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休憩場

休憩場

第27話:上

第27話【マレスク】











遡ること、数分前。

学校の授業が2時間目を迎え、職員室から先生達が次々と授業のため各教室へと向かっていく。そのためエアコンの冷風が吹き抜ける広い空間には授業がない先生が3、4人しかおらず、自分の机に面を向けて残っている仕事に取り掛かっていた。

「いやぁしかし参りましたねぇ。1クラスに30人とはいえ、全クラスのプリントに目を向けないといかんとは・・・」

「全クラスが2クラスなわけですけど、人数で言えば60人。それでも面倒ですよねぇ」

「全くですよぉ。はぁ・・・今日も残業になりそうですなぁ・・・」

席が隣同士の先生達がそんな会話を交わしながら、机に置かれたプリントに赤いペンを走らせていく。いつもしている作業とは言え、やはり人数が多いと面倒臭い。その気持ちが先生達の表情に現れていた。そうしている内に2年B組に自習課題を渡しに行っていた先生も職員室に戻り、部屋の中に1人先生が増えたものの、仕事に取り掛かる少ない先生達しかいないため職員室の空気は何処か静まっていた。

しかしその時、その静寂は突如として消え去った。

「失礼しますー」

扉を叩くノック音と共に職員室の扉越しから発せられた、女性の声。職員室にいる先生達全員がその声がした入口に目を向けると、それと同時に扉はゆっくりと開かれ、人影が2つ職員室に入って来た。

それは、スーツに身を包み淡い紫色の長髪を下ろした女性と、アロハシャツを羽織り髪をオールバックに固めた男。どこか異様な姿をした2人にそこにいた先生達は何処かで見た男の顔と、紫色の髪をした女性の妖しい美しさに少々不審な気持ちを抱いていた。

しかし、それでも学校に訪れた来訪者に変わりはない。2人のいる入口から1番近い席にいた先生はそう思うと、おもむろにその2人に話しかけた。

「あのぉ、なんのご用でしょうか?誰かをお探しでしたらお呼びしますが?」

「お呼びしますかぁ、随分親切な先生だなぁ。あんたが男だったら俺のタイプだったのに」

「は、はぁ・・・。それで、ご用件はぁ・・・?」

「ご用件ねぇ、なんて説明すればいいんだ?」

「簡単なことさ。あたし達の団体名を言えば、こいつらもすぐ理解するよ」

「だ、団体名?あ、あなた達は一体・・・」

「・・・神校」

紫色の長髪をした女性がニヤリとした笑みを浮かべながらそう呟くと、指を鳴らして職員室に甲高い音を響かせる。そしてその瞬間、職員室の扉から般若面を被った兵士達が滝のような勢いで職員室に入り込んで来た。

ドタドタッ!と重たい足音が次々と職員室に響き、突如現れた軍団に兵士達は慌てながら席から立ち上がる。しかしその先生達に向けて般若面を被った軍団、般若軍は手にしていたマシンガンの銃口をそんな先生達に向け、黒光りする銃口の威圧で先生達をその場から動けなくした。

「なっ!?こ、これは!?」

「そういうこって。俺達のご用件はこの学校の占拠ってわけだ」

「せ、占拠だと!?い、いやそれ以前に、どうしてこんな者達が校内にいるのにセキュリティが反応しなかったんだ・・・!?」

「ま、まさかこんな時に限って故障なんて・・・!」

「故障?フフフ、あんた達もつくづく頭が悪いわねぇ。下準備もしないでこの警備万全な学校に侵入すると思ったかい?」

「何だと・・・!?」

「確か3日前にこの学校設備の点検作業してたよなぁ?その時にセキュリティ反応装置を弄くってたりしてたら、どうなると思う?」

「そ、そんな、ではあの時点検作業に当たってたのは・・・!?」

「そういうことぉ。あとついでに警察なんかに連絡出来ねぇように電話線も全部ぶち切っておいたぜ?」

「なんという事だ・・・まさかそこまでしているとは・・・」

「大体理解出来たわねぇ。ま、この学校を占拠するとは言ったが、あたし達の目的はガキ2人と変人1人を頂くだけ。大人しくしてればあんたらの命までは奪わないわ」

「ま、そういうことだから先生方はここで大人しく待ってて貰おうかねぇ。その間に俺達は教室ぐるっと回ってくるからさ。さぁお前ら、そいつらの携帯を没収してしっかり見張っとけよ?出ようとしたら撃ち殺して構わないからな」

そう言い残し、紫色の髪をした女性、地田露緒羅と、アロハシャツの男、天魔興志郎は職員室を後にする。突如現れた神校に先生達は不安と恐怖の混ざり合った表情を見せ、般若軍はそんな先生達に向けて無言のままマシンガンを向けていた。



そして現在、般若軍は次々と教室を襲った。

突如現れた武装した兵士達に生徒達は悲鳴を上げ、授業をしていた先生も成す術もなく般若軍に銃口を突き付けられる。不気味な般若の面を被った兵士達に気の弱い生徒達は泣き叫び、教室の端に集められた先生や生徒達はただただ恐怖に怯えることしか出来なかった。

そんな神校の魔の手は、当然2年B組にも渡っていた。隼人と薫のいない教室に現れた般若軍によって眠りについていた十兵衛や友達と自習課題に取り組んでいた明日香、そして教室にいた全ての生徒達に銃口が向けられ、そして教室の端へと追いやられていた。十兵衛は変身して般若軍を倒そうとしたが、軽く10人はいるだろうその般若軍相手に狭い教室で戦うのは無理だと感じ、般若軍に抵抗しようにもしきれないでいた。

「チッ・・・なんなんだよこの般若野郎ども・・・」

恐怖に怯え、泣き叫ぶ生徒達を背中に、十兵衛は思わず苛立ちの言葉を零す。何もできない苦しさを表情に現しながら、十兵衛は般若軍に気で負けないよう鋭い視線で般若軍を睨み続けていた。

その時だった。開け放たれていた教室の扉から人影が2つ、十兵衛のいる教室に入って来た。その人影を目にした瞬間、十兵衛は驚きの余り思わず声を上げた。

「なっ!?ガチホモ天使に、紫ババア!!」

「フンッ、相変わらず口の悪いガキだねぇ。やっぱり少しお仕置きが必要みたい」

十兵衛の言葉に、教室に入って来た露緒羅が少々呆れた声でそう答える。それを横にする興志郎もまた少しばかり呆れた表情を見せていたが、十兵衛の顔をじっと見ながら口元に笑みを浮かべる。

そんな2人は教室の隅に追いやられた生徒達の目の前まで来ると、2人は生徒達の顔を1人1人確認し、そして言葉を発した。

「・・・隼人君がいないなぁ」

「そうみたいね。でもあんたなら知ってるんじゃないの?石動十兵衛」

「ヘッ、知ってても誰がてめぇらなんかに言うかってんだ、バーカ」

露緒羅に対して馬鹿にするような言葉を発した十兵衛に露緒羅はその目を鋭くさせて十兵衛を睨むと、その体を1歩十兵衛に近づかせる。その露緒羅に十兵衛が疑問を抱いた瞬間、露緒羅が十兵衛の腹を力強く蹴りつけた。

大の大人の殴打と変わらない威力の蹴りに十兵衛は苦い声を上げ、痛みが広がる腹を押さえながら床に膝をつける。そんな十兵衛を見て他の生徒達がその傍に寄ろうとしたが、その場から動くなといわんばかりに般若軍の銃口が生徒達に向けられ、黒光りするそれに生徒達は捕えられていた。

「痛って・・・」

「フンッ、大人を舐めるとどうなるか、これでわかったかしら?」

「うっせぇ・・・紫ババア・・・!」

「どうやらもう1発喰らいたいみたいねぇ・・・」

「そこまでにしておけよソルジャー4。そいつは俺ら神校の大事な人材だし、隼人君に次いでナイスボーイだ。あんまり傷つけねぇでくれよ?」

「前者の理由ならわかるが、後者の理由は却下よ」

「フッ、まぁ分かってくれたならいい。さて・・・それじゃ話を戻すが、君達生徒諸君の中で、一文字隼人が何処に行ったかを知ってる人はいないかな?」

興志郎の突然の問いかけに生徒達は困惑しながらも、笑みを見せながら放つ興志郎の鋭い眼光と、周りを取り囲む銃口の恐怖に捕われながら、何人かの生徒が恐る恐る手を上げる。手を上げた生徒の中の1人を興志郎は指差し、その生徒は隼人のいった場所を答える。

「なるほど、トイレねぇ・・・。さっき見て来たけど一応見て行かせてみるか。お前ら、トイレ行って一文字隼人を探して来い。もしいなかったらそのまま渡辺英二の探索に当たれ」

興志郎の言葉に興志郎の傍にいた3、4人の般若軍が頷き、駆け足で教室を後にする。それと同時に、十兵衛は興志郎の言葉から英二がまだ神校に捕まっていない事を確信した。英二のことだ、主事の仕事でどこかの清掃作業をしているため主事室にいなかったのだろうと、その時十兵衛は思った。

教室を出て行った般若軍を確認すると、興志郎は生徒達の方へ目を向け、魅力的な男を探すかのように再び1人1人の顔を眺め始めた。

「ふ~む・・・このクラスにナイスボーイは隼人君と十兵衛君以外誰もいないかぁ」

「何呑気なこと言ってんだいソルジャー1。今は一文字隼人と渡辺英二の入学手続きを済ませるのが先よ。男漁りならその後にするんだね」

「全く、ソルジャー4は気が利かねぇなぁ。ま、だったらてっとり早く済ませるいい方法を思いついたわけなんだが・・・」

興志郎はそう呟くと、生徒達の顔を眺めていた視線をゆっくりと動かし、ある生徒の顔を捕える。その視線を露緒羅も追っていくと、露緒羅の目に1人の女子生徒が映った。

その女子生徒は、明日香。

漆黒のセミロングの髪を結わき、トレードマークとも言えるいつもの小さなポニーテールにしている明日香は恐怖で泣き崩れる女子生徒の背中を優しく撫で、周りを取り囲む般若軍を他所にその女子生徒から少しでも恐怖を取り除こうと励んでいた。大丈夫だから、泣き崩れる女子生徒に小声でそう呟く明日香を目にした露緒羅だったが、全く面識のない明日香を見る興志郎に疑問を抱いていた。

その疑問を解くため、露緒羅は生徒達に聞こえない程の小声で興志郎に問いかけた。

「あのガキがどうしたって言うんだい、ソルジャー1」

「どうしたって、隼人君を連れてくるためのエサさ」

「『エサ』?あいつがかい?」

「隼人君の詳細を調べた時におまけで出てきた情報でな、あのナイスガールは隼人君の幼馴染なんだとよ。で、その幼馴染の仲を利用するのさ」

「利用する?」

「あぁ。大事な友達がピンチとなれば、隼人君もすぐ出てくるだろ?」

露緒羅の言葉に興志郎は小声でそう答えると、恐怖に怯える生徒達に1歩近づき、泣いている女子生徒の背中を撫でている明日香にその視線を向ける。1歩近づいての視線にようやく気付いた明日香はその顔を興志郎の方へと向け、じっとその顔を見る。

「な、何よ」

「隼人君の幼馴染、小泉明日香。名前は合ってるよな?」

「ど、どうして私の名前を?ううん、そんなことより・・・私になんの用よ?」

「フフフ、気が強いねぇ。その声を聞くと校門でチラシ配りしてた時を思い出すなぁ」

「だから、な、何が言いたいのよ・・・」

「君には俺達と一緒に来て貰う。なぁに、取って食ったりはしないさ」

「じゃあ、どうするつもり?」

「それは来てからのお楽しみ。そんなの嫌だと言って断ってもいいが、断ったらそうだなぁ・・・・・このクラスの生徒1人の頭に風穴が開くことになるなぁ」

「なっ!?だったら俺が行ってや――――」

拒めば生徒の1人を撃ち殺す。その意が込められた興志郎の言葉に十兵衛が声を上げて興志郎の前に出ようとしたが、その十兵衛の目の前に般若軍のマシンガンが向けられ、黒光りする銃口を前に十兵衛は苦渋の表情を浮かべる。

「おっと、動いたら先にあんたからハチの巣になるよ?石動十兵衛」

「チッ・・・このクソ野郎・・・!」

「で、どうするんだい、小泉明日香?あたし達と来るか、生徒を1人殺すか。決めるのはあんただよ」

「・・・・・いいわ」

発した明日香の声を聞き、十兵衛やその場にいた生徒達の顔は驚きに満ちた。小さなどよめきが生徒達に広まる中、明日香は生徒達から離れ、露緒羅と興志郎の前まで歩みを進める。

「来るみたいだな。ま、脅されてんだから当然の結果だけどな」

「お、おい!ホントに行くのかよ!」

「えぇ。だって、行かなきゃこの中の誰かが死ぬことになるもの」

「だ、だけどおめぇがどうなるかわかんねぇんだぞ!?そんなんでもいいのかよ怪力女!」

「誰が怪力女だぁ!」

癇に障る単語を耳にした明日香が怒号の如し大声を上げ、十兵衛の頭部に拳を振り下ろした。ゲンコツという名の凄まじい威力の拳を受けた十兵衛は驚きと痛みの入り混じった声を上げ、その頭を床にめり込ませた。

「ったく、次言ったらもっとぶん殴ってやる」

「痛ってて・・・あ、頭が・・・」

「・・・私は大丈夫。あんたなんかに心配される程、か弱くなんかないから」

「怪り・・・じゃねぇ、小泉・・・」

「それに、何かあったら・・・きっと隼人が来る。だから、私は行く」

そう呟き、明日香は十兵衛の方に向けていた体を再び露緒羅と興志郎の方へと向ける。明日香の眉は真一文字に引き締まり、その目は真剣そのものだった。

「話しは済んだようだね。それじゃあ行くとするかい。お前達、あとは頼んだよ」

そう言い残し、露緒羅は明日香の腕を掴み興志郎と共に教室を後にする。露緒羅と興志郎と一緒に教室を出て行く明日香の背中を十兵衛や他の生徒達はただ眺めることしか出来ず、何もできない悔しさに表情を曇らせていた。そんな生徒達を囲む般若軍は無言のままマシンガンの銃口を生徒達に向け、物音すらしない教室は不気味な静寂に包まれていた。

その状況がしばらく続いていた時、1人の般若軍の肩に取り付けられた無線機から短い音が鳴り、その直後、無線機から声が発した。

「ぜ~ん部隊に告ぐ~。体育館う~ら~で戦闘の痕跡をは~っけん~。状態か~らして一文字は~やと~のものだと思うから~、見~つけ次第生け取りにそろ~」

無線機から発した酷く狂った声を聞き、生徒達に銃口を向けている般若軍達は一瞬顔を見合わせ、了解の意を込めた頷きをする。無線機の声は当然生徒達にも聞こえており、変人が発したような声に生徒達の顔は嫌悪感に満ち溢れていた。それは、明日香に殴られた頭を手で抱える十兵衛も同じだった。

しかし、同時に十兵衛はある疑問に行きついた。

(自習の時間に隼人にコクるために出て行った薫がコクる場所に選んでいたのは確か、体育館裏。そこで戦闘の痕跡があったっつうことは、コクっていた最中に般若野郎達が隼人達を見つけて戦いになったってなる。隼人のことだからそこに来た般若野郎を皆ぶっ飛ばしたんだろうけど、無線の声で見つけ次第ってことはもう隼人はそこにいなくて・・・・・待てよおい・・・・・てことは・・・・!)

十兵衛に過ぎった疑問。それは新たな疑問を生み出し、そして1つの確信へと昇華した。それを知った十兵衛の心には焦りにも似た気持ちが込み上げ始め、それが表情にも現れていた。

――――隼人と一緒にいた上御領は、今は1人。

それは行き過ぎた「確信」かもしれない。優しさの塊である隼人のこと、上御領を1人にすることなどまずありえない。しかし、神校が襲って来ているこの状況下で少しでも被害を少なくしようとする隼人なら、上御領を安全な場所まで行かせ、学校の方へ戻ってくる確率の方が明らかに高い。そう十兵衛は確信していた。

(馬鹿野郎・・・!いくら被害を出さないこと優先でも、上御領は1人だぞ・・・!般若野郎だってそこら辺うろついてるっつうのに、あの上御霊が安全な場所まで行きつくはずがねぇじゃねぇかよ・・・!)

心の中で言葉を零す十兵衛はその心に次第に怒りにも似た感情が込み上げてくるようになり、同時に焦りも込み上げていた。このままでは薫が危ない、そう思う程に十兵衛の手には生暖かい汗が滲み出し、焦りを更に高ぶらせていく。

それが頂点に達した時、十兵衛は我慢の限界に達した。

目だけを動かし、まず十兵衛は教室にいる般若軍の数を数える。生徒達に銃口を向けている般若軍が全部で4人。それを確かめると、十兵衛は1歩、2歩と般若軍に近づき始めた。突然動き出した十兵衛に般若軍は当然のように銃口を十兵衛に向け、般若面の内側から十兵衛を睨みつける。

しかし、十兵衛はそれに恐れることなく、その口を開く。

「邪魔なんだよ・・・お前ら・・・」

小さくそう呟いた瞬間、十兵衛は般若軍の睨みを跳ね返すかの如し鋭い睨みを放った。獰猛な爬虫類の如し眼光を見せつけ、右袖を肘までたくし上げながら、十兵衛は更にこう呟く。

「こっちは時間がねぇんだ・・・とっとと・・・・・失せろぉ!!」

力強い、怒号の如し声を上げた十兵衛はそれと同時に全身に力を入れ、その体を変身させた。

肌色の皮膚に包まれていた体の右半身全体が爬虫類の鱗で覆われ始め、頭部の右半分から鋭く長い3本の角が生え、右目は酷く鋭い爬虫類の眼と化し、口からは異常に長い右牙が生え、そして右肘から長い刺が生える。変身し、ルシフェルの姿となった十兵衛はまさに「龍人」そのものだった。その龍人を前に、その場にいた般若軍は一斉に引き金を引こうとする。

だが、それよりも早く十兵衛は握り締めた拳を足元の床に向けて構え、そのまま力強く床を殴りつけた。アスファルトの地面を玉砕する程の超怪力を誇る十兵衛の拳は自分を中心に小規模の地震の如し衝撃を発生させ、足元に走る強い揺れに般若軍は一瞬よろけを見せる。

この一瞬の隙を、十兵衛は逃さなかった。床を殴りつけた右手を持ち上げて力を込めると、その右腕に一瞬淡い青色の電気が走り、その瞬間掌から青色の電気が放出した。そして、眩く青白い光を発する電気に包まれたその右手を目の前に居る4人の般若軍に向けて連続して突き出し、手に纏わりつく電気を撃ち出した。銃弾の如し勢いで放たれた電気は一直線に4人の般若軍の体に直撃し、体を感電させた兵士達は断末魔の叫び声を上げながら一斉に床に倒れて行った。

数秒の間に起こったそれを目の当たりにし、驚きの余り唖然と立ち尽くす生徒達。その生徒達の視線に気づいた十兵衛は目だけを生徒達に向け、言葉を発した。

「みんな、俺ちょっと教室出るから・・・この教室の鍵閉めてここで待っててくんねぇか?」

「ちょっ、俺達も教室出てぇよ!」

「バーカ、この般若野郎がそこら辺うろついてるのにみんなで教室出てみろ、俺達全員あの世行きだっつーの」

「そ、それじゃあどうして石動は行くの?」

「・・・俺は、行かねぇといけねぇ場所があるんだ。ホントはこう話してる時間もないんだ。だから、今俺が言った通りにしてくれよ!」

そう言い残し、十兵衛は教室の扉まで走り、廊下へと飛び出した。十兵衛はそのまま近くにある中央階段まで走ろうとしたが、しかし、隣のクラスの2年A組から出てきた般若軍がマシンガンを構えながら十兵衛に向けて走りだし、十兵衛を捕えんと襲いかかった。その般若軍を目にし十兵衛は舌打ちすると、右手から電気を発生させ、迫りくる般若軍達に向けて電気を幾度も発射する。

弾丸の如し勢いで放たれた幾つもの青い電気は迫り来た般若軍全てに直撃し、般若軍は悲鳴を上げながら廊下に倒れる。全員倒した事を目で確かめると、十兵衛は中央階段へ向けてその足を走らせた。

(待ってろ、上御霊・・・今行くからな・・・!!)

心の中で高まり続ける焦りを振り払い、十兵衛は廊下を駆け抜けて行った。薫の身を案じて、ただひたすらに。










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