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休憩場

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第16話

第16話【サイクロプス】











翌日。

青々とした快晴の空は昼を迎え、青空に上っていた太陽がその輝きをより一層増していく。春から夏に移り変わろうとしているためか、昼になってからの気温上昇は日に日に強さを増していっていた。

そんな空の下、四木中学校は昼休みを迎えていた。給食を食べ終えた生徒達が校庭へと飛び出して体を動かし、一方では図書室で本を読んでいる。学校生活で唯一の長い休み時間を、生徒達は有意義に過ごしていた。

しかし、その中で有意義に過ごせない生徒が1人。

場所は、職員室。エアコンから吹く冷風が流れるその部屋の1番隅に設けられた長テーブルとキャスター付きの椅子のある所に、暑苦しそうな先生と一緒にその生徒はいた。

鮮やかな茶色に染めた髪にYシャツのボタンを腹部まで開き、腰まで下した灰色のズボンの尻に設けられたファスナーから出た長く太い爬虫類の尻尾を垂れ下げたその生徒、十兵衛は退屈そうに椅子に腰を掛け、同じく椅子に座る先生と長テーブルを挟んで向き合う。十兵衛は本当に退屈なのか長テーブルに肘をつき、掌に顎を載せている。

「センコー、今は天下の昼休みなんだぜ?ちょっとぐれぇいいじゃねぇかよぉ」

「何がちょっとだ!職員室の冷蔵庫から勝手にバナナ1房も食っておいて!」

「唾飛すんじゃねぇよセンコー」

「うるさい!全く・・・職員室の食べ物に手を出すとは、本当になっとらん・・・」

「大体よぉ、たかが冷凍バナナ1房で生徒指導ってどういうことだよ?1房ぐらいスーパーで安く売ってるぜ?」

「そう言う問題ではない!そもそも石動、お前は服装や言動が既になっておらんのだ!確かに成績は学年上位だが、服装も守れない言葉も守れないでは高校進学は無理だぞ」

「ヘッ、進路は叔父貴のとび職やるつもりだから高校関係ねぇんだよ、バーカ」

「バ、バカだとぉ!?もう怒った!石動、明日保護者を呼んで臨時で三者面談だ!保護者としっかり今の状況について語ってやる!」

「上等だっつーの。そん時は叔父貴ととび職仲間『全員』で仲良く面談してやるよ。そんじゃ、生徒指導終わりなら俺はもう出るぜ」

退屈そうに、それでいてどこか楽しそうにそう呟き、十兵衛は席を立つ。尻から生えた爬虫類の尻尾を動かしながら部屋の中を歩き、そして職員室を出て行った。

廊下に出た十兵衛は職員室の扉を閉めると、背中を伸ばし大きく欠伸をかく。職員室で先生と一対一で厳しい面談をする「生徒指導」を40回以上も経験している十兵衛にとって、それは眠気を誘うものであり、退屈以上の何者でもなかった。

服装を正し、言葉遣いを良くすればいい話だが、堅っ苦しいことが嫌いな十兵衛がそんなことをするはずもなく、退屈過ぎる生徒指導が連鎖する一方。しかしそれで学校を辞めさせられるわけでもないため、十兵衛は自分のスタイルを崩さないのだ。

そんな十兵衛が欠伸をかき終え、廊下を歩きだしたその時、放送を知らせるチャイムが廊下に響いた。そして、廊下に設置されたスピーカーから息を荒くした声が響く。

「石動ぃ!!すぐに職員室に戻ってこぉい!!」

怒鳴りつけるような先生の大声が十兵衛を呼び、ガチャンッ!と音を立てて放送を切る。その放送を聞いた十兵衛は真顔で、しかしどこか楽しさを秘めた表情でぼやいた。

「あ、みかん食ったのもバレたか」










それから時間が過ぎ、夜。

太陽は既に空の彼方に沈み、星々が輝く夜空へと変わっている。今宵は満月のためかいつもよりも空が仄かに明るく、普段はどこか薄気味悪い夜も、今日に限り良い夜となっていた。

満月が夜空に浮かんでいる時間のため、学校で部活動をしていた生徒達は既に学校を後にしていた。校庭で活動している軟式テニス部やその校庭の端にあるバスケゴールで活動しているバスケ部の姿が消えたため、校庭は不気味なほどの静けさが広がっている。

そんな校庭の犬走りを、手提げバッグを手にした十兵衛がとぼとぼと歩いていた。昼休みに発覚した職員室のみかんを勝手に食べた事で十兵衛は放課後に居残りを受け、何人もの先生を相手にした生徒指導を受けていた。それが夜まで続き、今に至る。

先生達の長ったらしい話を聞き、ようやく帰れたと思えば既に夜。いつも学校が終わったら遊びに行っている十兵衛にとって、これほど気の落ちる事はなかった。

(はぁ・・・たかがみかん10個くらいでこんな時間まで指導しなくてもいいじゃねぇかよ・・・。せっかく帰ったらエロ麻雀やりに行こうと思ってたのに・・・)

心の中で愚痴を零し、十兵衛は犬走りを歩く。やがて十兵衛は校門の前まで辿り着き、既に閉まっているそれを開き校門を抜ける。

そして、ゆっくりと校門を閉めた、その時だった。

「こんばんわ~」

何処からか聞こえてきた、女性の声。自分を呼んでいるかのような声に十兵衛は辺りを見回すと、その声の主は十兵衛のすぐ近くにいた。

十兵衛のいる校門の前にいたのは、クールなレディーススーツに身を包んだ、紫色の長髪をした女性。鮮やかな紫色の髪を除けば、何処にでもいそうな普通の女の人だった。

その女性の姿を見た十兵衛は声を掛けられたことに対する疑問よりも、どんな整髪料を使えばあんな色の髪になるのかを疑問に思っていた。魔法の国にいる魔女のような、妖しい美しさを秘めたその紫色の長い髪に、十兵衛は気付かぬうちに釘付けになっていた。

それを他所に、目の前にいる女性は再び十兵衛に話しかけた。

「四木中学校に通っている、石動十兵衛君、ですね?」

「え?どうして俺の名前・・・」

「あ、申し遅れました。私(わたくし)、こういう者です」

そう言うと、女性はスーツの内ポケットから名刺を取り出し、それを十兵衛に渡す。十兵衛は自分の名前を知っている女性に警戒心を露にしながらも、その名刺を受け取る。

そして、名刺に書かれている名を読んだ。

「地田コンサルティング、地田・・・なんて読むんだ、コレ・・・」

「露緒羅(ろおら)、です。そこにも書かれています通り、私は地田コンサルティングの社長兼社員を務めさせてもらっています」

「で、コンサルティングって何なんだよ?あと、どうして俺の名前知ってんだ?」

「簡単に言えば、一種の探偵のようなものです。ある被害者からの依頼で捜査を進めておりまして、あなたの名前は警察の方から伺いました」

「へぇ~・・・探偵かぁ。でもその紫染めの髪の毛のせいで探偵らしく見えねぇ・・・」

「あ、これ地毛です」

「えっ!?染めてたんじゃねぇの!?」

「はい。初めて会う方にはよく言われるんですよ」

「おいおい・・・正直俺、あんたのこと悪趣味な女かと思ってたぞ?」

「フフ、それもよく言われます」

クスクスと微笑し、紫色の長髪をした女性、地田露緒羅はそう答える。その微笑みに十兵衛の警戒心は消え、ただの珍しい探偵さんだと認知した。

しかし、同時にある疑問が浮かんだ。

何故探偵ともあろう人が、自分に声を掛けてきたのか?何か自分にかかわる捜査なのだろうか?そんな疑問を抱いた十兵衛は露緒羅にその疑問をぶつけた。

「それで、あんたみたいな探偵さんが俺に何の用なんだよ?ある被害者からの依頼とかなんとか言ってたみたいだけど」

「はい。その依頼に当たって、あなたにいろいろと聞きたいことがありまして」

「聞きたいことって?」

「数日前の水扉街道、そして一昨日のここで起きた事件の発端・・・・・神校についてです」

「し、神校!?」

「はい。今回依頼してきた人がその神校の被害者で、警察にも調査を依頼していたそうですが、我々地田コンサルティングにも依頼しておりまして。それで、神校のルシフェルと神校の生物兵器と戦ったというあなたにお話を伺おうと思いまして」

「なるほど~・・・。なんかめんどくせぇけど、神校の調査ってんなら仕方ねぇか」

「ご迷惑お掛けして申し訳ないです。あ、立ち話もあれですし・・・・そうですね、ご自宅の方は遠いのですか?」

「え?まぁちょっと遠いかな」

「では話が長くなるといけませんので、ご自宅までの帰り道でお話を伺うことにしましょう」

「は、はぁ・・・」

十兵衛はどう答えれば良いかわからず、ため息にも似た微妙な返答をする。別に神校のこと話すだけだし、まぁいいか。そんな事を思いながら、十兵衛は露緒羅と共に夜の道を歩いて行った。



しばらくして、2人は河川敷の遊歩道を歩いていた。

サッカーや野球等のスポーツを行う運動場が広がり、街から街へと繋ぐ送電線を支える鉄塔が建つ場所で、かつて隼人が薫を助けるべく興志郎と対峙した場所でもある。すぐ傍を川が流れているため長閑な風景が楽しめる場所だが、夜のためか河川敷は不気味な雰囲気に包まれており、街灯がないため辺りはかなり暗い。

そのためか、普段は遊歩道に数える程いる人が今は全くと言っていいほどおらず、十兵衛と露緒羅以外の人影は感じられなかった。しかし夜空に浮かぶ満月の光がある程度見渡せるぐらいの明かりとなってくれているためか、不思議と2人は恐怖心を抱くことはなかった。もっとも、十兵衛からすれば通い慣れた通学路のため、夜の遊歩道で恐怖を抱くことは当然ない。

そんな遊歩道を歩きながら、露緒羅はメモ帳を手に十兵衛に質問をしていた。

「では、最初に出会ったのは学校の前で、その後、水扉街道で襲われたということですね?」

「そういうこと。あの鮫野郎、人をストーキングした上に隼人のこと教えろ教えろって、あぁ・・・思いだすだけでスッゲームカつく」

「それでその数日後、学校に黒い竜の形をした生物兵器があなたと一文字隼人君を連れ去ろうと襲い掛かって来た。それをあなたが倒し、その後神校のルシフェルが姿を現した。そうですね?」

「あぁ。あんなバカでかい化け物を神校が作ったってのには、流石に驚いたけどな」

「MLAにバイオ処置をするなんて考えはそう思いつく物では無いですからね。その点、神校はかなり強大な組織ということがわかります」

そんな事を話しながら、2人は遊歩道を歩き続ける。満月が放つ月光が照らしてくれているがまだまだ暗いため、不気味な雰囲気は消えることがない。恐怖心を抱いていない2人だったが、周りに広がる闇はそれを感じさせようとするかの如く、気持ち悪い静けさを保っていた。

そんな遊歩道をしばらく歩いていたその時、十兵衛と露緒羅の前方にあるものが見えた。

それは、送電線を支える鉄塔。暗闇の中でもはっきり見えるそれは、かつて隼人が興志郎と戦い合った場所。その事を知っているのか、露緒羅はその鉄塔に目を向けた。

「そう言えば、一文字隼人君はあそこで初めて神校のルシフェルと相手したんでしたね」

「あぁ、なんか前に隼人がそんな事言ってたなぁ。って、どうしてあんたがそれを?」

「その時現場に駆け付けた警察から聞いたんです。その時の一文字君と戦った相手は、天使の姿をしたルシフェルだったそうです」

「それが一昨日、学校に出てきたルシフェルだって言いたいんだろ?」

「ハハ、先に言われてしまいましたか」

口元に笑みを浮かべながらそう言うと、手にしていたメモ帳を内ポケットにしまい、ズボンのポケットに手を入れる。

「しかし驚きました。あなたのような状況の飲み込みが早いルシフェルが、こんな場所にいらしたなんて」

「そんな珍しくもねぇだろ?俺は絶滅寸前危惧種かっつーの」

「フフ、そうかもしれませんね。ある意味で・・・ね」

露緒羅が静かにそう呟いた瞬間、ズボンのポケットに入れていた手が勢いよく飛び出した。

その掌に潜んでいたのは、白い粉が塗されたハンカチ。それを手にした手を、露緒羅は十兵衛の口元目掛けて勢いよく伸ばした。

だが、その時だった。露緒羅の手が十兵衛の口に襲いかかる瞬間、十兵衛は体を捻り、尻から生えた太く長い爬虫類の尻尾で露緒羅の手を叩いた。予想外の攻撃に露緒羅は掌からハンカチを落とし、その隙に十兵衛はすぐさま距離を離す。

地面に落ちた白い粉が塗されたハンカチを目にした十兵衛は、それまで消えていた露緒羅に対する警戒心を一気に強めた。

「ちっ・・・危ねぇところだったぜ。今までのは全部芝居ってことかよ、紫ババア!」

「・・・フフ、以外と鋭いわね。ソルジャー2の言ったことは本当だったか」

口元にニヤリとした笑みを浮かべ、露緒羅はそう呟く。先程までとは明らかに違う態度に、十兵衛は更に警戒心を高める。

そんな十兵衛を露緒羅は鋭く、それでいて妖しい視線で睨み、その口を開いた。

「あの距離でリキッドホワイトを含ませたハンカチに気づいた反応の良さ、そしてあたしに対する危険を感じすぐに距離を離した瞬発力。流石はソルジャー2に傷を負わせ、Gを倒しただけはあるわ」

「あの化け物の名前を知ってる・・・?まさか、お前!」

「そう、あたしはあんたに入学手続きを済ませるために来た、神校に忠誠を誓ったルシフェルよ」

鮮やかな紫色の長髪を闇から吹いてきた風に靡かせ、露緒羅は自らの正体を明かす。十兵衛を捕えるために現れた神校のルシフェル、それが、露緒羅の正体だった。

空に浮かぶ満月が丁度良く露緒羅の背後に浮かび、その月光で露緒羅を照らす。月光に照らされた紫色の長髪はその鮮やかさを増し、妖しい美しさを醸し出している。そんな露緒羅を前に十兵衛は強めていた警戒心を緩めることなく、露緒羅を睨み続けていた。

「前から気になってたことだったけど・・・何で俺と隼人を誘拐しようとするんだ!何か理由でもあるのかよ!」

「誘拐?言葉が悪い。あたし達はただ有能なルシフェルを『入学』させようとしているだけ。下衆のやる行為とは訳が違うわ」

「ほとんど同じじゃねぇかよ!人の気持ち考えねぇで、テメェらが勝手に誘拐してるだけなんだよ!鮫野郎といいガチホモ天使といい・・・テメェらのしてることは下衆以下だぜ!」

「フフ、なかなか口が悪いわね。入学手続きを済ませる前に、少しお仕置きが必要かしら」

「ヘッ、上等。そのお仕置き、テメェにしてやるぜ!」

十兵衛は力強い声でそう言うと、手にしていた手提げバッグを地面に投げ捨て、右手の袖を肘まで捲り上げる。そして、十兵衛は右半身全体に力を入れる。

「見せてやるよぉ。俺の・・・・・カッケェ姿をなぁ!」

決め台詞の如くそう叫び、右半身全体に力を入れていた十兵衛は変身を開始した。

体の右半身の皮膚が爬虫類の鱗に覆われ始め、右半分の頭部から龍の如し鋭く長い3本の角が生え始める。それに乗じて右目も凄まじく鋭い爬虫類の眼へと変貌し、右牙が喉に達する程に長く伸びる。更に右腕の袖を捲って露になった爬虫類の鱗に包まれた右手の爪が鋭くなり、右肘から凄まじく長い刺が生える。

変身を完了させ、十兵衛は尻尾を生やした龍人と化す。その姿に、露緒羅は驚くと同時に、口元に笑みを見せた。

「それがあんたの変身した姿・・・。なるほど、『ドラゴン』のゲノムコードだけはあるわね」

「俺のゲノムコード知ってるっつーことは、あの鮫野郎から聞いたんだな?」

「当然。事を済ませる前にはまず情報収集。ぶっきら棒なソルジャー2の情報も満更ではなかったわ」

「けど、『百聞は一見に如かず』って言うだろ?お前らみてぇな、人の気持ち考えねぇ奴らに、俺はゼッテー・・・負けねぇ!」

十兵衛は原型を留めている左目と、龍の眼と化した鋭い右目で露緒羅を睨む。中学生とは思えない闘気と決意の込められた睨みに、露緒羅の口元に浮かんでいた笑みは更に不気味なものへと昇華する。

「威勢がいいねぇ、ボウヤ。けど、そんなゲノムコードじゃあ・・・・・このあたしには敵わないわよ」

不気味な笑みをそのままに、露緒羅が静かにそう呟く。瞬間、露緒羅の体から鋭い殺気が放たれ、目には見えないそれが十兵衛に襲いかかった。ピリピリと感じるそれが身に迫る「危険」を十兵衛に確信させ、十兵衛は警戒心を高める。

そして、十兵衛に殺気を叩き込んだ露緒羅は不気味な笑みを見せながら、ルシフェルの「姿」になるべく変身を始めた。

露緒羅の額の肉が変形を始め、巨大な球体のようなものを作り出す。それはやがて綺麗な楕円形へと形を変え、その肉が白く変色する。更にその中央から大きな瞳のようなものが浮き上がり、露緒羅の変身が完了する。

変身した露緒羅の姿は、額に巨大な「目」を作り出し、三つ目と化した女。何処からか吹いてきた風に紫色の長髪が靡き、露緒羅の姿を更に異様なものに見せる。

「め、目・・・!?」

「驚いてるようだねぇ。あたしのゲノムコードは『サイクロプス』。つまり、あたしは『一つ目の怪物』ってことさ」

「ひ、一つ目って・・・右目も左目もちゃんとあるじゃねぇか!」

「フフ、よく言われるよ。けど、変身したあたしの主眼はこの左右の目ではなく、この額に生まれた『第三の目』に移り変わる。この両目は第三の目の視界を補うぐらいにしか、まともに働かなくなるってことさ」

「ヘッ、つまり今は右目と左目で見てるんじゃなくて、デコに出来た馬鹿デケェ目で見てるっつーことだな。少し視界が広くなるだけで、変身してもあんま変わらねぇんじゃねぇか、ヘヘヘ」

「それもよく言われるわ。でもね、人を見た目で判断すると、どうなると思う?」

先程から見せている不気味な笑みをそのままに、露緒羅はそう呟く。そして右手を軽く横に伸ばし、その右手を軽く振り上げる。

瞬間、露緒羅のすぐ横に伸びている遊歩道が凄まじい勢いで爆発した。地雷が炸裂したかの如く、コンクリートで出来た遊歩道が吹き飛ぶ。露緒羅のすぐ真横にはまさに地雷が炸裂したかのような大きな穴が開き、その穴に遊歩道の残骸が落下していく。

一体何が起きたのか、十兵衛は状況を理解するのにかなり時間が掛かってしまっていた。露緒羅が右腕を振り上げた瞬間、地面が吹っ飛んだ。それしか目に入らず、そしてそう理解するほか無かった。

目を大きく見開き、思わず口が開いてしまっている十兵衛。その姿を目にした露緒羅はクスクスと微笑し始める。

「その様子だと、今のでかなり驚いてるようだねぇ。たかが地面を吹き飛ばしただけでそれじゃ、この先辛いわよ?」

「地面を吹き飛ばしたって・・・・・まさか、お前の能力って!」

「そう、あたしの能力はこの広大な『大地』を操ること。この足が地面についている限り、目に見える全ての土、砂を操ることが出来る」

「じ、地面を操る・・・!?んな、馬鹿な・・・」

「驚くのも無理ないわ。大地を操るなんて、物理上不可能な事だもの。けど、あたしは違う。この『サイクロプス』のあたしに、不可能なんて文字はなくてよ」

そう言うと、露緒羅は再び右手を軽く横に伸ばし、そして軽く振り上げる。地面の爆発を目の当たりにしたばかりの十兵衛はその瞬間強めていた警戒心をこれまで以上に強くさせ、いつでも避けられるように体に力を入れる。

だが、露緒羅が右腕を振り上げても、地面はどこも爆発しなかった。まさかフェイント・・・?そんな事を思いながらも、十兵衛は露緒羅の動きをじっと見る。

しかし、その時だった。先程の地面の爆発で大きく口を開けた穴から鈍い物音が発し、穴の中に落ちていた遊歩道の残骸が微かに動く。次第にその物音は数を増し、それに乗じて残骸の動きも激しくなる。やがて穴の中で動いていた残骸が勢いよく上空に吹き飛び、穴の外側へと落下する。

そして、穴の中からそれは這い上がって来た。

穴から出てきたのは、土で出来たミイラ。7、8体はいるだろうそれらは眼球や内臓といったものが全くないが、腕や足、頬や喉等、所々土の肉で覆われていた。穴から這い上がって来たそのグロテスクなミイラ達は低く唸りながらゆっくりと立ち上がり、そして十兵衛を凝視する。

「うっ・・・な、なんだこいつら!?」

「フフフ、驚いたかい?こいつらはあたしの忠実な下部『マッドミイラ』。と言っても、人の形に土を変形させて作り出しただけのものよ」

「土で作った人形ってことかよ・・・。ミイラの姿といい、あんた悪趣味にも程があるぜ」

「フフ、何度でも言うがいいわ。マッドミイラを甘く見るとどうなるか、思い知らせてあげるよ。行きな、あたしの下僕達」

露緒羅の言葉を耳にした瞬間、土で出来たミイラ・マッドミイラは低い唸り声を上げながら十兵衛に突進した。土で出来ているとは思えない程機敏に、そして飢えた屍の如くマッドミイラは十兵衛に迫っていく。

そんなマッドミイラに十兵衛は怖気を感じながらも、爬虫類の鱗に包まれた右手の拳を握り締め、戦う姿勢を見せる。しかし自分1人に対して相手は多数。真っ向から突っ込んでは袋叩きにあうのがオチ。現状では十兵衛のほうが明らかに不利だった。

しかし、その相手がただの土で出来ているのも事実。そう感じた十兵衛は1番近くまで来たマッドミイラに視線を向け、握り締めた拳を構える。

そして、龍の腕と化した右手で、マッドミイラの胸を殴り飛ばした。

変身したことで得た右手の超怪力から繰り出された拳によってマッドミイラの体は宙を舞い、同時に土で出来た体が虚しく崩れ落ちる。土の塊となったそれを目に、十兵衛は確信を抱いた。

――――土で出来たミイラなんか、叩き潰せばいい。

確かに数こそ多いものの、所詮は土で作り出されたもの。体そのものは脆く、強い力を与えればすぐに壊れる。

ならば、袋叩きにあう前に全部倒してしまえばいい。それが、十兵衛の導き出した結論だった。

倒し方を見つけた十兵衛は、2体、3体と迫ってくるマッドミイラを太く長い尻尾で叩きつけ、超怪力を誇る右足で蹴り飛ばし、そして龍の腕と化した右腕で殴り飛ばす。7、8体はいたマッドミイラはものの数秒で全て体がバラバラに崩れ、土の塊となって地面に虚しく落ちた。

露緒羅が作り出したマッドミイラが全て消え、十兵衛は露緒羅を睨む。自分が作り出したマッドミイラが全て破壊されたにも関わらず、露緒羅の表情に焦りというものはなく、十兵衛の動きを見て楽しんでいるかのような不気味な微笑みを見せていた。

「お前の言ってた下僕とかやらは全部ぶっ倒したぜ?残ってんのはお前だけだ、紫ババア」

「フフ、あの数のマッドミイラ相手に怯みもせずに挑んだかい。中学生とは思えない度胸してるよ。それとも歳を誤魔化してるのかねぇ?」

「んなわけねぇだろうが。俺は正真正銘、13の中2だっつーの」

「フン、まぁそんな事はどうでもいいわ。マッドミイラを倒したぐらいで強気になってるようじゃ、まだまだあんたが子供だってわかるしね」

不気味な笑みを見せながら露緒羅がそう呟くと、何の前触れもなく右腕を軽く振り上げる。その瞬間、十兵衛のすぐ背後に広がる地面が勢いよく爆発した。音を立てて爆発した地面は土の塊を宙に舞い上がらせ、驚きを隠し切れていない十兵衛の周りに降り落ちていく。

その時、十兵衛は露緒羅の能力を改めて知った。目に見える範囲の全ての大地を操る露緒羅にとって、地面はもはや武器の倉庫。十兵衛からしてみれば、どこが爆発するかわからない地雷原のようなものとなっているのだ。それを知った十兵衛はどうすれば良いかわからずにいた。

そんな十兵衛の驚きに満ち、そして悩み苦しむ表情を見るや、露緒羅の笑みは更に不気味なものへと変貌する。額に出来た巨大な目で十兵衛をじっと睨んでいた露緒羅はその不気味な笑みをそのままに、左手を軽く振り上げる。

瞬間、今度は十兵衛のすぐ右側に広がる地面が爆発し、十兵衛の周りに再び土の塊が降り注ぐ。爆発した地面に対する驚きと、いつ自分に襲いかかってくるかに対する恐怖が混ざり合い、十兵衛の表情は若干歪み始めていた。

つっ立ってても意味がねぇ・・・。そう感じた十兵衛はその場所から逃げるカの如く、露緒羅を軸にして円を描くように地面が爆発したばかりの右方向へと走った。

額に出来た大きな目でそれを見た露緒羅は逃げ惑う子羊を虐めるかの如く、2回、3回と両手を交互に軽く振り上げる。それに合わせて走っている十兵衛の周りに広がる地面が次々と爆発し、十兵衛の進行を妨害する。しかしそれでも、十兵衛はその足を緩めることはしなかった。

策があるわけではない。むしろ、無いに等しい。地面を操るという無茶苦茶な能力を使う相手に近づくこともままならない。かといって立ち止まっていてはいつかは攻撃を喰らう。攻めようにも、守ろうにも、十兵衛はどうしようもない状況だった。

――――ちっ、まどろっこしい!

どう攻めるか、どう守るか。今の状況下でそんなことを考えることに嫌気を差した十兵衛は考えるのを止め、十兵衛は両手を交互に振り上げている露緒羅を睨む。そして十兵衛は右腕に力を入れ、その腕から淡い青色の電気を放出させた。

一瞬腕を走り、そしてその瞬間掌から一気に放出した電気の輝かしい光が十兵衛の周りを明るく照らし、その空間だけ青色に染める。それを目にした露緒羅は、表情に浮かばせていた不気味な笑みの中に驚きを見せ始めていた。

それによって生まれた僅かな隙を逃さず、十兵衛は地面を駆けていた足を急停止させる。そして、露緒羅目掛けて右腕を突き出した。

「喰らえ!雷神ビーム!」

右掌に溜まっていた電気が右腕が突き出されたと同時に勢いよく放たれ、露緒羅に向かって一直線に飛んだ。弾丸の如し速さで電気は露緒羅目掛けて突き進み、露緒羅へと迫っていく。

だが、そんな電気を前にしても、露緒羅は避ける素振りすら見せないでいた。そして電気が接近してくる方向へと左腕を軽く伸ばし、その腕を軽く振り上げる。

すると、左腕が振り上げられたと同時に自分の前方一帯に広がる地面が爆発し、接近してきていた電気は吹き飛ばされた遊歩道の残骸や土の塊に衝突した。土は電気を通さないため、遊歩道の残骸や土の塊に衝突した電気はその姿を消す。

そう、露緒羅は地面を爆発させることで、十兵衛の電気を防いだのだ。

露緒羅の前方一帯には大きな穴が口をあけ、吹き飛んだ遊歩道の残骸や地面の塊が次々とその穴に落ちていく。地面を爆発させて攻撃を防いだ露緒羅に、十兵衛は驚愕していた。

「お、俺の雷神ビームが・・・!?」

「今のがあんたの能力の1つだね?遠距離から電気であたしを狙い撃とうとしたのはいい判断だけど、あたしの能力を忘れてもらっちゃ困るねぇ、フフフ」

微笑しながらそう呟いたその時、露緒羅は十兵衛の立つ方向へと右手を軽く振り上げる。瞬間、十兵衛の足元の地面から土で出来たミイラの手が幾つも飛び出し、十兵衛の両足を掴んだ。

突如足元から飛び出した幾つものミイラの手に十兵衛は驚愕したが、その時にはすでに膝から下の足を掴まれており、足を動かすことが出来なかった。超怪力を誇る右足すら動かすことが出来ず、十兵衛はその場から動けなくなってしまった。

「く、くそっ!」

「ハハハ!1度倒したマッドミイラが復活しないとでも思ったかい?土さえあれば、マッドミイラはいくらでも作れるのさ」

そう言うと露緒羅はゆっくりと歩き始め、動けなくなった十兵衛へと近づく。そして歩きながら露緒羅は右腕を軽く振り上げ、十兵衛の背後に広がる地面から2体のマッドミイラを出現させる。

地面に埋もれていた亡者が地面から這い出てくるかの如く姿を現した2体のマッドミイラは目の前にいる十兵衛の両腕を土で出来た腕で締め上げ、その両腕を動かせなくする。超怪力を誇る右腕で十兵衛はマッドミイラを払い除けようとしたが、それすらも封じてしまう程の力でマッドミイラは両腕を締め上げられていた。

手と足の動きを封じられた十兵衛は手足に力を入れ強引に体を動かそうとするが、それでもマッドミイラの力には敵わない。身動きが取れない状況に思わず舌打ちをする十兵衛の元に、露緒羅はゆっくりと近づいていく。

やがて、露緒羅は十兵衛のすぐ目の前まで、その距離を縮めていた。十兵衛の体に手が届く距離まで露緒羅は近づくと、右側だけ爬虫類の鱗で覆われた十兵衛の顎をそっと掴む。

「さ、触んじゃねぇよ紫ババア・・・!」

「フフ、初ねぇ。もしかして緊張してる?」

「んなわけねぇだろうが!テメェを感電死させてぇぐれぇイライラしてるっつの!」

力強い声でそう言うと、十兵衛は締め上げられている右腕から電気を放出させた。右手の中で電気が青く輝き、右腕を封じているマッドミイラを青く照らす。しかしマッドミイラは土で出来ているため、十兵衛の電気が感電することはなく、腕を締め上げる力を緩めない。

その電気を目にした時、露緒羅は口元に不気味な笑みを浮かべた。

「感電死?このあたしを誰だと思ってるんだい」

そう呟いた瞬間、露緒羅は電気を放出している十兵衛の右手首を掴んだ。それによって電気は露緒羅の手へと流れ、露緒羅の体を感電させる。自殺行為に近い露緒羅の行動に、十兵衛は驚愕していた。

だが、十兵衛の電気に体を感電させているはずの露緒羅は苦しむ表情を一切見せず、むしろ全く痛みを感じていないかの如く、不気味な笑みを見せ続けていた。それだけではない、下手をすれば皮膚を火傷しかねない電気に感電しているはずの露緒羅の皮膚は、全くといっていいほど電気に傷つけられていなかった。

「んな・・・馬鹿な・・・!感電してるのに、全然平気って・・・!」

「忘れたかい?あたしは大地を操る『サイクロプス』のルシフェル。この手も、この足も、そしてこの体も、大地を操るための物へと作り変えられている。つまり、あたしの体は大地『そのもの』なのさ」

「大地、そのもの・・・!?」

「そう。大地そのものなら、当然電気も通さない。つまり、あたしには電気は通用しない。あんたと戦う前から、それは十分理解していたのさ。その上であんたを踊らせるのは結構楽しかったわよ?フフフ」

「ち、ちくしょぉ・・・!」

「諦めなさいな。あんたが神校に入学することは、もはや決定事項なんだ。こいつで、すぐに手続きを済ませちまうよ」

露緒羅はそう言いながら電気が流れなくなった十兵衛の右手首から手を離し、ズボンのポケットに入っていた中身を取り出す。その手が取りだしたのは、白い粉が入った小さな瓶だった。

コルクでしっかりと栓がされているそれの中身である白い粉は、最初に露緒羅がハンカチに塗していたものと全く同じもの。その純白の粉は満月が放つ月光で輝き、何処か美しく見えていた。

「そ、そいつは・・・!?」

「おっと、まだ説明してなかったねぇ。こいつは神校で作り出した薬、リキッドホワイト。最初は強い幻覚作用があるけど、しばらくすると頭が真っ白になって意識が無くなる。そして意識が無くなった後には、神校への入学手続きが済む」

「て、手続きが済む!?」

「簡単に言えば、頭が真っ白になった状態で神校に足を運ぶってことさ。一度こいつを吸えば、すぐに真っ白になるよ?フフフ」

露緒羅は不気味な笑みを見せると、露緒羅は白い粉・リキッドホワイトが入った小さな瓶のコルクを抜く。ポンッ!と音を立ててコルクは抜け、口の開いたそれを露緒羅はゆっくりと十兵衛の口へ近づける。

「や、やめろ!」

「フフ、そんな拒むんじゃないよ。こいつを吸えば、すぐに楽になるか・ら・さ」

露緒羅は不気味なリズムでそう呟くと、反抗するかのように首を動かす十兵衛の顔をがっしりと掴み、その口を強引に開かせる。十兵衛は体を無理矢理動かそうと全身に力を入れるが、両腕を締め上げ、足を掴んでいるマッドミイラの力には敵わず、十兵衛は露緒羅を拒むことが出来なかった。

身動きが取れないにも関わらず足掻き続ける十兵衛に露緒羅は不気味に笑い、強引に開かせた十兵衛の口に瓶を近づけていく。そしてその瓶を少しずつ傾け、中に入っているリキッドホワイトを口の中に注ごうとする。

もう駄目だ・・・。そう十兵衛が全てを諦めギュッと目を瞑った、その時だった。

「らんらん、るー!!」

何処からか響いてきた、男の声。それが十兵衛と露緒羅の耳に入り込んだ瞬間、露緒羅の瓶を持つ腕を何か鋭いものが貫いた。腕を貫かれた痛みで露緒羅は思わず瓶から手を離してしまい、瓶は地面へと落下する。

露緒羅の腕を貫いたもの。それはミミズのようにうねうねと動く、凄まじく長い触手。その触手は貫いた露緒羅の腕から引き抜けると、露緒羅の背後にいる触手の主の元へと戻っていく。

十兵衛と露緒羅はその方向に目を向け、露緒羅の腕を貫いた触手の主を見る。そしてその時、十兵衛は喜びの余りその触手の主の名を叫んだ。

「わ、渡辺さん!」

そう、そこにいたのはこっ汚い作業服に身を包み、大きな馬のマスクを被った変質者、渡辺英二だった。右掌に開いた穴から何本も触手を生やしている英二は馬のマスクの中からじっと十兵衛と露緒羅を凝視し、そして露緒羅目掛けて再び触手を突き出した。

弾丸の如し速さで放たれた触手は真っすぐ露緒羅に向けて突き進み、露緒羅の体を貫かんと襲いかかる。貫かれた腕を押さえている露緒羅は思わず舌打ちを打ちながらその場から走り、その触手を避ける。

露緒羅が十兵衛から離れたことを確認すると、英二は露緒羅を貫き損ねた触手で十兵衛の手足を封じているマッドミイラを打った。鞭で痛めつけるかの如く、十兵衛の両腕を締め上げる2体のマッドミイラと足を掴む幾つものマッドミイラの手を打ち、土で出来たマッドミイラを崩す。

マッドミイラが消え、体が自由になった十兵衛は、いきなり体が自由になったため思わず体から力が抜け、地面に膝をつけてしまった。そんな十兵衛に英二が駆け寄り、馬のマスクの中から地面に膝をつける十兵衛を見る。

「大丈夫か、石動?」

「は、はい・・・なんとか」

「うむ、ならいい。それより、あいつは一体何者なんだ?」

そう呟きながら、英二は少し離れた所にいる露緒羅に視線を向ける。月光に輝く紫色の長髪に、額に出来た巨大な目、そして先程目にした、土で出来たミイラ。見た目も能力も、明らかに普通のルシフェルではない。そう感じた英二はいつでも攻められるように、露緒羅をじっと睨んだ。

そんな英二に、露緒羅は2度目の舌打ちをする。

「ちっ、邪魔が入ったか。あんた、何処の変質者だい?」

「変質者ではない、ルシフェル犯罪対策課だ。こんな夜中に子供を襲うとは、大人の女性がすることではないな」

「なるほど・・・あんた、ルシフェル犯罪対策課の奴だったかい。通りで言葉が悪いわけだ」

「渡辺さん、気をつけて下さい。あいつ・・・神校のルシフェルです」

「なんだと!?ということは・・・あいつの目的は石動か?」

「そういうことよ。あんたが邪魔しなければ、その子の入学手続きは済んでいたのさ」

「フン・・・なるほど。どうやら俺は丁度いい時にここを通りかかったようだな」

「形勢逆転だぜ、紫ババア。2対1じゃテメェに勝ち目はねぇぜ!」

「勝ち目はない?怪我した状態で、誰が戦うと言った?フフフ」

露緒羅がそう呟き、怪我した右腕を押える左手を十兵衛と英二の方へ軽く伸ばす。そして、その左手を軽く振り上げた。

その瞬間、十兵衛と英二の周りに広がる地面が次々と爆発し始めた。四方八方の地面が連続して爆発し、2人はそこから動くことが出来なくなってしまった。

更に、宙を舞う土の塊によって視界が封じられ、周りを見回すことも出来ずにいた。

「な、なんだこれは!?」

「悪いわねぇ、校長から警察事は避けるよう言われてるんだ。あんたらにはしばらくそこで立ち止まってもらうよ。あたしがここからいなくなるまでねぇ」

「クソ・・・待てぇ!」

「ボウヤ、今回は手続きを済ますことが出来なかったけど、次はこう上手くいかないわよ。フフフ、ハーッハハハハ!!」

爆発する地面の奥から露緒羅の笑い声が響き、それを掻き消すかの如く十兵衛と英二の周りの地面は爆発し続ける。途切れることなく地面が爆発しているため2人の周りには土煙が漂い、土の塊で封じられていた視界が更に悪くなる。

しばらくして、爆発していた地面がその勢いを緩め始め、やがて爆発が止まる。2人は露緒羅の立っていた場所を見るとそこに露緒羅はおらず、既にその姿を消し去っていた。










To be continued...

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あとがきコーナー




管:らんらん、るー!という訳で(?)早速やって来ました、あとがきコーナー!毎度ながらここまでのご拝読、真にありがとうございますm(_ _)m。

地田露緒羅(以後「露」):これからもGENOMEとあたしの応援をよろしく頼むわよ?フフフ。

管:ちょっ(☆w☆;)。今話初登場にして妙なSムードを出していた露緒羅じゃねぇかwww。

露:随分変なこと言うじゃないの。あたしは地田コンサルティングの社長兼社員の、ごく普通の女よ?

管:普通じゃねぇだろおいwwwwww(☆Д☆;)。神校の一味で十兵衛を誘拐しようとした危ねぇ女だろうがwwwwwww。

露:冗談の通じない男ねぇ。まぁいいわ、それじゃ早速あとがきコーナー始めるわよ。

管:ちょっ!?勝手に始めてんじゃねぇwwwwwww!


今話は当初から考えていた設定や以前から考えていた設定が多く、即興で考えた場面は全くと言っていいほどないです。そのため今話は会話場面と戦闘場面が丁度良く混ざり合っていると思います(あくまで個人的見解ですがw)。

昼休み、職員室の隅で生徒指導を受ける十兵衛。先生と会話して終わる短い場面なのですが、実はここ、当初から考えていた場面です。というのも十兵衛は40回以上も生徒指導を受ける生徒指導の常習犯なので、その生徒指導の風景を何処かで見せなければならないので、話の展開上今話に組み込むことにしました。

そんな十兵衛は放課後まで生徒指導を受け、夜なりやっと下校する。そこに、地田コンサルティングの社長兼社員と名乗る紫色の長髪の女、地田露緒羅が姿を現す。このキャラも当初から考えていたもので、モチーフは前々作、BEAST SOLDIERに登場した「アメリア」。アメリアも敵キャラだったのですが、露緒羅も↓で語る神校のルシフェルとして位置づけられていました。ここで地田コンサルティングと名乗っていたのは簡単に言えば十兵衛を欺くためであり、本名の書かれた名刺を渡したのは後々入学手続き(=誘拐)をするため本名を晒しても平気だという思いからです。ちなみに、露緒羅という名前も前々から考えていたものです。

そんな2人は帰り道である河川敷の遊歩道まで歩き、会話を交わす。そこで露緒羅が十兵衛の口に白い粉(=リキッドホワイト)を塗したハンカチを押しつけようとするが失敗し、警戒心を高める十兵衛に露緒羅は自らの正体を明かす。ここで露緒羅が神校のルシフェルということが明らかになるのですが、この場面も当初から考えていました。興志郎、謙信、勤二に続く4人目のルシフェルで、十兵衛からすれば謙信に続き襲いかかって来た2人目のルシフェルということになります。

十兵衛が変身した後、露緒羅も変身を開始する。額に巨大な目が出来るこの露緒羅のゲノムコード「サイクロプス」についてですが、これまた当初から考えていたものです。むしろ露緒羅というキャラが出来る前に、このゲノムコードが先に生まれていましたw。このゲノムコードのモチーフは神話に登場する一つ目の怪物「サイクロプス」なのですが、変身した時の姿のモチーフはカードゲームで有名な「遊戯王」の主人公、武藤遊戯です。この武藤遊戯は簡単に言うと2つの人格を持ってしまったキャラで、もう1つの人格に目覚めるときに額に大きな目の模様が浮かびます。それを見た時に自分は「コレ行けんじゃね?」と思い、露緒羅の変身後の姿として使ってしまいましたw(ちなみに額に目があるキャラはドラゴンボールの「天津飯」や灼眼のシャナのベルベオル等がいるのですが、それらのキャラがモチーフになっているわけではありませんw)。

あと「サイクロプス」のゲノムコードを持つ露緒羅の能力である大地を操る奴ですが、この能力も「サイクロプス」というゲノムコードに続き当初から考えていました。光を生み出す興志郎、水を生み出しそれを操る謙信、体内で硫酸を生み出す勤二と、3人とも強すぎる能力なので、それに負けんような能力として何かを生み出すのではなく「地面」を操る能力にしました。しかし後から神校ルシフェルの中で最強なのではないかと思ってしまったりします(ぁ。ちなみに、マッドミイラの姿が名前のまんまのミイラなのは露緒羅の趣味ではなく、人型の土を作る上でミイラが最も効率よく作り出せるシルエットだったからです(だってリアルな人型だったら作るのに時間かかっちゃうしw)。

マッドミイラに手足を封じられ、動けなくなった十兵衛。ここで露緒羅が電気を流す十兵衛の右手に触れ、自ら感電して自分が電気が通用しない事を証明する。この辺の設定は当初の設定には無かったのですが、第8話を書き終えた後に思いついたもので、十兵衛と戦うルシフェルに十兵衛最大の武器である電気が通用しないという感じで考えていました。ここで露緒羅が「体は『大地』そのもの」と言ってますが、これは簡単に説明すると、露緒羅の体はタンパク質や水等から出来ている体から、土や砂と同じ成分の体へと人体の成分構造が変わってしまっています。なので露緒羅は体が大地そのものだと解釈していたわけです。

リキッドホワイトを飲まされそうになる十兵衛。しかしそこに、たまたま通りかかった英二が助けに入ります。ここで英二が「らんらん、るー」と言っていますが、これはニヤニヤ動画で見たマクドナルドの看板キャラ、ドナルドが登場する動画が原因となっています。このドナルドの動画は「ニコニコ動画」でも実在するやつで、ニコニコ動画ではドナルドは変な言葉ばかりを言うキャラとして位置づけられてしまっており、それもあってかニコニコ動画の中で結構目立つ存在になっています。

英二が助太刀に入り、2対1となった戦い。しかし英二の触手で右腕を貫かれた露緒羅は2人の周りの地面を爆発させ、その隙にその場から姿を消す。そしてこの時、露緒羅は「校長」という言葉を口にしているため、露緒羅が「ソルジャー4」だということが明らかになります。果たしてこの後どうなってしまうのか?それは次回のお楽しみ~。


露:へぇ、あたしは結構設定が固まってるキャラだったんじゃないか。

管:まぁそうなるな。主役のキャラもそうだけど、ソルジャー1、2、3、4も基本ちゃんと設定してあるからねぇ。

露:まぁあたし程のキャラだからね、他のキャラよりも設定が固まってて当然よねぇ?

管:おいおい、ただでさえS女なのに今度はナルシスト女かYOwww(☆w☆ )。

露:口が悪いわねぇ、管理人。お仕置きが必要かしら・・・。(腕を軽く振り上げる)

管:Σ(☆Д☆;)。

ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!(管理人の足元の地面が爆発する)

(管理人、上空に吹き飛び姿を消す)

露:あら、ちょっとやり過ぎちゃったわね。まぁいいわ。管理人もいなくなった事だし、この辺であとがきコーナーも終わりにするかい。それじゃあんた達、次の話でまた頼むわよ、フフフ。


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