昨年、大きなニュースとなったものの一つにiPS細胞の作製というものがありました。iPS細胞とは「誘導多能性幹細胞」と呼ばれるもので、新型の万能細胞とも呼ばれています。
これまで身体のさまざまな細胞に変化する事ができ、再生医療の要ともなる幹細胞は、人の胚を素材として用いる事から、技術的な問題以上に倫理的な問題が論じられてきていました。
iPS細胞は人の皮膚細胞を元とし、それを再プログラムするかたちで作られる事から、倫理上の問題も考慮する必要なくいろいろな疾患の治療に役立てる事ができると考えられています。
しかし、そんなiPS細胞に一つの大きな懸念が付きまとっていました。iPS細胞を再プログラムするための遺伝子の導入に細胞のガン化に関連したレトロウィルスを用いる必要がある事から、iPS細胞自体も発ガン性を持つ可能性があるとされていました。
今回、iPS細胞の作製者の一人でもある京都大学の山中教授をはじめとしたチームによる研究では、作製されたiPS細胞が成熟した成体細胞に由来するものである事を裏付けた上で、再プログラムに用いられたレトロウィルスが腫瘍を引き起こす染色体の部位には組み込まれない事を突き止め、iPS細胞がガン化する心配がない事を示しています。
今回の研究結果は、iPS細胞を用いた医療という点で大きな前進と捉える事ができますが、作製者の山中教授自身、「実際に医療に利用できるようになるまでには、さらに数年の基礎研究が必要」とコメントしているように、これからという部分を多く残してはいますが、明るい未来へ一歩前進できたようにも思えます。自分の細胞で、それまで治療が不可能と思われていた疾患を治療する。待ち遠しく思えてしまいます。