第11話夕方。 午後の授業はとうに終わり、生徒達は帰宅しているか部活動に励んでいた。校庭では軟式テニス部と陸上部、体育間ではバスケ部とバトミントン部等、運動部系の部活動をしている生徒達は汗を流していた。 その一方で、2年B組の教室からはトランペットの音色が流れていた。 吹いているのは、薫。夕日によってオレンジ色に染まった誰もいない教室で、自分の席で1人トランペットを吹いていたのだ。音楽部の顧問が学校を休み部活が出来なくなったため、自主練習も兼ねてそれを吹いていた。しかし、教室で吹いている本当の理由は別にあった。 それは、隼人の帰りを待つこと。 隼人が昼休みに仕事に向かったことは、十兵衛の口からクラスの皆に知らされていた。しかしそれはルシフェル犯罪対策課にいる隼人にとっていつものことであり、クラスの生徒達は特別隼人を心配するようなことはしなかった。 だがその時、薫は十兵衛から隼人のブレザーを渡されていた。明日香に気付かれないようわざわざ階段の踊り場で渡されたそれは、隼人に直接渡してあげろと言わんばかりの十兵衛の気持ちが込められていた。そのブレザーを直接渡すため、薫は教室で待っていたのだ。 いつでも渡せるよう、隼人のブレザーは薫の机の上に置かれている。当然ながら自分よりもブレザーのサイズは大きく、薫からすればコートのような大きさのそれを目にしながら、薫はトランペットを吹き続けていた。 (隼人君、いつ帰って来るんだろうなぁ・・・。帰ってきたら、このブレザーをちゃんと・・・) 薫が心の中で呟きながらトランペットを吹き、ふと外を眺める。その時、薫はある光景を目にした。 夕日に染まったオレンジ色の空を飛翔する、大きくも小さくもない人影。人が空を飛ぶなどルシフェルの存在する今の時代では特別珍しいことでもなかったが、その人影が気になった薫は演奏を止めて窓の前に立ち、目を凝らしてその人影を見る。 薫の瞳が映したのは、灰色のズボンに赤いネクタイ、そして白いYシャツにその背中から赤い表皮をした膜の張った、巨大な蝙蝠の翼を生やした少年。それはまさしく、待ち続けていた隼人そのものだった。 空を飛んでいた隼人が学校に近づいてくるのを感じた薫はすぐさま教室の窓を開き、開いた窓から少しだけ身を乗り出す。そして、少しだけ大きな声で隼人を呼んだ。 「隼人くーん!」 出せるだけの大声で、それでいて校庭にいる生徒にはあまり聞こえない声で隼人を呼んだ薫に気づいたのか、空を飛んでいた隼人は薫の方に顔を向ける。すでに夕方を迎え誰もいないと思っていた教室にどうして薫がいるのか疑問に感じながらも、隼人は2年B組の窓まで降下した。 薫と向き合える位置まで降下した隼人は、空を飛んだ状態で薫に話しかけた。 「薫さん、どうして教室にいるの?もう授業終わってるみたいなのに」 「今日は顧問の先生がお休みで音楽部の練習が無くて、1人で教室で練習してたんです。そしたら隼人君が見えて・・・」 「そうだったんだ。・・・あ、下駄箱まで行くのめんどうだから、土足だけどここから入っちゃおうかな」 そう言うと、隼人は薫が開いた窓からゆっくりと教室に入り、床に足をつける。変身を解き、徐々に小さくなる翼をYシャツの背中に入ったスリットの中にしまい、変形した背中の肉を元の形に戻す。 そんな姿を薫がじっと見ていたその時、薫は隼人の右腕の二の腕部分についた血痕に気づいた。すでに血は乾いているためか茶色く変色し、染みになっている。 「ど、どうしたんですかその血!?」 「血?・・・あぁこれか。今日翼が怪我しちゃって、その時の血がついちゃったんだと思う。翼の傷は塞がったから、もう大丈夫なんだけどね」 「そうなんですか・・・。隼人君、いつも大変ですね」 「これが僕の選んだ仕事だから、怪我することは承知の上だよ。怪我した分だけ、皆が平和に暮らせるだろうし」 「そうですね、それがルシフェル犯罪対策課の仕事ですもんね。・・・・・あっ、そうだ」 薫はふと自分がここにいた理由を思い出し、自分の席へと駆け寄る。手にしたトランペットを椅子の上に置き、机の上に置いていた隼人のブレザーを取る。それを抱え、薫は隼人の前に駆け寄った。 「えっと、それ・・・もしかして僕のブレザー?」 「はい。石動君から預かってました」 「え?十兵衛君から?」 「はい。『隼人に渡しとけ』って言ってこれを」 「そ、そうだったんだ・・・なんか十兵衛君らしくないなぁ」 「フフ、そうですね。・・・あ、後ろ向いてください。ブレザー着させてあげます」 「着させるって、べ、別にいいよ。怪我人ってわけでもないし、自分で着れるから」 「いえ、その・・・・・着せたいんです。私の手で、隼人君に・・・」 「薫さん・・・」 「ダメ・・・ですか?」 じっと隼人の瞳を覗きこみ、薫はそう問いかける。ブレザーを着せたいと言ってきた薫の願いを受け入れるべきか否かで隼人は迷ったが、いつまでも悩むわけにもいかず、隼人はすぐに決断した。 「そ、それじゃ・・・・・お願いして・・・いいかな?」 「は、はい。それじゃ・・・後ろ向いてください」 少し緊張しながら薫はそう言い、隼人は薫の言われた通り後ろを向く。お互いに少しだけ緊張する中、薫は隼人の背中に目を向けた。 背中にスリットが入ったYシャツに包まれた、意外と大きい背中。これが男の子の背中なんだ・・・、そう薫が思うほどだった。 しかし、今はそれどころではない。目の前にいる隼人にブレザーを着せなければならないため、いつまでもその背中を眺めるわけにいかないのだ。 そう感じた薫は隼人のブレザーの肩の部分を持ち、それを隼人の肩にそっと乗せる。ブレザーが落ちないように肩の内側にしっかりとブレザーを被せ、肩に被さったブレザーの袖に隼人がゆっくりと腕を通していく。両袖に腕を通した隼人はブレザーのボタンを閉め、完璧にブレザーを羽織った。 そんなたった数秒の作業だったが、薫は達成感に心が満たされていた。ほんの些細なことでも、隼人の役に立ったような気がする。そう薫は思っていた。 そして、隼人は薫の方に体を向け、恥ずかしそうな表情を見せながら口を開いた。 「あ、ありがとう・・・薫さん・・・」 「い、いいんです。ただ自分がやりたかっただけですし・・・」 互いに俯き、沈黙する。外から聞こえる軟式テニス部の玉を打つ音や陸上部の校庭を走る足音、そして教室にある時計の針の音等が響き、その音達が2人の耳に入り込んでいく。 そんなどこか静けさが漂う空気を打破せんと、隼人は口を開いた。 「そ、そういえば、薫さんここでトランペット吹いてたんだよね?」 「は、はい。まだ練習中なんで、うまく吹ける自信がないですけど」 「どんな曲を吹くの?」 「今は『スイングボーイズ』という数十年前の映画で演奏された曲を練習してます。トランペットはほかの楽器よりも高い音を出さないといけない所があって、少し難しい曲なんです」 「そうなんだ。でも、ちょっと聴いてみたいなぁ」 「あ、あの・・・。隼人君がそう言うなら・・・少しだけ吹きますけど・・・?」 「え?吹いてくれるの?」 「はい。まだうまくないですが、それでもいいなら・・・」 「うん。聴きたいよ、薫さんのトランペット」 隼人の言葉に、薫はどこか嬉しさを感じた。他の人に自分の吹くトランペットを「聴きたい」と言われた事が初めてだったからだ。それが自分の好きな人なら、尚更嬉しい。 薫は自分の席に歩み寄ると、椅子の上に置いたトランペットを取り、席に着く。音を発する源であるマウスピースに唇を添え、薫はトランペットを吹いた。 ピストンを操作して巧みに音を操り、高い音域のメロディーを薫が奏でる。高い音なのに耳を刺激しないトランペットの音色に、隼人は無言で聞き入ってしまっていた。 やがて薫の演奏していた曲が終わり、薫が恥ずかしそうにマウスピースから唇を離す。そして不安そうな視線を隼人に向け、何かを伺うような表情を見せる。 「あ、あの・・・どうでした・・・?」 「うん、すごくうまいよ。うまく出来ないなんて言い張らなくてもいいぐらいにうまかったよ」 「ほ、ホントですか?」 「うん、ホント」 微笑みを見せながらそう答えた隼人に、薫は頬を赤くして照れ、俯く。自分の演奏をここまで褒めてくれたのも初めてだった上に、自分の好きな人が褒めてくれたため、薫はこれまで以上の嬉しさで心が充ち溢れていた。 その時、ふと薫は今の状況に気づいた。 夕日によってオレンジ色に染まった、誰もいない教室。その中で向き合っている自分と隼人。自分達を見る人や、邪魔する人は誰もいない。 ――――今なら、自分の想いを言えるかもしれない。 そう思った瞬間、心臓の鼓動が急激に激しくなる。ブレザーを着せる時とは比べ物にならない緊張が襲い掛かり、その影響か手が震え始める。 その緊張をぐっと抑えて席を立ち、そして薫は口を開いた。 「あ、あの・・・隼人君」 「ん?何?」 「は、隼人君に・・・その・・・言いたいことが、あるん、です・・・」 「言いたいこと?」 「わ、私・・・わ、たし・・・」 手に来ていた震えが口にまで広がり、言葉ではない言葉が零れる。想いを告げるだけなのにここまで緊張するとは、薫は想像もしていなかった。事実、抑えていた緊張は再び全身を駆け巡っている。 言いたい、けど、言えない。どうしてかわからないけど、言ったらこの身が爆発してしまうのではないか、緊張のせいかそんなおかしな事まで頭を過るようになっていた。 (隼人君が好き・・・隼人君が好き・・・隼人君のこと・・・大好き・・・) 心の中で念じるようにそう呟き、自分の想いを告げようとする。だが、その度に抑えきれない緊張が襲い掛かり、震えが全身を襲う。 そして、薫は再び口を開いた。 「・・・や、やっぱりいいです。その、今言わなくてもいいことなので・・・」 「そうなの?」 「は、はい・・・。今のうちに言っておこうかなと思ったんですけど・・・まだ大丈夫なんでまた機会があったら言います・・・」 「ん~・・・気になるけど、薫さんがそう言うなら言いたくなった時に聞くよ。っと、もう遅いから、僕はもう帰ろうかな」 「あ、はい。また学校で」 「うん。またね、薫さん」 別れの挨拶を交わすと、隼人は机に置いていた手提げバッグを手にし、教室を後にした。隼人が出ていき、1人になった薫は、手にしていたトランペットをぐっと握り締めながら自分の席に着く。 そして、心の中で自分を悔いた。 (なんで・・・なんで言えなかったの・・・?自分の想いを・・・隼人君のこと・・・好きってこと・・・。・・・私、まだ弱いのかな・・・) 夕日に染まった教室に1人座る薫は俯いたまま、隼人に想いを告げられなかった自分を悔み続けた。 そして同時に、次こそは必ず言おう、夕日に染まった教室の中でそう決意を固めていた。 翌日。 学生にとってようやく訪れた土曜日という休日を迎えていたが、昨日の晴々とした空が一変し、どんよりとした雨雲が広がっている。シトシトと雨が降り、外はどこか薄暗くなっていた。 そんな中、明日香の家ではいつも通りの時間に3人がリビングで朝食を食べ終え、椅子に座って寛いでいた。既に私服に着替えている隼人と明日香は一緒にテレビを眺め、面白くも面白くなくもないニュース番組をじっと見ていた。 しかしそんな中で、涼子だけが忙しそうだった。 エプロンを外し、化粧を整え、私服に着替える涼子。こんな雨の日に何処かに行くのだろうか?そう隼人は思った。事実、何処かに出かけるためにバッグを手にしている。 そんな涼子が隼人と明日香の所に歩み寄ると、テレビを見ている2人に話しかけた。 「明日香、今日はバスケ部の朝練ないのよね?」 「えぇ、そうよ?」 「で、隼人君も今日は何もないのよね?」 「そうですけど、何処かに出かけるんですか?」 「今日は朝からお仕事で、夕方まで帰ってこれないのよぉ。こんな雨の中行くのも疲れちゃうけど、これも家のためだものねぇ」 「え?お母さん仕事してたんですか?」 「あら?知らなかったの?近くのコンビニでパートしててね、お父さんが単身赴任してお仕事してるけど、おばさんもお仕事がしたくなっちゃったのよぉ」 「別に、そんなことで仕事しなくてもいいと思うけどね・・・」 「そう言わないの明日香。と、言うわけで、夕方まで2人でお留守番お願いね」 「あ、はい。わかりました」 「それじゃ、行ってくるわね。2人で仲良くしてるのよぉ」 そう言い残し、涼子はリビングを出て玄関へと歩いて行った。靴を穿き傘を手にした涼子は玄関を開き、雨の降る外へと出て行った。 バタンッ!と玄関の扉が閉じ、隼人と明日香は涼子が家を出たことを察知する。しかしそれで状況が変わるわけでも無く、2人はテレビに映るニュース番組を眺め続けた。 だが、しばらくして静寂が広がると、何故か2人は緊張した。よくよく考えればわかることだが、今明日香の家には隼人と明日香しかいない。つまり、2人っきりの状態である。 緊張する理由はわかっているが、どうすればいいかわからない。そう2人は考え、そして黙り込んでいた。テレビから発するニュースキャスターの声だけが響き、リビングが静まる。 そんな状況に耐えきれなくなった隼人が、そっとその口を開いた。 「・・・2人っきり、だね」 「そ、そうね・・・」 「こうして2人で家にいるのもなんだか不思議だけど、これといってやることないね・・・外は雨降ってるし」 「そ、それもそうね・・・。大体の事はお母さんがやっちゃったから、正直暇だわ」 そんな短い会話を交わし、2人はこれから何をするか考えた。テレビを見続けていても朝のため面白い番組がやっているはずがなく、トランプといった遊び道具はあるが2人だけでは面白いはずもない。 何もすることがない、正真正銘の「暇」に陥った隼人はふと床を見る。そしてそれと同時に、隼人はあることを思いついた。 「ねぇ明日香、掃除しない?」 「そ、掃除?なんでよ?」 「なんでって、家を綺麗にすることに理由がいる?」 「そりゃ理由はいらないけど・・・なんで掃除なのよ?もっとその、何か別の事やりなさいよ」 「別の事って、例えば?」 「そ、それは・・・・と、とにかく!掃除なんてしなくていいわよ!」 「そ、そんな大声で言わなくてもいいじゃないか。むしろ、どうして明日香が掃除を嫌がるのかが知りたいよ」 「べ、別にそんなの知らなくていいわよ!・・・で、でも、隼人がそんなにやりたいって言うなら・・・」 「なら・・・一緒に掃除しようよ、明日香」 「・・・わかったわよ」 明日香は仕方無いと言わんばかりの声でそう答え、リモコンを使ってテレビの電源を切り隼人と一緒に椅子を立つ。そして2人は掃除道具がある浴室へと向かった。 廊下を歩き、2階へ上がる階段のすぐ脇にある扉の先に、隼人と明日香が向かう浴室がある。扉を開けると目の前は脱衣室となっており、更に奥のスモークガラスが張られた扉を抜けると風呂場となっている。そんな浴室の脱衣室には洗濯機を始め、掃除機、掃除用のバケツに入った雑巾等、一通りの掃除道具が置かれていた。 その部屋に隼人と明日香が足を踏み入れ、隼人が脱衣室の隅に置かれた掃除機と雑巾の入ったバケツを岩肌の如し黒く荒々しい皮膚で包まれた手で取る。 「それじゃ僕は雑巾濡らして埃が溜まってそうな場所拭くから、明日香はこれで床お願いね」 「あんた・・・妙にえばってない?」 「え、えばってなんかないよ!ただ掃除機を使う方が楽だから、僕より明日香が使った方がいいと思っただけだよ」 「そ、そうね!この家の主である私が、雑巾なんて使う作業をするのは確かに変だわ」 「じゃあ決まりだね。それじゃお願いね、明日香」 そう言って隼人は掃除機を明日香に渡し、それを明日香が受け取る。その後隼人はバケツに水を入れるため水道のある台所へと向かった。1人残された明日香もすぐに浴室を後にし、廊下に出る。 しかしその瞬間、明日香は困った表情を見せながら大きなため息を零した。 (隼人の馬鹿・・・・・掃除機の方が楽って言ってたけど、掃除機なんて使ったことないわよ・・・) 思わず心の中で本音を零す明日香。そう、家の家事は全て母親である涼子がこなしていたため、明日香は家の掃除をしたことが全くなかったのだ。 掃除だけではない。涼子が朝食から夕食を作る台所に入ったことがないため料理もしたことがなく、ボタン式であるにも関わらず風呂の湯の沸かし方すらわからない。全ての家事において、明日香は無知に近い状態だった。 しかし、今更隼人とやることを交代することも出来ない。明日香は仕方なく玄関まで足を運び、すぐ近くにあるコンセントの前でその足を止めた。 (コンセントに挿さないと動かないのはわかるけど、どこにプラグがあるのよコレ・・・) 始めて使う掃除機に困惑しながら、明日香は掃除機を見回しコンセントに接続するプラグを探す。テレビや携帯の充電器ならまだしも、長方形の分厚い板が先端についたホースを持ちプラスチックのタイヤが装着された得体の知れないプラスチックの塊にそんなものがついているのか?そう明日香は思っていた。 しかし、プラグがない電化製品が電化製品とは言わないように、明日香の持っている掃除機にもプラグはちゃんと備わっていた。ようやくそれを見つけた明日香は恐る恐るそれに手を伸ばし、コードがないそれを引っ張る。 すると、引っ張ったプラグが明日香の手によりスルスルと伸び、掃除機の中からコードが姿を現した。メジャーのようにあっさりと姿を現したコードに、明日香は驚きを隠せずにいた。 (こ、これでコンセントまで伸ばせるのね。とりあえずこれをコンセントに挿してっと・・・) 明日香はコードが伸びたプラグを手にしたままコンセントの方へと体を向け、細い穴が2つ開いたコンセントにゆっくりとプラグを差し込む。ここまではテレビや携帯の充電器と一緒のため、明日香に恐れなどない。 しかし、恐れているのはこの先の作業。この掃除機という機械の電源を入れ、床を掃除しなければならないからだ。 明日香は恐る恐るホースに施されたグリップを手にすると、そのグリップに「電源」の2文字が書かれたボタンがあった。テレビのリモコンと同じならこのボタンでこの掃除機は動くはず。そう思った明日香は恐る恐るそのボタンに指を近づけ、そのボタンに触れる。 そしてゆっくりと、電源ボタンを押した。 瞬間、掃除機から空気を吸い込む甲高い音が響き、ホースの先端についた長方形の吸気口に空気が吸い込まれていく。掃除機に見られる当然のことだが、それだけで明日香は肩を跳ね上げた。 (ビ、ビックリした・・・!な、なんなのよコレ・・・もう動いてるわけ?) 動いてるかどうかすら疑問に感じた明日香は、ふとその視線を玄関を上がった所に敷かれた足ふみマッドに向ける。埃らしきものは見られなかったが、靴を脱いだ足でそのマッドを踏むため、見えない埃が溜まってるはず。そう明日香は思っていた。 キーンッ!と空気を吸い込む甲高い音を響かせる掃除機を手にした明日香は恐る恐るそのホースを動かし、足ふみマッドに向ける。そして長方形の吸気口のついたホースの先端をそのマッドに近づけ、目に見えない埃を取ろうとする。 だが、その時だった。吸気口の強力な吸引力によってマッドはふわりと浮き上がり、マッドは勢いよく吸気口に吸い込まれた。それでも掃除機は吸引を止めないため、掃除機はガガガッ!と鈍い音を立てる。 「きゃっ!」 その音と足ふみマッドを吸い込む掃除機に明日香は焦り、掃除機を手にしたまま短い悲鳴を上げ、尻もちをつく。勝手にマッドを吸い込んだ掃除機にどうしたらいいのかわからず、明日香はパニックを起こしていた。 「ど、どうしたの明日香?大声出して・・・・・って、明日香!何してるの!?」 突如背後から聞こえた隼人の声に、すぐさま明日香が振り向く。そこには雑巾を手にしていた隼人が廊下に立っており、足ふみマッドを吸い込む掃除機に気づき明日香に駆け寄って来ていた。 「は、隼人・・・」 「何やってるんだよ明日香。マッド吸いこんじゃってるよ?」 「だ、だって・・・コレが勝手に・・・!」 「なんでか知らないけど、マッド吸いこんじゃダメだよ。ちょっと待ってて、今引き抜くから」 そう言うと、隼人は明日香の手にしているホースのグリップにある電源ボタンを切り、掃除機を停止させる。空気を吸い込む甲高い音が一気に静まり、慣れた動きで隼人は吸気口に吸い込まれた足ふみマッドを引き抜く。 マッドの吸気口に吸い込まれた部分は吸気口の中でグシャグシャになったためか、すっかりしわだらけになっていた。それを隼人は黒く荒々しい皮膚に包まれた掌で押しつけながら擦り、しわを伸ばしていく。次第にしわはあまり目立たなくなり、ほとんどしわが見えなくなったそれを隼人は元の場所に敷き直した。 その流れるような作業に、明日香は言葉すら出なかった。何もできない自分とは正反対の隼人に、明日香は羨ましそうな表情を浮かべていた。 「これで良しと・・・。それで、どうしたんだよ明日香?こんなことするなんて、明日香らしくないよ?」 「ご、ごめん・・・」 「別に謝らなくていいよ。これが僕の物ってわけじゃないんだし。ただどうしてこうなっちゃったのかなぁって――――」 「だって・・・だってだってだってだって!家で掃除機使うの、初めてだったんだもん!!」 半分泣きそうな表情で明日香は力強く叫び、本当のことを隼人に明かす。突如大声を出した明日香に驚いていたが、それ以上に明日香が掃除機を使ったことがないことに驚きを隠せずにいた。 感情を制御できず、思わず自分の恥ずかしい面を曝け出してしまった明日香はその顔を真っ赤にし、本当に泣きそうな表情を浮かべていた。顔から火が噴き出せるなら今すぐに噴き出したい、そう思うほどに明日香は恥ずかしさを抱いていた。 しかし、そんな明日香に隼人は微笑みを見せ、そっと話しかけた。 「正直ビックリしたけど、初めて使ったんだったら仕方ないね。でも、だからって僕は責めたりしないよ」 「隼人・・・」 「僕だって、初めて掃除機使った時はこんな感じだったから。だから、明日香がそんな恥ずかしく思うことなんてないんだよ」 「でも・・・もう中2なのに掃除機も使えないなんて・・・やっぱり、恥ずかしいわよ・・・」 「なら、今から使い方覚えようよ。僕が教えてあげるから、ね?」 そう言うと、隼人はホースのグリップを持つ明日香の手にそっと自分の手を添える。ゴツゴツとした感触に、それでいて確かな温もりを感じる隼人の手に明日香は少しだけ肩を跳ね上げ、頬を赤くする。 そして、何もできない自分に優しくしてくれる隼人の言葉と手の温もりに、明日香は俯いたまま頷いた。 それを確かめた隼人も頷き、ホースを手にしたまま立ち上がる。続けて明日香も立ち上がり、2人はホースのグリップを手にしたまま肩を並べる。やがてグリップから手を離した隼人はグリップの電源ボタンを押し、掃除機を起動させた。 「まずは掃除機の先端を床につけて、その先端を軽く押し当てながら動かして」 「こ、こう・・・?」 隼人の言葉に従い、吸引を始めた掃除機の吸気口をそっと床につける。そして軽く力を入れてそれを床に押し当て、そのまま動かした。 すると、吸気口はスムーズに押した方向に動き、床の上の見えない埃を吸い取った。埃を吸い取っている実感はないものの、床を吸い込みながら動かすことが出来るため、明日香は埃が取れていると確信した。 「うん、それでいいんだよ。そのまま歩いて掃除機の先端で床を拭くように動かしていけば、床の掃除になるんだ」 「な、なるほど・・・。なんか、思ったより簡単ね」 「ほうき使うよりは全然楽だよ。じゃあ床掃除出来たら教えてね。僕はあっちで拭いてくるから」 「あ、待って」 雑巾を拾おうと廊下を歩こうとする隼人を呼び止め、明日香は掃除機の電源を切る。自分の方に振り向き、隼人と向き合う形になった明日香は、言うべきことを言うべくその口を開いた。 「そ、その・・・ありがと・・・」 「え・・・?ありがとうって・・・」 「そ、掃除機の使い方教えてくれてありがとって言ってるの!それぐらい一発で感じ取ってよ!」 「あ、そうだったのか・・・そんな強く言わなくても・・・。でも・・・うん、どういたしまして」 優しくそう答え、隼人は微笑ましい笑顔を見せる。その後隼人は雑巾を拾い、廊下を歩いて行く。そして明日香は再び掃除機の電源を入れ、隼人から教わった通りのやり方で床を掃除していった。 しばらくして、昼前。 一通り掃除を終わらせた隼人と明日香はリビングの椅子に腰を掛け、朝と同じように寛いでいた。否、隼人が掃除しようと言ってから数時間の間に家のほとんどの場所を掃除したため、2人は疲れ切っていた。 「そ、掃除って意外と疲れるわね・・・」 「それはそうだよ。警察署で住んでた時もこれぐらい疲れてたし・・・」 「お母さんって、いつもこんなことしてたのね・・・よく平気で仕事出来るわ・・・」 「ハハハ、明日香のお母さんはそれだけ家事に慣れてるってことだよ」 微笑しながら答える隼人に、明日香は妙に納得したのか軽くため息を吐く。掃除をして疲れているにも関わらず、隼人と話すとその疲れは何処かへと吹き飛んだかのように消え去っていた。隼人も会話をして楽しんでいるのか、その表情に疲れが見えないでいる。 そんな隼人の楽しそうな笑みを見たその時、ふと明日香は今の状況を思い出した。 誰もいない家に隼人と2人っきり。外は雨が降っているため、余程のことがない限り家を訪れる人はいない。邪魔する人もおらず、今の状況を見る人は誰もいない。 ――――今なら・・・言えるかもしれない・・・。隼人の事・・・好きってこと・・・。 そう思った瞬間、明日香の心臓がドクンッ!と音を立てる。2度、3度、果てまた4度と、強い鼓動が連続して起こる。それは途切れることを知らず、激しい鼓動へと変化していった。 似たような感触は、これまでも何度か感じたことがある。初めて中学校に入学して初めて見る生徒と対面したときの緊張、初めてのバスケ部の練習がどんなものかと気になりながら部活を始めた時の緊張、そしてバスケ部の大会で試合の待ち時間に起こる緊張。しかし、今起きているのはそのどれよりも強い緊張だった。 胸がいつもより重い。指先の震えが止まらない。体がいつもより熱い。体で示す「緊張」の2文字に、明日香は苦しんでいた。その苦しみを解くには、隼人にこの想いを告げるしかない。そう明日香は思っていた。 しかし、その時だった。 「さてと・・・僕も疲れたし、また寝ようかな」 そう言うや隼人は椅子から立ち上がり、リビングから出ようとする。疲れた時は休む、それは人やルシフェルにとってごく当り前なことだ。 だが、想いを告げようとしていた明日香にとってそれはせっかくの機会を無駄にすることだった。 「ダメッ!」 隼人が扉を開き廊下に出ようとした時、明日香は思わずそれを止めた。怒鳴りつけるような声に隼人は驚きながら明日香の方に体を向け、椅子から立ち上がった明日香を見る。 それと同時に、頬を赤く染めた明日香は震える指をぐっと握り締め、隼人のすぐ目の前まで近づく。緊張の余り隼人の顔を直視できなくなった明日香は俯き、そして口を開く。 「は、隼人・・・えっと・・・」 「明日香・・・?」 「わ、私ね・・・隼人に・・・言いたいことが・・・ある・・・の・・・」 「言いたいこと・・・?」 「わ、私!隼人のことが・・・隼人のことが・・・!」 明日香が勇気を振り絞り、自分の想いを打ち明けようとする。襲い掛かる緊張を力で封じ込め、ついに明日香はその想いを打ち明ける。 だが、その時だった。 足元から感じた、小さな揺れ。緊張して震えているわけではなく、明らかに床から伝わってきた振動。隼人もそれに気づいたのか、2人は床に意識を向ける。その瞬間、ガタガタと家のあらゆる物が音を立てながら揺れ、強い揺れが襲いかかった。 地震。今まさにそれが2人のいる家に襲いかかっていた。 それは家が崩れるのではないかと思うほど強いものではないものの、立つのが精一杯なほどの強い揺れだった。隼人はバランスを保つため壁を掴み、その体を支える。 しかし、明日香はそうもいかない。隼人の前に立っているため近くに支えになる者もなく、足もとに襲いかかる強い揺れに体のバランスを崩す。 「きゃぁっ!」 「明日香!」 倒れそうになった明日香の手を、隼人は壁から黒く荒々しい手を離し、掴む。しかし壁から手を離してしまったため当然隼人もバランスを崩し、2人とも床に倒れてしまった。 それから少しして、揺れ続けていた床の勢いが弱まり、ようやく地震が止まった。揺れが止まったのを感じた隼人は、自分の身に何が起きたのかを確かめる。 しかしそれよりも早く、明日香の声が発した。 「痛ったぁ・・・は、隼人・・・重い・・・」 自分の体の下から苦しそうに発した明日香の声に、隼人は倒れている明日香の上に自分が覆いかぶさるように倒れていることを感じた。事実、自分の体を明日香の手が押している。 同時に体と体が密着した状態であると気づいた隼人は慌て、短く大声を上げた。 「ご、ごめん!すぐ退くから!」 「な、なんでこっちに倒れてくるのよ・・・おかげであんたに押し潰されてんじゃな――――」 明日香が言葉を発しようとした瞬間、起きあがろうとした隼人の顔と明日香の顔が向きあった。拡大したようにすぐ間近にある互いの顔に、2人は硬直する。 瞬間、2人の心臓が強く脈打った。 倒れたために密着した互いの体、すぐ間近にある互いの顔、そして互いの吐息が掛かるほどの所まで近づいた、互いの唇。その近すぎる距離が2人にとてつもない緊張を与え、心臓が爆発してしまいそうな程の強い鼓動を鳴らす。 「あ・・・う・・・」 「ん・・・はぅ・・・」 もはや言葉ではない言葉が互いの口から零れ、頬が真っ赤に染まった互いの顔を見つめい合ったまま硬直する。 そして凄まじい緊張に2人は成す術もなく、シトシトと雨が降る中、2人はしばらくその身を固めたままだった。 「何をしたんだ、ソルジャー3。ただのチンピラに銃や車を提供するなど、お前らしくもない」 「ウヒョヒョヒョヒョ!なぁに大したことじゃあないわいソルジャー2。ただ資金集めをするだけじゃ面白くないからのぉ、ちょっとした遊び心じゃ」 「その遊び心のせいで、神校の情報が警察側にばれる所だったんだ。遊び心で済む問題とは思えん」 「ヒョヒョ!相変わらず堅い男じゃのぉ。じゃが心配ご無用、そのチンピラどもは全員消しておいたわい」 「フン・・・ならいい。無用となったらすぐに消す、そこはお前らしいな」 「リストラという言葉があるように、世の中というのは常にそんなものなんじゃ。ま、金も手に入れられない無能な奴に当然のことをしたまでよ」 「で、これからどうするつもりだ?またチンピラを雇って遊ぶ気か?」 「いやいや、チンピラがいかに無能な奴らかは承知しておる。もうあんな奴らに頼りはせんよ。まぁそうじゃのぉ・・・・・たまには副業を再開してみるとするわい」 「副業・・・か。お前が警察事さえ起こさなければ、俺にはどうでもいいことだ」 「ウヒョヒョヒョヒョ!起こさん起こさん。それに万が一起こしそうになっても『ヤツ』と入れ替わればすぐに事は片付くわい」 「それもそうだな。とにかく、今回のような事はこれからしないことだ。神校の、それにお前自身のためにも・・・な」 「お心遣い感謝致しまする~。ウヒョ、ウヒョヒョヒョヒョヒョ!」 To be continued... メニューへ 管:だってだってだってだって!あとがきコーナーなんだもん! えぇ↑は無視してもらいまして(ぉぃ、毎度ながらここまでのご拝読、真にありがとうございますm(_ _)m。 小泉涼子(以後「涼」):これからもGENOMEと娘の明日香をよろしくお願いしますね~。 管:って!(☆w☆;)誰かと思えば明日香の母親、涼子かよ! 涼:ウフフ、いつも明日香がお世話になってるわねぇ。実はここの事も明日香と隼人君から聞いたのよぉ。 管:あ、あの2人から聞いたのか・・・。まぁ別に涼子が来たからといって何か変化が起きるわけでもないが。 涼:それもそうねぇ。・・・あら時間が迫ってる。というわけで話してたら切りがないので、早速始めましょう~! 管:お、奥さん・・・ノリノリ過ぎ(☆w☆;)。 夕方の教室で1人トランペットを吹く薫。トランペットの練習兼隼人にブレザーを渡すため待機している場面なのですが、実はこの設定、少し前に思いついたばかりのものです。というのも今話では当初から設定していたことが1つもなく、GENOMEという話を描き始めて少し経った後に思いついたものばかりだったりしますw。 そんな少し前に思いついた設定のため、夕方の教室場面ではやっても意味のないようなことを2人はいろいろとやっちゃってます。でもこれは薫が想いを寄せる隼人に近づこうとする所を示す場面でもあるため、意味のないようなことでも、薫にとっては意味があるようにも捕えられますね、はい^w^(誰だお前。 でもって翌日。雨の降る中涼子はパートに出かけ、家では隼人と明日香の2人っきりの状態に。この設定も↑で説明した通り少し前に思いついたもので、薫と隼人が2人っきりになったのなら、明日香にも同じ状況を作って上げねばという自分の独断と偏見(?)によって出来たものです(ぇ。 そんな2人は暇になり、家を掃除することに。しかし掃除機を手渡された明日香は掃除機を使ったことがなく、掃除機を起動させる所から苦戦する。この場面は明日香の日常生活がいかに親任せかを表している場面で、この掃除が出来ないということが隼人にバレることがきっかけで、明日香は隼人の優しさを受けることになるのです(でも正直幼馴染にだからそんな優しさ受けなくても・・・と思ったりする(蹴))。 掃除が終わり、再び暇になった隼人と明日香。そんな隼人が部屋に戻ろうとした時、明日香は家に誰もいないのを機会に自分の想いを告げようとする。しかしその時強い地震が起こり、想いを告げることが出来なくなってしまう。この設定も何度も↑で説明している通り少し前に思いついたものなのですが、その中でもとくに1番最後に思いついた設定だったりします。というのも↓で説明する場面と↑で説明した場面を繋げる展開をその時考えついておらず、最後の最後でやっと決まったような感じです。 そんな地震に襲われた2人は共にバランスを崩し、倒れた明日香の体に覆いかぶさるように隼人も倒れてしまう。そして隼人が体を起こそうとした時、2人の唇がくっついてしまいそうなほど、顔が近くなる。この場面のモチーフは前々作「BEAST SOLDIER」の第31話の後半で書かれている、ロイが足を躓かせたトーカと一緒に倒れ、トーカが顔を上げた瞬間唇がくっつきそうな程顔が微妙な距離にあった場面。モチーフと言うより、その場面をまるまる使ったような感じになってしまったりw。2人ともいい年頃の中学生であるため欲求を抑えきれずキスをぶちかましてしまいそうですが、その後2人は何もしません。どうして何もしなかったのかは、次回で明らかとなります。 そして2人が硬直してしまっている頃、どこかでソルジャー2とソルジャー3の会話が・・・。果たしてソルジャー3の「副業」とはなんなのか、そしてソルジャー3がいっていた「ヤツ」とは一体何者なのか。それは次回のお楽しみ~。 涼:あらぁ・・・私のことが全然書かれてないわねぇ。 管:そりゃあ今回涼子はパートで出かけてたんだから、長ったらしく書く理由がないZE☆。 涼:そうだけど、やっぱり明日香の母親として少しは私の事書いてくれてもいいんじゃないのぉ? 管:意味が分かりませんよ奥さん(☆w☆;)。だって今話ではあんまり登場してないのは事実なんだから仕方ないでしょう? 涼:あらぁ、そんなこと言っていいのぉ?隼人君から聞いたこと、ぜーんぶ奥さん達に話しちゃうんだから。 管:Σ(☆Д☆;)。ダメ!そんなのダメ! 涼:例えばそうねぇ・・・管理人さんはパクリ好きとか、パクリ好きとか、パクリ好きとか――――。 管:いぎゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!あんたもそれを言っちゃうかあああああああああぁぁぁぁぁ!!!!! バタッ!(倒れる) 涼:あらヤダ、管理人さん大丈夫ですか?ん~・・・ダメみたいねぇ。あら、それよりもうこんな時間。ではこれであとがきコーナーを終わりにしますね。それでは皆さん、次の話もよろしくお願いします~。 |