとはいえ、無茶をし過ぎた」

「だが、おかげで新たな即戦力候補も見つかった。石動十兵衛といったか、ソルジャー2を相手に体に傷をつけさせるとは」

「小僧だと思い甘く見ていたが、あの能力と俺の能力を見て弱点を見つけ出そうとした知能はなかなかだ」

「一文字隼人、それに石動十兵衛・・・・この2人は知り合いらしいが、ならば入学手続きを済ませる時にまとめて出来て手間が省けるというものだ」

「ウヒョヒョヒョヒョ!なんの話をしておるのじゃ?わしも交えさせてほしいわい」

「・・・ソルジャー3か。準備の方はどうしたんだ?」

「ついさっき終わったばかりじゃよソルジャー2。その報告をするためにわざわざここまで来たんじゃ」

「そうか、ソルジャー3も準備が完了したか。ならば自由待機だ」

「ふむぅ・・・自由待機と言われても、わしゃぁもうおいぼれのルシフェル。暇でしょうがないのぉ」

「ならば、神校の人手を増やす作業でも、資金調達でもすればよいだろう?」

「な~るほど、正論じゃのぉソルジャー2。それじゃあ手始めに資金調達でもしてくるわい」

「お前ほどのご老体なら言わずともわかる事だと思うが、警察事だけは起こすのではないぞ」

「校長の仰せのままに~・・・・ウヒョ、ウヒョヒョヒョヒョ!」










To be continued...

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あとがきコーナー




管:ドッカンどすこいよっこらセッ○ス(蹴。ということでやって来ましたあとがきコーナー!

明:ここまで読んでくれて、ホントにありがとね。

薫:これからもGENOMEをよろしくお願いします。

管:おっ(☆w☆ )。今回は激しく火花を飛ばしてた明日香と薫が来たのか。

明:何よ?来ちゃ悪いっていうの?

管:ん~・・・正直言うと明日香みたいな怪力女には来られると困――――。

ドゴオオオオオオオオォォォォォン!!!!!!(管理人の頭にゲンコツが落ちる)

バゴッ!(地面に頭がめり込む)

薫:か、管理人さん!?あ、明日香ちゃんダメだよまだまえがきなのに!

明:ふんだ。私のこと侮辱するからそうなるのよ、ここは私と薫でやっておくから、しばらく倒れてることね。

薫:う~ん・・・と、とりあえずこのままでいるのもあれなので、早速始めますね。


前話で十兵衛と謙信が戦っていた頃、薫は隼人のお見舞いをするため葛飾警察署へ。しかし隼人はもう警察署に住んでいないと知り、更に帰り道の道中、一緒に歩く医者帰りの隼人と明日香の姿を目撃します。そしてその後をつけた結果、隼人と明日香が1つの屋根の下で生活していることが明らかになる。この設定は当初からあったもので、隼人と明日香が同棲している事実が知れ渡ってしまうきっかけとなっています。

日直になっていた十兵衛が朝早く教室を訪れた時、俯きながら席についている薫の姿を目にする。この辺の設定は当初からあったのですが、実は会話等は全部即興だったりします(ぁ。というのも朝の教室で悲しむ薫を十兵衛が見つける、としか設定してなかったので、まるで考えていなかった会話等は即興でやらざるを得ませんでしたw(殴。

それから放課後、隼人に事を言い出せない薫に我慢出来なくなった十兵衛は、薫が言いたいことを勝手に代弁する。この場面は↑で話した朝早くの教室場面とは違い台詞等の設定もしっかり固まっていた場面のため、思いのほかスムーズに書くことが出来ていました。ちなみにここで十兵衛が薫のことが好きではないか?というフラグ(~かもしれないという意味の言葉)が立ってしまってますが、果たしてそのフラグは真実なのか?それは話が進めばわかるでしょう。

体育館裏で1対1で対面する明日香と薫。そこで隼人の想う2人の気持ちがぶつかり合います。この場面こそが今話のメインであり、隼人に想いを抱く2人の恋の戦いの幕開けとなっています。でも実を言うと、会話や場の雰囲気等は人気ライトノベル「灼眼のシャナ」から拝借しちゃってたり・・・w。どちらかというと会話はアニメの「灼眼のシャナ」に似ており、拝借しすぎたのではないかと今更ながら後悔してますOTL。

互いに決意を露にし、2人は体育館裏を後にする。そしてその頃、校長、ソルジャー2、ソルジャー3との会話が行われる。果たしてその会話が意味することとは何なのか、そしてこの後何が起こるのか。それは次回お楽しみ~。


明:なんか、今回はやけにあとがきが短いわね。

薫:多分今話が戦闘場面が無い、会話場面中心の話だったから、これといった設定がなかったんだと思う。

明:ふん!隼人のこと何も知らない薫にしては、的の突いたこと言うじゃない。

薫:は、隼人君のことはこれから知るもの!大体、明日香ちゃんは隼人君に何か言われるとすぐ顔真っ赤になり過ぎです!

明:なっ!?そ、そんなことないわ!あんたこそ、隼人と会話する時だけやたらと明るくふるまってるじゃない!

薫:そ、それはそれ!これはこれ!とにかく、私は隼人君に「好き」って絶対言うんだから!

明:だからダメって言ってるでしょ!隼人は私といたほうがずっとずっといいんだから!

薫:そんなことない!

明:そんなことあるの!

ドンガラガッシャーンランランルーフタエノキワミアーッ!!!!(激しい口論)

管:うっぐ・・・・・あの2人、まだ言い争いしてるよ・・・。そ、それじゃ俺も頭がぐらついてるから、今回のあとがきコーナーはこれで終わりにします・・・。

それでは皆さん・・・次の話でまた・・・会いま・・・しょ・・・う( ☆w☆)ノシ。

バタッ!(気絶)


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